洋楽ロック&ポップス名曲1001:2010
Foals, ‘Spanish Sahara’
イギリスのインディーロックバンド、フォールズのいアルバム「トータル・ライフ・フォーエヴァー」から最初に発表された楽曲で、レコードストアデイに合わせて7インチシングルのみが限定でリリースされた。
バラードのようにはじまりしだいに盛り上がっていくのだが、楽曲の終盤にはクライマックスを迎える構成が見事である。
バンドのボーカリストでソングライターのヤニス・フィリッパケスがギリシャにいる父を訪ねたときに見た、ゴミが散乱し波間には犬の死骸が浮かんでいるようなエーゲ海の人里離れたビーチのイメージにインスパイアされていて、邪悪な美しさのようなものがテーマになっている。
タイトルはスペイン領サハラのことだが、地元であるオックスフォードでの公演の後に1ポンドで買った地元バンドのカセットを包んでいた地図から取ったもので、楽曲のイメージとマッチしていた。
Robyn, ‘Dancing on My Own’
スウェーデン出身のアーティスト、ロビンのアルバム「ボディ・トーク・パート1」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高8位を記録した。
ディスコアンセム的なシンセ・ポップで、かつての恋人がディスコで他の相手と抱き合っているのを見て悲しい、という状況について歌われている。
様々なメディアにおいて、この曲は2010年代を代表する優れたポップソングの1つとして評価されている。
Katy Perry, ‘Teenage Dream’
ケイティ・ペリーのアルバム「ティーンエイジ・ドリーム」に先がけてリリースされた2曲目のシングルで、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高2位を記録した。
ティーンエイジャーだった頃の気持ちを思い出させてくれる恋人との関係性について歌ったミッドテンポのポップソングで、力強いビートとキャッチーなメロディーが特徴的である。
楽曲の制作もミュージックビデオの撮影もケイティ・ペリーが実際に青春時代を過ごしたカリフォルニア州サンタバーバラで行われた。
青春の輝きや眩さと同時に切なさも感じさせる、ポップミュージック史上で完璧と呼ぶにふさわしい楽曲の1つである。
Kanye West feat. Pusha T, ‘Runaway’
カニエ・ウェストのアルバム「マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高12位を記録した。
大学在学中にプロデュースしたジェイ・Z「Izzo (H.O.V.A.)」で注目され、ソロアーティストとしてデビューしてからも大絶賛されがちだったカニエ・ウェストだが、この頃には間違いなくポップミュージック界で最も重要なアーティストというべき存在であった。
収録アルバム「マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー」がピッチフォークメディアのレヴューにおいて、新作としてはひじょうに珍しい10点満点を獲得したことも話題になった。
Kanye West feat. Jay-Z, Rick Ross, Nicki Minaj & Bon Iver, ‘Monster’
カニエ・ウェストがアルバム「マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー」に先がけてリリースした3曲目のシングルで、全米シングルチャートで最高18位を記録した。
様々なアーティストをフィーチャーしたホラー的な楽曲で、マイケル・ジャクソン「スリラー」からの影響が指摘されたり、歌詞には当初は「バス男」という邦題がついていた2004年のコメディ映画「ナポレオン・ダイナマイト」からの引用があったりもする。
この曲におけるカニエ・ウェストとジェイ・Zのラップでどちらが優れているかについては意見が分かれるところだったのだが、まだデビューアルバムをリリースしていない新進気鋭の女性ラッパー、ニッキー・ミナージュのラップは特に高く評価された。
Adele, ‘Rolling in the Deep’
イギリスのシンガーソングライター、アデルのアルバム「21」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高2位、全米シングルチャートでは7週にわたって1位を記録した。
裏切った恋人に対する別れの言葉を歌ったこの楽曲は、なんといってもアデルのブルージーなボーカルパフォーマンスが魅力的だが、自身からはダークブルース風のゴスペルディスコチューンと説明されたりもしている。
グラミー賞では年間最優秀レコード賞、年間最優秀楽曲賞、最優秀短編ミュージックビデオ賞を受賞した。