洋楽ロック&ポップス名曲1001:1965, Part.1

The Supremes, ‘Stop! In the Name of Love’

シュープリームスが1965年2月にリリースしたシングルで、全米シングルチャートで1位に輝いた。「愛はどこへ行ったの」「ベイビー・ラヴ」「カム・シー・アバウト・ミー」に続く4曲連続しての1位は全米シングル・チャート史上初の記録であった。これはこの次のシングル「涙のお願い」まで続く。

モータウンのヒットメーカー、ホーランド=ドジャー=ホーランドの作品で、タイトルはラモント・ドジャーが恋人との口論で思わず口走ってしまった言葉に由来しているという。

付き合っている男性に浮気をやめてと訴える楽曲で、パフォーマンスでは「ストップ!」のところで手を前に突き出す振り付けが印象的だったようだ。

The Impressions, ‘People Get Ready’

インプレッションズのアルバム「ピープル・ゲット・レディ」のタイトル曲でビルボードのR&Bチャートで最高3位、全米シングルチャートで最高14位を記録した。

カーティス・メイフィールドの社会的意識の高まりがあらわれ、ゴスペル音楽の影響も感じられるこの曲を、マーティン・ルーサー・キング牧師は当時のアメリカで盛り上がっていた公民権運動の非公式テーマソングだと評した。

後のこの曲からインスパイアされた「ワン・ラヴ」を発表するボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズをはじめ、ボブ・ディラン、ジェフ・ベック&ロッド・スチュワートなど、様々なアーティストによってカバーされている。

The Beatles, ‘Yesterday’

アルバム「ヘルプ!」の収録曲だが、アメリカではシングルとしてもリリースされ、全米シングルチャートで1位に輝いた。

クレジットはレノン=マッカートニーだがポール・マッカートニーによる楽曲で、弦楽四重奏にのせて失恋の悲しみについて歌われている。

それまで若者のファンがほとんどだったビートルズの音楽が、大人のリスナーにも好まれるきっかけになった楽曲だともいわれる。

日本でもひじょうに人気が高く、ビートルズの代表曲として紹介されることもある。

Bob Dylan, ‘Subterranean Homesick Blues’

ボブ・ディランのアルバム「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高39位を記録した。これがボブ・ディランにとって初の全米トップ40ヒットである。全英シングルチャートでは最高9位を記録し、「時代は変る」に続く2曲目のトップ10ヒットとなっている。

ジャック・ケルアックやウディ・ガスリー、チャック・ベリーなどから影響を受けていて、当時のカウンター・カルチャー的な気分を背景とした歌詞やボーカル・パフォーマンスには、後のラップに通じるものも感じさせる。

また、フリップに書かれた歌詞のフレーズを次々とめくっていく映像は、ミュージックビデオのごく初期を代表する作品としても知られる。

The Beatles, ‘Ticket to Ride’

ビートルズが1965年4月にリリースしたシングルで、イギリスやアメリカなどのシングルチャートで1位を記録した。邦題は「涙の乗車券」である。

恋人が自分の元を離れていく悲しみというポップソングとしてはわりとありがちなテーマを扱っていながら、明らかに深さと重みが増していて、ひじょうに味わい深い楽曲になっている。

映画「ヘルプ!4人はアイドル」でも使われ、サウンドトラックアルバムにも収録された。カーペンターズによるカバーバージョンもわりと有名である。

The Byrds, ‘Mr. Tambourine Man’

ーズのデビュー・シングルとしてリリースされ、アメリカやイギリスのシングルチャートで1位に輝いた。オリジナルはボブ・ディランのアルバム「ブリンギング・オール・バック・ホーム」に収録されたバージョンだが、アレンジがよりロック的になっている。

とはいえ、レコードに収録された演奏にバーズのメンバーは参加していなく、ボーカルとコーラス以外はすべてスタジオミュージシャンによるものである。

このシングルがフォークロックというジャンルを確立し、後のジャングリーなタイプのインディーロックにも大きな影響をあたえたといわれている。

Otis Redding, ‘I’ve Been Loving You Too Long (To Stop Me Now)’

オーティス・レディングのアルバム「オーティス・ブルー」はR&Bの名盤として知られ、ローリング・ストーンズ「サティスファクション」、サム・クック「チェンジ・ゴナ・カム」「ワンダフル・ワールド」「シェイク」といったカバー曲も含み、「リスペクト」はアレサ・フランクリンのバージョンが有名だが、オーティス・レディングがオリジナルである。

「愛しすぎて」の邦題でも知られるこの曲は「オーティス・ブルー」に収録されたオリジナル曲の1つで、全米シングルチャートで最高21位、R&Bチャートで最高2位と、オーティス・レディングの生前では最もヒットしたシングルであった。

愛情はすでに冷めているのだが、関係を長く続けすぎたためにいまさら別れることができない、というような絶妙に微妙な心情を最高のボーカルパフォーマンスで歌い上げている。

忌野清志郎もRCサクセションのいつかのツアーで「Sweet Soul Music」の間にこの曲の一部を入れて歌っていたような気がする。

The Four Tops, ‘I Can’t Help Myself (Sugar Pie Honey Bunch)’

モータウンを代表する人気グループのうちの1つ、フォー・トップスの全米NO.1ヒットで、人気ソングライターチームのホーランド=ドジャー=ホーランドが作詞、作曲、プロデュースを手がけている。

タイトルのとおりもう自分自身を止めることができないぐらいの、すさまじい恋の気分が歌われている。

「渋谷系」の人たちに人気、というかフリッパーズ・ギターがCDのライナーに登場したりもしていたスコットランドのインディーポップバンド、オレンジ・ジュースに「アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ」というまさにこの曲にオマージュを捧げた楽曲がある。

イギリスの社会派シンガーソングライター、ビリー・ブラッグはフォー・トップスのリードボーカリスト、リーヴァイ・スタッブスの名前をタイトルに入れた名曲「リーヴァイ・スタッブス・ティアーズ」を発表している。

また、田原俊彦の3枚目のシングル「キミに決定!」もこの曲に何らかの影響を受けているような気がしないでもない。所ジョージが司会をしていた「TV海賊チャンネル」の「ティッシュタイム」でBGMに使われたことがあるという事実も特筆しておきたい。