洋楽ロック&ポップス名曲1001:1966, Part.2

The Beatles, ‘Paperback Writer’

ビートルズがシングルとしてリリースした楽曲で、全英シングルチャートや全米シングルチャートなどで1位に輝いた。発売から約1ヶ月後に行われた日本公演でも演奏されたが、この頃を最後にビートルズはライブをやらなくなってしまった。

作詞作曲者のクレジットはレノン=マッカートニーとなっているが、主にポール・マッカートニーによって書かれている。小説家がペーパーバックの出版を懇願するという、ヒット曲の歌詞としてはややユニークなテーマを扱っているが、叔母リルからの指摘もあって、ラヴソングではない曲をつくろうという目的があったようだ。

また、この曲ではいかに数少ないコードだけを使って完成させるかという実験も行われている。アルバム「リボルバー」のセッションでレコーディングされたが、独立したシングルとしてリリースされた。

Ike and Tina Turner, ‘River Deep – Mountain High’

アイク&ティナ・ターナーがフィル・スペクターのプロデュースでリリースしたシングルだが、アメリカでは全米シングルチャートで最高88位と期待されたほど売れず、フィル・スペクターはかなりショックを受けたといわれている。イギリスでは全英シングルチャートで最高3位のヒットを記録した。

アイク&ティナ・ターナー名義ではあるものの、アイク・ターナーはレコーディングに参加していない。ティナ・ターナーが何度も歌い直しをさせられたというレコーディングの様子は、後に伝記的映画「TINA ティナ」でも再現された。

ティナ・ターナーは夫のアイクから日常的に暴力を振るわれていたことでも知られるが、この曲では川のように深く、山のように高い愛についてパワフルでエモーショナルに歌っている。

The Kinks, ‘Sunny Afternoon’

キンクスがアルバム「フェイス・トゥ・フェイス」に先がけてリリースしたシングルで、全英シングルチャートで2週連続1位を記録した。

サマーソングの名曲としても挙げられることがあるのだが、スカッとした爽快感はほとんど無く、ミュージックホール調のサウンドにのせて、ハロルド・ウィルソン政権下における高額の累進課税に言及したりもしている。これは同じ年にリリースされたビートルズ「リボルバー」収録の「タックスマン」にも通じるテーマである。

初期のハードでヘヴィーな音楽性から、よりデフォルメしたイギリスらしさを強調するような方向性にシフトしていて、このあたりは後にブラーを筆頭にいくつかのブリットポップバンドにも影響をあたえることになる。

The Lovin’ Spoonful, ‘Summer in the City’

ラヴィン・スプーンフルがシングルとしてリリースした楽曲で、全米シングルチャートで3週連続1位、全英シングル・チャートで最高8位を記録した。

夏をテーマにしたヒット曲の1つだが、昼間の暑さの過ごしにくさと夜の自由な感覚とを対比させている点がユニークである。

また、車のクラクションや削岩機の音といった効果音がヒット曲に用いられたごく初期の例でもある。

The Supremes, ‘You Can’t Hurry Love’

シュープリームスのアルバム「シュープリームス・ア・ゴー・ゴー」に先がけてシングルとしてリリースされた楽曲で、全米シングルチャートで1位、全英シングルチャートで最高3位を記録している。邦題は「恋はあせらず」である。

ホーランド=ドジャー=ホーランドによる楽曲で、いわゆる典型的なモータウンビートが導入されている。

1983年にはフィル・コリンズによるカバーバージョンが全英シングル・チャートで1位、恋のアドバイス的なテーマも含め、おそらくこの曲の影響も受けているであろうビリー・ジョエル「あの娘にアタック」が全米シングルチャートで1位、他にもホリーズがシュープリームス「ストップ!イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ」のカバーバージョンをヒットさせたり、日本ではサザンオールスターズの原由子によるソロシングル「恋は、ご多忙申し上げます」など、なぜかモータウンビートが大人気であった。

The Beatles, ‘Eleanor Rigby’

ビートルズのアルバム「リボルバー」に収録された楽曲で、「イエロー・サブマリン」とのカップリングでシングルもリリースされた。

レノン=マッカートニー名義だが実際には主にポール・マッカートニーによって書かれた曲で、老人の孤独や死という当時のポップソングとしてはひじょうにユニークなテーマを扱っていることが特徴である。

サウンド面では弦楽八重奏が導入され、ビートルズがライブを行わなくなり、よりスタジオワークに凝るようになっていく過渡期を象徴する楽曲のようでもある。

The Beatles, ‘Tomorrow Never Knows’

ビートルズのアルバム「リボルバー」の最後に収録された楽曲で、ジョン・レノンによって書かれているが、タイトルは「ハード・デイズ・ナイト」などと同様に、リンゴ・スターがふと発した一言が元になっている。

テープの逆回転をはじめ様々な実験的な技法が用いられ、ポップソングの可能性を拡張した楽曲として知られる。イントロではカモメの鳴き声のような音が聴こえるのだが、これすらもポール・マッカートニーの笑い声を加工したものである。

当時のビートルズが大衆的な人気バンドでありながら、実験的で革新的なことも同時に行っていて、しかも売れ続けていたことを象徴するような楽曲だといえる。

The Four Tops, ‘Reach Out I’ll Be There’

フォー・トップスがシングルとしてリリースした楽曲で、全米シングルチャート、ビルボードのR&Bチャート、全英シングル・チャートのいずれにおいても1位を記録した。

モータウンのソングライターチーム、ホーランド=ドジャー=ホーランドによる楽曲である。

女性が苦難や困難に打ちひしがれているとき、何があってもそこに行く男の力強さを、リーヴァイ・スタブスが鬼気迫るテンションで歌っている。イントロは急いで駆けつける馬の蹄の音のようでもある。