洋楽ロック&ポップス名曲1001:1991, Part.1
The KLF, ‘3 A.M. Eternal (Live at the S.S.L.) ’
イギリスのハウスユニット、The KLFのシングルで、全英シングルチャートで1位、全米シングルチャートで最高5位を記録した。
1989年に12インチシングルでリリースしていた楽曲をメインストリームのリスナー向けに大幅にリメイクしたバージョンで、リカルド・ダ・フォースのラップとP.P.アーノルドのボーカルをフィーチャーしている。
あたかもライブ録音であるかのようなタイトルが付けられているが、実際にはU2のライブ音源から引用したオーディエンスの歓声などを付け加えたものである。
ブリットアワードに出演した際には銃声の効果音に合わせてステージ上から弾が込められていない本物の機関銃を客席に向けて撃ちはじめたり、アフターパーティーの会場に羊の死骸を残して音楽業界からの引退を宣言するなどのアンチエスタブリッシュメント的な行動を取って話題になった。
Massive Attack, ‘Unfinished Sympathy’
マッシヴ・アタックのデビューアルバム「ブルー・ラインズ」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高13位を記録した。
トリップホップと呼ばれる音楽ジャンルにおいて、ひじょうにエポックメイキングな楽曲であり、ストリングスやオーケストラ、ボブ・ジェームス「夢のマルディ・グラ」からサンプリングしたベルの音などが効果的に用いられている。
過去に負った心の傷からパートナーとの関係に警戒心をいだいているという絶妙に微妙な心理状態を歌ったシャラ・ネルソンのソウルフルなボーカルも印象的である。
このシングルは湾岸戦争がはじまった直後にリリースされ、グループ名やタイトルに戦争を連想する単語が入っていないことが望ましいというような風潮があったりもしたため、マッシヴ・アタックからアタックを省いたマッシヴというアーティスト名でリリースされていた。
R.E.M., ‘Losing My Religion’
R.E.M.のアルバム「アウト・オブ・タイム」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高4位を記録した。
マンドリンのリフをベースに作曲されたこの楽曲は、高評価を得たミュージックビデオがMTVなどでヘビーローテーションされた影響などもあって、思いがけないヒットを記録し、R.E.M.の存在をオルタナティブロック界隈のみならず、メインストリームのリスナーにまで広く知らしめるきっかけになった。
強迫観念的で一方的な愛というテーマはポリス「見つめていたい」からも影響を受けていることを、後にマイケル・スタイプが明かしていて、最も美しく、ある意味において不気味な楽曲だとも語っている。
Chapterhouse, ‘Pearl’
チャプターハウスのデビューアルバム「ワールプール」からのリードシングルで、全英シングルチャートで最高67位を記録した。
サイケデリックなギターとダンスビート、甘いボーカルの組み合わせが当時、UKインディーロックファンの間でひじょうに好まれていた。
クリエイションレコーズのシューゲイザーバンド、スロウダイヴからレイチェル・ゴスウェルがゲストボーカリストとして参加している。
The Wonder Stuff, ‘The Size of a Cow’
ワンダー・スタッフのアルバム「ネヴァー・ラヴド・エルヴィス」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高5位を記録した。
ブリットポップが盛り上がる少し前までUKインディーロック界ではひじょうに人気があったバンドで、この曲を収録したアルバムも全英アルバムチャートで最高3位のヒットを記録している。
ポップでキャッチーなメロディーとどこか厭世的でもある歌詞が特徴であり、マッドネスとベイ・シティ・ローラーズの出会いなどと評されることもあった。
Crystal Waters, ‘Gypsy Woman (She’s Homeless) ’
クリスタル・ウォーターズのデビューアルバム「サプライズ〜ラダディー・ラダダ!」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高8位、全英シングルチャートで最高2位を記録した。
祖母が1930年代に活躍したシンガーであったり音楽一家に育ったクリスタル・ウォーターズだったが、大学でビジネスとコンピューターサイエンスを学んだ後、ワシントンDCでコンピューター技術者としてのキャリアをスタートしていて、プロのアーティストになろうとは考えていなかった。
しかし、フレディ・コールのバックシンガーを務めたことがきっかけで音楽業界に入り、プロデューサーチームのベースメント・ボーイと知り合って、ウルトラ・ナテに提供するためにこの曲を書いた。デモテープの出来があまりにも良かったため、クリスタル・ウォーターズの作品としてリリースしたところ、大ヒットを記録することになった。
クリスタル・ウォーターズがメイフラワーホテルの前でよく見かけたホームレスの女性のことが歌われていて、最初は彼女のことを良くは思っていなかったのだが、地元の新聞に掲載された彼女についての記事を読んで、それは誰にも起こりうることなのだという考えになり、楽曲のテーマに選んだということである。
楽曲がキャッチーなハウスミュージックで、「ラダディー・ダダダ」というフレーズがあまりにも印象的なことなどから、深刻な歌詞の内容にはなかなか注目されず、タイトルに「She’s Homeless」の文言を入れるようにした。
Electronic, ‘Get the Message’
エレクトロニックのデビューアルバム「エレクトロニック」からのリードシングルで、全英シングルチャートで最高8位を記録した。
ニュー・オーダーのバーナード・サムナーと元ザ・スミスのジョニー・マーが結成したスーパーユニットとして大いに注目されたが、この楽曲ではニュー・オーダーのシンセサイザーとザ・スミスのギターサウンドをミックスするというコンセプトが実現されている。
プライマル・スクリームの楽曲でも知られるデニス・ジョンソンのソウルフルなボーカルもフィーチャーしたこの楽曲についてジョニー・マーは、自身のキャリア全体における最高傑作だと語ってもいる。
Blur, ‘There’s No Other Way’
ブラーの2作目のシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高8位のヒットを記録した。
インディーロックとダンスミュージックをミックスしたマッドチェスターやインディーダンスなどと呼ばれる当時のトレンドをフォローしたような楽曲であり、シニカルな歌詞やイギリスの伝統的なサンデーブランチを描写したミュージックビデオも印象的であった。
ニルヴァーナのカート・コバーンがお気に入りの楽曲としてラジオのインタビューでこの曲を挙げ、少し歌ってもいたことをデーモン・アルバーンは誇りに感じていたが、後に自身のキャリアにおいて気に入っていない作品の1つとしても語っている。
DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince, ‘Summertime’
DJ・ジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンスのアルバム「ホームベース」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高4位、全英シングルチャートで最高8位を記録した。
クール&ザ・ギャング「サマー・マッドネス」をサンプリングしたトラックにのせて、フィラデルフィア周辺で過ごした夏の喜びについてラップしたこの楽曲はグラミー賞で最優秀ラップパフォーマンス賞を受賞し、その後も夏の定番曲として聴かれ続けることになった。
ザ・フレッシュ・プリンスは当時から役者としてテレビのシチュエーションコメディ番組に出演していたのだが、この翌年に「ハートブレイク・タウン」で映画デビューも果たし、その後は俳優のウィル・スミスとして大ブレイクする。