洋楽ロック&ポップス名曲1001:1980, Part.1

The Jam, ‘Going Underground’

ザ・ジャムの80年代に入ってから初めてリリースしたシングルで、全英シングルチャートで3週連続1位を記録した。

「ドリームズ・オブ・ザ・チルドレン」との両A面シングルとしてリリースされたこの曲で、ポール・ウェラーは納税者の金を核兵器に費やすことに熱心な保守党政権の軍事政策に対する激しい怒りの感情が、自身の人生哲学と一体化していることを表明し、それは当時のイギリスの大衆音楽としてもメジャーに指示されたのであった。

この曲がヒットした当時、ザ・ジャムはアメリカをツアーで周っていたのだが、残りの予定をキャンセルして帰国後、「トップ・オブ・ザ・ポップス」の収録でこの曲をパフォーマンスした。

Dexy’s Midnight Runners, ‘Geno’

デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの2枚目のシングルで、全英シングルチャートで2週連続1位を記録した。

バンドメンバーがリスペクトするアメリカのソウルシンガー、ジーノ・ワシントンのことを歌っていて、音楽的にも彼のラム・ジャム・バンドからの影響を受けている。

レーベルからはシングル向きではないと見なされたり、批評家からは好意的ではない評価をされたりもしていたのだが、レコードは大ヒットしてライブでも熱狂的な人気を得ることになった。

イントロとアウトロに収録されたオーディエンスによるチャントは、ヴァン・モリソンのライブアルバムから引用されている。

Paul McCartney, ‘Coming Up’

ポール・マッカートニーのアルバム「マッカートニーⅡ」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高2位を記録した。

ボーカルにはピッチを変えるエフェクトがかけられ、すべての楽器をポール・マッカートニーが演奏している。ニューウェイブ的ともいえるこの曲を、当時は音楽活動を休業していたジョン・レノンも気に入っていたといわれる。

この年の初めにポール・マッカートニーは来日公演を予定していたのだが、成田空港の税関で大麻不法所持のため逮捕され、中止することを余儀なくされた。

イエロー・マジック・オーケストラのアルバム「増殖」に収録された「ナイス・エイジ」では、元サディスティック・ミカ・バンドのミカがニュース速報を伝えるアナウンサーとしてこのときのポール・マッカートニーの留置番号や「カミング・アップ」の歌詞の一部を読み上げている。

アメリカではレーベルの意向でグラスゴーでのウィングスとのライブバージョンがシングルA面としてリリースされ、全米シングルチャートで1位を記録した。

Stacy Lattisaw, ‘Jump to the Beat’

アメリカのR&Bシンガー、ステイシー・ラティソウのアルバム「ダイナマイト!」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高3位を記録した。

ナラダ・マイケル・ウォルデンとリサ・ウォルデンによるキャッチーなディスコポップで、キュートなボーカルも魅力的である。この曲がリリースされた当時、ステイシー・ラティソウはまだ13歳であった。

1991年にはダニー・ミノーグのカバーバージョンも全英シングルチャートで最高8位のヒットを記録した。

Diana Ross, ‘I’m Coming Out’

シックのナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズがプロデュースしたダイアナ・ロスのアルバム「ダイアナ」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高5位、全英シングルチャートで最高12位を記録した。

同じアルバムからは全米シングルチャートで1位に輝き、ディスコクラシックとしても知られる「アップサイド・ダウン」の方がヒットしたのだが、「カミングアウト」が性的指向や性自認を開示することを意味することから、LGBTQアンセムとしてこの曲の人気と評価が高まっていった。

1997年に全米シングルチャートで1位を記録したパフ・ダディ「モー・マネー・モー・プロブレム」でサンプリングされたことでも知られる。

Olivia Newton-John and Electric Light Orchestra, ‘Xanadu’

オリヴィア・ニュートン・ジョンが主演したミュージカル映画「ザナドゥ」の主題歌で、全英シングルチャートで1位、全米シングルチャートで最高8位を記録した。

ジェフ・リンが作詞・作曲・プロデュースし、エレクトリック・ライト・オーケストラが演奏した曲で、オリヴィア・ニュートン・ジョンが歌っている。

ローラーディスコファンタジーとでもいうべき映画は当時それほど評価されなかったのだが、サウンドトラックは大ヒットして、アメリカではオリヴィア・ニュートン・ジョン「マジック」が全米シングルチャートで1位に輝いた。

エレクトリック・ライト・オーケストラ元来のポップ感覚にディスコ要素とオリヴィア・ニュートン・ジョンの美しいボーカルも加わったこの楽曲にはキラキラ感が溢れてもいるのだが、ジェフ・リン自身は気に入っていなかったようである。

Queen, ‘Another One Bites the Dust’

クイーンのアルバム「ザ・ゲーム」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高7位、全米シングルチャートでは「愛という名の欲望」に続いてアルバムから2曲目の1位を記録した。邦題は「地獄へ道づれ」である。

バンドのベーシストであるジョン・ディーコンによる楽曲で、印象的なベースラインはシック「グッド・タイムス」に影響を受けたといわれている。

クイーンの楽曲としてはやや異質でもあるのだが、ロサンゼルスで行われたライブの舞台裏で、マイケル・ジャクソンがフレディ・マーキュリーにこの曲をシングルでリリースすることを強く薦めたという。

1982年に公開された映画「ロッキー3」の試作品ではこの曲がサウンドトラックで使用されていたのだが、完成した作品ではこの曲に似ていなくもないサバイバー「アイ・オブ・ザ・タイガー」が使われ、全米シングルチャートで年間2位の大ヒットを記録した。