洋楽ロック&ポップス名曲1001:2011

Nicki Minaj, ‘Super Bass’

トリニダード出身のラッパー、ニッキー・ミナージュのデビューアルバム「ピンク・フライデー」のデラックスエディションからシングルカットされ、全米シングルチャートで最高3位、全英シングルチャートで最高8位を記録した。

エレクトロニックやJ-POPからの影響をも取り入れたポップでキャッチーなヒップホップソングで、恋のときめきというポップミュージックにとって定番のテーマが当時における最新のサウンドにのせてラップされている。

ピンクに彩られたポップな世界観が印象的なミュージックビデオも好評だったのに加え、テイラー・スウィフトがお気に入りの曲として紹介したことも、この曲のポピュラリティをより高めることに貢献したといえる。

Jay-Z & Kanye West, ‘Niggas in Paris’

ジェイ・Zとカニエ・ウェストのコラボレーションアルバム「ウォッチ・ザ・スローン」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高5位、全英シングルチャートで最高10位を記録し、第55回グラミー賞では最優秀ラップパフォーマンス賞と最優秀ラップソング賞を受賞した。

カニエ・ウェストのレーベル、G.O.O.D.ミュージックと契約しているヒット・ボーイがプロデュースしたビートは当初、プッシャ・Tのためにつくられたが却下されたものであった。

パリでレコーディングされたこの楽曲には、有望な男子バスケットボール選手の大学生と写真を撮ったことによって罰金を取られた実話が盛り込まれたり、映画「俺たちフィギュアスケーター」からウィル・ファレルのセリフがサンプリングされていたりもする。

M83, ‘Midnight City’

フランスの音楽アーティスト、アンソニー・ゴンザレスによるソロプロジェクト、M83のアルバム「ハリー・アップ・ウィ・アー・ドリーミング」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高34位、全米シングルチャートで最高72位を記録した。

ロサンゼルスのダウンタウンで見た夜景にインスパイアされて書かれたというこの楽曲は、エレクトロポップ的なサウンドとインディーポップバンド、フィッツ・アンド・ザ・タントラムのジェームス・キングによるサックスソロや80年代的なスラップベースとのミックスが印象的で、ピッチフォーク・メディアがこの年の年間ベストソングに選ぶなど高い評価を得た。

イギリスではリアリティ番組「メイド・イン・チェルシー」のテーマソングやヴィクトリア・シークレットの広告、BBCの2012年ロンドンオリンピック中継などでも使用され広く知られるようになったが、後にNetflixのドラマシリーズ「ラグナロク」のプレミアエピソードでも取り上げられていた。

ミュージックビデオは「光る眼」「未知との遭遇」といったSF映画へのオマージュとなっている。

Carly Rae Japsen, ‘Call Me Maybe’

カナダ出身のシンガーソングライター、カーリー・レイ・ジェプセンのEP「キュリオシティ」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートや全英シングルチャートなどで1位に輝く大ヒットを記録した。

気になっている男性に電話番号を渡し、電話をしてと伝えるこの楽曲はジャスティン・ビーバーとセレーナ・ゴメスがお気に入りの曲として紹介したこともあって広まり、ケイティ・ペリーやジェームズ・フランコが自らのバージョンを発表したり、様々なパロディを生みネットミーム化したりもした。

元々はよりフォークソング的な楽曲だったようなのだが、カナダのポップパンクバンド、マリアナス・トレンチの中心メンバーでもあるプロデューサーのジョシュ・ラムジーによってポップ化され、印象的なストリングスの導入はアニー・レノックス「ウォーキング・オン・ブロウクン・グラス」にも影響されたものだという。

Lana Del Rey, ‘Video Games’

ラナ・デル・レイのデビューシングルで全米シングルチャートで最高91位、全英シングルチャートで最高9位を記録した。

他の名義ですでにアルバムをレコーディングしていたのだが、一向にリリースされない上に契約にも縛られているという失望の後、ハリウッドグラマー的な音楽性にもマッチしたイメージのラナ・デル・レイというアーティスト名で活動を開始した。

この楽曲はまずインターネットで発表され、YouTubeで公開されたミュージックビデオもラナ・デル・レイ自身がウェブカメラで撮影した映像と様々なクリップを自らiMovieで編集したものだったのだが、ギャングスタ・ナンシー・シナトラなどとも表現される懐かしいのだが新しい感覚や曲そのものの素晴らしさもあって、たちまち話題になったのであった。

歌詞はラナ・デル・レイの実体験がベースになっていて、好きな人のことを想っているのだが、彼はビデオゲームに夢中になっている、というようなフレーズが特に印象的であり、そのゲームソフトとは具体的には「ワールド・オブ・ウォークラフト」だったようである。

この曲はラナ・デル・レイのアルバム「ボーン・トゥ・ダイ」に収録された後、第57回アイヴァー・ノヴェロ賞で最優秀コンテンポラリーソング賞を受賞したり、2019年にはQアワードでソング・オブ・ザ・ディケイドに選ばれるなどモダンクラシックとしても評価を確固たるものにしていった。

Azealia Banks feat. Lazy J, ‘212’

アジーリア・バンクスのデビューシングルで、全英シングルチャートで最高12位を記録した。タイトルは彼女が育ったニューヨークのハーレムの地域の市外局番に由来している。

当時の音楽アーティストやリスナーに人気があったソーシャルネットワーキングサービス、MySpaceを通じて音楽活動を開始した後、17歳の頃にロンドンのXLレコーディングスと契約するが考え方の対立などから離れることになり、アンダーグラウンドシーンで知名度を上げてのリリースであった。

この曲はそういった時期の名声とスターダムへの道のりをテーマにしていて、家賃を払うのにも苦労して自暴自棄になってもいたという当時の勢いのようなものをヴィヴィッドに反映されている。

髪もセットしていない状態で撮影され、低予算で制作されたというモノクロのミュージックビデオにも生々しさが感じられてとても良い。