10. Charli XCX, ‘360’
チャーリー・XCXのアルバム「ブラット」から2曲目のシングルとしてリリースされた楽曲で、自己肯定感に満ち溢れたシンセポップチューンとなっている。また、デジタルエイジにおける成功の賛歌でもあり、ミュージックビデオにはジュリア・フォックス、クロエ・セヴィニー、ガブリエットといったインターネットにおける有名人やインフルエンサーたちも出演している。
9. Tems, ‘Love Me JeJe’
ナイジェリアのシンガー、テムズのデビューアルバム「ボーン・イン・ザ・ワイルド」から2曲目のシングルとしてリリースされた楽曲で、セイ・ソディムが1997年にヒットさせた同じタイトルの曲を改変したものである。タイトルに入っている「jeje」という単語はナイジェリア発祥でヨルバ語に由来するアフロピジン語で「気楽に」「落ち着いて」というような意味である。優しく心地よいサウンドの奥底に強靭さも感じさせるとても良い曲である。
8. ILLIT, ‘Magnetic’
K-POPグループ、ILLITのデビューEP「スーパー・リアル・ミー」からのリードシングルとしてリリースされた楽曲で、強く惹かれる恋心を磁力にたとえている。キュートでキャッチーでキラキラした最高のポップソングである。
7. Addison Rae, ‘Diet Pepsi’
アディソン・レイはまずはTikTokで有名になったインターネットセレブリティで、その後、バブルガムポップ的な楽曲をリリースしてもいたのだが、この楽曲はコロンビアレコードと契約してから最初に発表され、より成熟したノスタルジックでマイルドにセクシーな音楽性が特徴である。ダイエットペプシが飲み干され、ブルージーンズは破れ、車のバックシートはある目的のために使用される。
6. Tinasha, ‘Nasty’
アメリカのシンガーソングライター、ティナーシェのアルバム「クォンタム・ベイビー」からのリードシングルとしてリリースされた楽曲で、TikTokのダンス動画で使われたことによってミーム化し、広く知られるようになった。「ナスティ」というタイトルの楽曲をかつてジャネット・ジャクソンやアリアナ・グランデもリリースしているのだが、この曲もやはりセクシーで自己肯定感が高く、自由で解放感に満ち溢れている。
5. Billie Eilish, ‘BIRDS OF A FEATHER’
ビリー・アイリッシュのアルバム「ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト」からシングルカットされ、全米シングルチャートと全英シングルチャートでいずれも最高2位を記録している。オルタナティブでありながら、メインストリームでも通用しまくる大衆的なポップソングとしての強度が感じられる楽曲で、大切な人との深いつながりがテーマになっている。
4. Charli XCX and Lorde, ‘Girl, So Confusing featuring Lorde’
オリジナルバージョンはチャーリー・XCXのアルバム「ブラット」に収録され、女性同士の間に生まれる嫉妬や競争心といった絶妙に微妙なテーマをヴィヴィッドに扱っていたのだが、リスナーはニュージーランド出身のシンガーソングライター、ロードとの確執を思い浮かべたりもしていた。そして、そのロード本人をフィーチャーしたリミックスバージョンが後に発表されると、そのクオリティは大絶賛されることになり、「ブラット」な夏をさらに盛り上げた。
3. Sabrina Carpenter, ‘Espresso’
サブリナ・カーペンターのキャリアはミドルティーンだった2010年代半ばにはスタートしていたのだが、音楽アーティストとして本格的に大ブレイクを果たしたのは2024年だったということができ、それはこの「エスプレッソ」という楽曲からはじまった。自分自身の魅力を濃縮されたコーヒー飲料であるエスプレッソにたとえたこの楽曲は、聴けば聴くほど好きになるマイルドな中毒性のようなものを含んでいて、2024年の夏を象徴するヒット曲となった。全米シングルチャートで最高3位、全英シングルチャートでは通算7週にわたって1位(その間に5週連続2位)を記録した。
2. Kendrick Lamar, ‘Not Like Us’
ケンドリック・ラマーがアルバム未収録のシングル曲としてリリースした楽曲で、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高6位のヒットを記録した。長年にわたって確執が続いているカナダ出身のラッパー、ドレイクを舌鋒鋭くディスると同時に自身の信条を表明した楽曲でもある。
1. Chappell Roan, ‘Good Luck, Babe!’
2024年のチャペル・ローンは前の年にリリースしたデビューアルバム「ザ・ライズ・アンド・フォール・オブ・ア・ミッドウェスト・プリンセス」からも「ピンク・ポニー・クラブ」「ホット・トゥ・ゴー」といった曲をヒットさせたのだが、最も印象的だったのはシングルとしてリリースしたこの「グッド・ラック、ベイブ!」である。チャペル・ローンはこの曲について「運命を否定している人に幸運を祈る」内容だと説明しているのだが、ここには深い失望と激しい怒りが確実に存在し、それは「この気持ちを止めるには世界を止めなければならないだろう」という歌詞に集約されている。それはつまり真実として存在する同性愛を否定して、異性との関係を求めて去っていった相手に対して歌われているのだが、ここに失恋ソングの新たな可能性がひらかれているようにも感じられる。