洋楽ロック&ポップス名曲1001:1981, Part.3
Tom Tom Club, ‘Genius of Love’
トム・トム・クラブの2作目のシングルで全米シングルチャートで最高31位、ダンスクラブソングチャートでは1位を記録した。邦題は「悪魔のラヴ・ソング」である。
トーキング・ヘッズのドラマー、クリス・フランツとベーシスト、ティナ・ウェイマスによるユニットで、ティナの姉妹であるローラとラニがバックシンガーとして参加している。
印象的なキーボードのフレーズは1995年にマライア・キャリーのヒット曲「ファンタジー」で使用されることによって、より有名になった。
Depeche Mode, ‘Just Can’t Get Enough’
デペッシュ・モードの3作目のシングルで、全英シングルチャートで最高8位を記録した。
オリジナルメンバーのヴィンス・クラークがスパンダー・バレエ「早い話が(原題:To Cut a Long Story Short)」にインスパイアされたシンセポップの名曲である。
この後、ヴィンス・クラークはデペッシュ・モードを脱退し、ヤズー、ジ・アッセンブリー、イレイジャーといったシンセポップユニットで活動していく。
Olivia Newton-John, ‘Physical’
オリヴィア・ニュートン・ジョンのアルバム「虹色の扉」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで10週連続1位、全英シングルチャートで最高7位を記録した。
ソングライターのスティーヴ・キプナーとテリー・シャディックによってロッド・スチュワートを想定して書かれ、ティナ・ターナーに提供したが断られた後に、オリヴィア・ニュートン・ジョンの楽曲として大ヒットした。
清純派的なイメージも強かったオリヴィア・ニュートン・ジョンだが、この曲には性愛的なほのめかしが含まれている。ミュージックビデオには当時のトレンドであったエアロビクスが取り入れられている。
間奏のギターソロはTOTOのスティーヴ・ルカサーによるものである。
The Human League, ‘Don’t You Want Me’
ヒューマン・リーグのアルバム「デアー」(当時の邦題は「ラヴ・アクション」)からシングルカットされ、全英シングルチャートで年間1位に輝いた翌年の夏、全米シングルチャートでも3週連続1位を記録した。邦題は「愛の残り火」である。
当時の全米シングルチャート上位にランクインしていた多くの楽曲とは明らかに質感が異なり、どこか湿った感じが印象的なシンセポップで、色恋沙汰をテーマにした男女デュエットソングというのも味わい深い。
この曲のヒット以降、イギリスのシンセポップやニューウェイヴ系アーティストの全米シングルチャート進出が活発化していき、第2次ブリティッシュインベイジョンなどと呼ばれるようになっていくのだが、それには1981年の夏に放送を開始したMTVの流行が影響していた。
Queen & David Bowie, ‘Under Pressure’
クイーンとデヴィッド・ボウイのコラボレーションシングルで、全英シングル・チャートで1位、全米シングルチャートでは最高29位を記録した。
プレッシャーがいかに人生を破壊し、それでも愛は救いになるというフレディ・マーキュリーらしいメッセージが歌われている。
後にヴァニラ・アイス「アイス・アイス・ベイビー」に無断で使用され、訴訟沙汰にもなりかけたベースラインについては諸説あるようだが、クイーンのベーシスト、ジョン・ディーコンがつくって忘れていたのを他のメンバーが思い出し、それにデヴィッド・ボウイが改良を加えたともいわれているようだ。
Laurie Anderson, ‘O Superman’
パフォーマンスアーティスト、ローリー・アンダーソンによる約8分間のシングルで、BBCラジオのDJ、ジョン・ピールが好意的に紹介したことがきっかけとなり、全英シングルチャートで最高2位のヒットを記録した。
ジュール・マスネのオペラ「ル・シッド」からアリアをベースに書かれたこの曲は、ボコーダーの使用が印象的であり、テクノロジーとコミュニケーション、飛行機や武器の問題を取り上げている。
The Stranglers, ‘Golden Brown’
ストラングラースのアルバム「ラ・フォリー」(当時の邦題は「狂人館」)からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高2位を記録した。
60年代的なハープシコードのリフとワルツを思わせもする変拍子が印象的なこの楽曲は、ヘロインや地中海出身のガールフレンドのことなどを歌っているのだが、全体的にどこかミステリアスな雰囲気が漂ってもいる。
パンクムーブメントの衰退と共にストラングラーズの人気のピークも過ぎているようにも思われていたのだが、この曲で思いがけず過去最高のヒットを記録することになった。
Joan Jett and The Blackhearts, ‘I Love Rock ‘n Roll’
ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツのアルバム「アイ・ラヴ・ロックンロール」からシングルカットされ、全米シングルチャートで7週連続1位、全英シングルチャートで最高4位を記録した。
オリジナルはイギリスのロックバンド、アローズが1975年にリリースしたバージョンで、アラン・メリルがローリング・ストーンズ「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」に反応して書いたものである。
ジョーン・ジェットはザ・ランナウェイズ時代にイギリスのテレビ番組でアロウズの演奏を見て、セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズ、ポール・クックとこの曲のカバーをレコーディングしていた。
ロックンロールアンセムとして知られるようになったこの楽曲は2002年にはブリトニー・スピアーズによってもカバーされ、全英シングルチャートで最高13位を記録した。