洋楽ロック&ポップス名曲1001:1985, Part.1

Simple Minds, ‘Don’t You (Forget About Me) ’

シンプル・マインズはニュー・ウェイヴ的なバンドとしてイギリスではすでに人気があり、ヒット曲もいくつか出してはいたわけだが、アメリカでは映画「ブレックファスト・クラブ」のサウンドトラックに使われたこの曲が最初のヒットで、しかもそれまでの楽曲に比べるとポップでキャッチーすぎる。

しかし、このダイナミックなサウンドこそがいかにも80年代半ばから後半的であり、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンもやや落ち着きそうな兆しを見せていた時に、メインストリームなポップ・ミュージックの次なる進べき道を提示していたように感じられなくもない。

この曲が全米シングル・チャートで1位に輝いて以降、バンドの音楽性そのものがよりスタジアムロック的なメジャーな感じにシフトしていったような気もする。

Tears for Fears, ‘Everybody Wants to Rule the World’

ティアーズ・フォー・フィアーズのアルバム「シャウト」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高2位、全米シングルチャートでは1位に輝いた。

キャッチーでアップリフティングな楽曲ではあるのだが、権力を追い求めてしまう人間の性とそれが引き起こす不幸な結末というひじょうに深刻で暗めのテーマが扱われている。

タイトルはザ・クラッシュのアルバム「サンディニスタ!」に収録されていた「チャーリー・ドント・サーフ(ナパーム弾の星)」からの引用だといわれている。

Prince and the Revolution, ‘Raspberry Beret’

プリンス&ザ・レヴォリューションのアルバム「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高2位を記録した。

映画「パープル・レイン」やそのサウンドトラックの大ヒットによって、一般大衆的にブレイクを果たしてから1年も経たずに早くも発表されたニューアルバムは、よりサイケデリックでマニアックな内容になっていて、リスナーを驚かせた。

とはいえ、アメリカで最初にシングルカットされたこの曲などには独特なポップ感覚もあり、順当にヒットすると同時に天才的アーティストとしての評価も確実なものにしていったような気がする。

a-ha, ‘Take On Me’

ノルウェー出身のシンセ・ポップバンド、a-haの大ヒット曲で、全米シングルチャートで1位に輝いたが、全英シングルチャートでは最高2位で、「シャイン・オン・TV」の方が1位に輝いている。

全世界的にヒットしたバージョンは最初にノルウェーでリリースされたのとは、いろいろ微妙に違っているが、やはりイントロのシンセサイザーのフレーズがキャッチーさの極みという感じで大いに受けていた。

アニメーションと実写をミックスしたミュージックビデオもひじょうに印象的であり、そのクオリティが高く評価されていた。

New Order, ‘The Perfect Kiss’

ニュー・オーダーのアルバム「ロウライフ」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高46位を記録した。

ハイエナジー的なディスコポップとインディーロック的な暗さとが絶妙にマッチしていてとても良く、このバンドにしか出せない味わいがある。

「完璧なキスは死のキス」とは一体どういう意味なのか、さらには「Let’s go out and have some fun」などと力強く歌われていたりもして、何とも不思議な魅力に満ち溢れた素晴らしいポップソングである。

Huey Lewis and the News, ‘The Power of Love’

80年代にヒット曲を連発して、当時のポップスファンの心には深く刻まれているにもかかわらず、ロック批評的な文脈からはそれほど高く評価されてはいなく、そんなところも愛おしく思えるのがヒューイ・ルイス&ザ・ニュースである。

確かにとても売れていたのだが、一体どういった層の人たちがメインのファンであったかがいま一つつかみにくいというところもある。

この曲は大ヒットした映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌であり、全米シングルチャートで1位を記録したのだが、マイケル・J・フォックスが演じたマーティ・マクフライがヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのファンという設定であった。

Dire Straits, ‘Money for Nothing’

ダイアー・ストレイツのアルバム「ブラザーズ・イン・アームズ」は、当時、普及している最中であったCDでよく売れているということが話題になっていたような気がする。要は経済的にゆとりがある人々によく聴かれていたということでもあるが、とにかくよく売れて、シングルカットされたこの曲は全米シングルチャートで1位に輝いた。

中心メンバーでソングライターであるマーク・ノップラーが家電を扱っている店に行ったところ、テレビに映るロックスターを見て店員が悪口を言っていたらしく、歌詞はそれにインスパイアされたものだという。

「I want my MTV」というコーラスを歌っているのはスティングであり、メロディーがポリス「高校教師」に似ていることなどが理由でソングライターにもクレジットされている。アニメーションと実写とを組み合わせたミュージックビデオも印象的であった。

Madonna, ‘Into the Groove’

マドンナの主演映画「マドンナのスーザンを探して」の主題歌としてイギリスなどではシングルがリリースされ、全英シングルチャートではマドンナにとって初の1位に輝いていた。アメリカではアルバム「ライク・ア・ヴァージン」からシングルカットされた「エンジェル」のB面としてリリースされている。

マドンナはこの年の夏に行われたチャリティーライヴイベント「ライヴエイド」にも出演し、この曲やデビュー・アルバム「バーニング・アップ」から「ホリデイ」などをパフォーマンスしていた。この影響もあってかイギリスでは「ホリデイ」もこのタイミングでヒットして、1985年8月17日の全英シングルチャートでは1位と2位をマドンナが独占することになった。全英シングル・チャート史上、ビートルズ、ジョン・レノン、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドに続く4組目の記録であった。

楽曲はいかにも80年代的なダンスポップという感じで、ノリノリなところがとても良い。2003年にはアルバム「アメリカン・ライフ」収録の「ハリウッド」とミックスした「イントゥ・ハリウッド・グルーヴ」が、ミッシー・エリオットと共演したGAPのCMで使われていた。

The Cure, ‘In Between Days’

ザ・キュアーのアルバム「ザ・ヘッド・オン・ドアー」からの先行シングルで、全英シングルチャートで最高15位を記録した。全米シングルチャートにも、最高99位ではあるがこの曲で初めてランクインを果たしている。

ポップでキャッチーなメロディーとロバート・スミスのユニークなボーカルが最もマッチした楽曲の1つであり、シンセサイザーとアコースティックなサウンドとのバランスも絶妙である。

浮気をしたことが原因で恋人に捨てられたことを後悔しているような歌詞も、曲の雰囲気に合っていてとても良い。