洋楽ロック&ポップス名曲1001:1996, Part.1

Busta Rhymes, ‘Woo-Hah!! Got You All in Check’

アメリカのラッパー、バスタ・ライムスのソロデビューシングルで、全米シングルチャート、全英シングルチャートでいずれも最高8位のヒットを記録した。

ガルト・マクダーモットのインストゥルメンタル曲「スペース」をサンプリングしたトラックにシュガーヒル・ギャング「エイス・ワンダー」にインスパイアされたラップをのせた、コミカルでキャッチーで中毒性の高い楽曲である。

ハイプ・ウィリアムスが監督したカラフルなミュージックビデオも好評で、当時のヒップホップ界のみならずポップカルチャー全般にも影響をあたえた。

Babylon Zoo, ‘Spaceman’

イギリスのロックバンド、バビロン・ズーのデビューアルバム「X-レイの瞳を持つ少年」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで1位を記録した。

アーサー・ベイカーによるリミックスをクラブのDJが間違ったスピードで流しているのをたまたま聴いたリーバイスの広告担当者がCMに使ったことがきっかけで、イギリスでは発売後6日間で約41万8000枚を売り上げ、EMIではビートルズ「シー・ラヴズ・ユー」以来、最も売れたシングルとなった。

典型的なワンヒットワンダー、つまり一発屋として語られがちであり、ヒップホップ、テクノ、オルタナティブロックなどの要素を薄くミックスした楽曲の徒花感もまた乙なものではあるのだが、CMに使われていたパート以外は恐ろしくつまらないという批評も少なくはなかった。

The Bluetones, ‘Slight Return’

イギリスのインディーロックバンド、ブルートーンズのデビューアルバム「エクスペクティング・トゥ・フライ」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高2位のヒットを記録した。

ブリットポップブームを背景にメジャーにブレイクした良質なギターロックバンドの1つであり、ストーン・ローゼズなどからの影響も見られる。

元々はこの前の年に「ザ・ファウンテンヘッド」との両A面シングルとしてリリースされていたのだが、バンドの知名度が上がり、デビューアルバムがリリースされる直前というタイミングで再リリースしたところヒットして、続くアルバムも全英アルバムチャートでオアシス「モーニング・グローリー」を1週だけ抜いて初登場1位に輝いた。

Eels, ‘Novocaine for the Soul’

アメリカのインディーロックバンド、イールズのデビューアルバム「ビューティフル・フリーク」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高10位、アメリカではモダンロックトラックチャートで1位を記録した。

タイトルに入っているノボカインは歯科医などが使用する鎮痛剤であり、この曲では人生の痛みをやわらげ、単調な日常生活から逃してくれる人を切望しているようである。

ミュージックビデオではメンバーがワイヤーで吊り上げられ、空を飛んでいるかのように見える。シングルのジャケットには瞳が大きな白猫の画像が使われていた。

Fugees, ‘Ready or Not’

ローリン・ヒルが所属していたヒップホップグループ、フージーズのアルバム「ザ・スコア」からアメリカでは商業的にはシングルカットされていなかったが、イギリスではロバータ・フラック「やさしく歌って」のカバーバージョンに続いて全英シングルチャートで1位に輝いた。

エンヤ「ボーディセア」のサンプリングを含み、デルフォニックス「レディ・オア・ノット・ヒア・アイ・カム(キャント・ハイド・フロム・ラヴ)」にインスパイアされている。

アメリカはニュージャージー州出身のフージーズはこの時点でワールドワイルドな人気ヒップホップグループとして認知されるようになっていたのだが、ローリン・ヒルはすでに実質的に脱退していた。

Mark Morrison, ‘Return of the Mack’

イギリスのR&Bシンガー、マーク・モリソンのデビューアルバム「リターン・オブ・ザ・マック」に先がけてリリースされたシングルで、全英シングルチャートで1位、全米シングルチャートで最高2位のヒットを記録した。

90年代を代表するクラブアンセムの1つであり、失恋から立ち直る男の心意気を描写した内容も共感を得た。

マーク・モリソンはナイトクラブでの騒動に関与したことにより、3ヶ月間投獄された後にシンガーとしてデビューしたのだが、このワールドワイドな大ヒット曲の後には飛行機にスタンガンを持ち込もうとしていたことにより社会奉仕活動を命じられるのだが、それを他人にやらせようとしていたとかで懲役1年の刑を宣告されるなどした。