洋楽ロック&ポップス名曲1001:2023
PinkPantheress and Ice Spice, ‘Boy’s a Liar Pt. 2’
ピンク・パンサレスとアイス・スパイスとのコラボレーション曲で、全米シングルチャートで最高3位を記録した。
元々はピンク・パンサレスがソロアーティストとして2022年にリリースした「Boy’s a liar」があり、全英シングルチャートで最高2位のヒットを記録した。
そして、このコラボレーションはアイス・スパイスがピンク・パンサレスのInstagramアカウントをフォローしたことがきかっけで実現したという。ピンク・パンサレスはロンドン、アイス・スパイスはニューヨークの出身で共にX世代、SNSをきっかけにブレイクしたところなどが共通している。
プロデューサーはムラ・マサで、トレンドであるジャージークラブを取り入れ、ポップでキャッチーな上にテンポがたまらなく、曲が短いところもとても良い。男の子は嘘つきというタイトルがあらわしているような、ガールズトーク的な内容も最高である。
Lana Del Rey, ‘A&W’
ラナ・デル・レイの9作目のアルバム「Did You Know That There’s a Tunnel Under Ocean Blvd」に先がけてリリースされたシングルで、それほどヒットはしていないのだが批評家などからの評価はやたらと高く、Pitchfork、NME、The Guardianといったアメリカやイギリスのメディアによって年間ベストソングの1位に選ばれたり、第66回グラミー賞においては年間最優秀楽曲賞にノミネートされたりもしている。
約7分間におよぶこの楽曲はラナ・デル・レイらしいノスタルジックなトーンを基調にフォークロック的なバラードとしてはじまるが、途中からトラップ的なビートが入ってきたりとエクスペリメンタルでもあるのが特徴である。
Kylie Minogue, ‘Padam Padam’
カイリー・ミノーグの16作目のアルバム「Tension」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高8位を記録した。
シンセサウンドをベースとしたキャッチーで中毒性も高めなサマーアンセムであり、ソフトにセクシーでありながら絶妙に乙女チックな感じがとても良い。
これでカイリー・ミノーグは1980年代から2020年代まで、ずっとヒット曲を出し続けていることになり、キャリア的には超ベテランに違いないのだが、いまだにポップクイーンというよりはプリンセスと呼びたくなってしまう存在感が素晴らしい。
NewJeans, ‘Super Shy’
韓国のポップグループ、NewJeansの2nd EP「Get Up」から先行リリースされた楽曲である。
2022年末にリリースされた「Ditto」のクオリティーがひじょうに高く、デビューからそれほど経っていないにもかかわらず、これこそがNewJeansの真骨頂なのではないかと感じさせもしたのだが、初夏に発表されたこの新曲はよりライトでキャッチーなところが特徴であった。
それが夏の気分にマッチしていたし、グループとしてび新機軸をも感じさせてくれた。UKガラージなどを参照しているところがあるのと、ボーカルにもナチュラルさが感じられるところからも、それまでのK-POPグループとは少し異なった印象を感じさせられた。
それにしても、これこそが2023年夏の時点における最も旬なポップスという感覚を、東京にいても感じることができたし、多くの人たちがそれを共有していたようにも思える。
好きな人がいるのに性格がシャイすぎて思いを伝えることができない、というような内容が歌われているところもかなり良い。
Troye Sivan, ‘Rush’
オーストラリアのポップスター、トロイ・シヴァンが約5年ぶりにリリースしたアルバム「Something to Give Each Other」からのリードシングルで、全英シングルチャートで最高21位、全米シングルチャートで最高77位を記録した。
アップリフティングでありながら官能的であり、解放感と自由な感覚に満ち溢れた最高のクラブアンセムである。
ロマンスの初期衝動的な感覚をヴィヴィッドに描写したミュージックビデオは性的な多様性をポップに肯定するものとして賞賛され、グラミー賞にもノミネートされる一方で、体型的な多様性に対しては配慮が足りていないのではないかと批判されたりもした。