ディスコ・ソングの名曲ベスト20
毎年7月22日はディスコの日なのだという。由来は映画「サタデー・ナイト・フィーバー」が日本で公開されたのが、1978年のこの日だからということである。つまり、あくまで日本国内での話である。ディスコ文化はそれ以前からあったのだが、より一般大衆的に広がったのはやはり「サタデー・ナイト・フィーバー」以降だということなのだろうか。そこで、今回は数あるディスコ・ソングの中からこれは特に名曲なのではないかと思える20曲を挙げていきたい。
1. I Feel Love – Donna Summer (1977)
リリース当時、この曲を聴いたブライアン・イーノが一緒にレコーディングをしていたデヴィッド・ボウイに、これは未来の音楽だと興奮気味に話したらしいのだが、実際にこの曲を収録したドナ・サマーのアルバム「I Remember Yesterday」はポップ・ミュージック史をテーマにしたコンセプト・アルバムであり、最後に収録されたこの曲は未来をあらわしていた。ジョルジオ・モロダーのプロデュースによるシンセサウンドが特徴的であり、ディスコ・ソングとしてヒットしたのみならず、後のシンセ・ポップやテクノ・ポップ、EDMに至るまで多大なる影響をあたえたエポックメイキングな楽曲である。ドナ・サマーはディスコ・ブームがより一般大衆的に盛り上がって以降は、よりロック的な「ホット・スタッフ」を大ヒットさせるなど、ロックの女王の名を欲しいままにしていった。全米シングル・チャートでは最高6位、全英シングル・チャートの方で1位に輝いた。
2. Heart Of Glass – Blondie (1978)
パンク・ロックとディスコ・ミュージックは共に70年代の後半に流行したが、お互いに対立するものとして見られることもあったように思える。ブロンディのこのシングルはパンク・ロックのシーンをルーツとしながらもディスコ・ミュージックを取り入れているところが特徴であり、全米、全英共にシングル・チャートで1位に輝く大ヒットを記録した。ブロンディはこの後も「夢見るNO.1」ではレゲエ、「ラプチュアー」ではラップなど、ニュー・ウェイヴに他のジャンルの音楽を取り入れた楽曲をヒットさせていく。
3. Good Times – Chic (1979)
シックといえば「おしゃれフリーク(Le Freak)」の方が有名なのではないかという気はなんとなくするのだが、ポップ・ミュージック史における影響力でいうと、ベースラインがサンプリングやコピーされまくったこの曲ということになるのではないだろうか。シュガーヒル・ギャング「ラッパーズ・デライト」をはじめ、特にヒップホップではよく使われていた。全米シングル・チャートでは1位に輝いている。中心メンバーのナイル・ロジャースはプロデューサーとしても、マドンナやデヴィッド・ボウイなどによる80年代のヒット曲を手がけたりもした。
4. Don’t Stop ‘Til Get Enough – Michael Jackson (1979)
マイケル・ジャクソンのアルバム「オフ・ザ・ウォール」からのシングル・カットで、「今夜もドント・ストップ」の邦題でも知られる。子供の頃からジャクソン5のリードボーカリストとして活躍していたマイケル・ジャクソンが大人のアーティストとして、クインシー・ジョーンズを迎え、初めてレコーディングしたアルバムである。この曲と「ロック・ウィズ・ユー」が全米シングル・チャートで1位に輝くなどじゅうぶんに成功していたのだが、ディスコやソウルのファンだけではなくロックやポップスのリスナーも取り込もうとしてつくられたのが次作の「スリラー」であり、ご存じの通りさらに売れに売れまくった。「スリラー」からの曲もディスコでヒットしたのだが、ディスコ・ソングとしての純度とでもいうべきものは、こちらの方が高いような気がする。
5. Dancing Queen – ABBA (1976)
スウェーデンが生んだ世界的人気ポップ・グループ、ABBAのとても有名な曲である。ヨーロッパだけではなくアメリカでもよく売れて、全米シングル・チャートで1位に輝いたのが特徴である。元々の卓越したポップ感覚がディスコ・ソング化することによって、さらに良くなったように思える。ヨーロッパのいろいろなところではすでに何曲目かの、アメリカでは初のシングル・チャート1位を記録した。
6. Stayin’ Alive – Bee Gees (1977)
「ディスコの日」が制定されるきっかけにもなった映画「サタデー・ナイト・フィーバー」のサウンドトラックから、ビー・ジーズのとにかく売れまくった曲である。実際には「恋のナイト・フィーバー」の方が日本でもオリコン週間シングルランキングの10位以内に入ったり、よく売れていたような気もするのだが、代表曲を挙げるとするならばこちらということになるのだろう。もちろんハイ・トーンのボーカルがとても印象的である。全米シングル・チャートで1位、全英シングル・チャートでは最高4位、オリコン週間シングルランキングでは最高15位であった。土曜の夜はフィーバーしよう。
7. I Will Survive – Gloria Gaynor (1979)
「恋のサバイバル」の邦題でよ知られ、大ヒットしていたが、日本では布施明がカバーしたりしていた。セクシャル・マイノリティ界隈やパンデミック下などにおいても、このキャッチーでありながら力強いディスコ・クラシックはセルフ・エンパワメントなメッセージソングとしても機能しているように思える。全米、全英ともにシングル・チャートの1位に輝いている。
8. Love Hangover – Diana Ross (1976)
ダイアナ・ロスでディスコ・ソングといえば「アップサイド・ダウン」「アイム・カミング・アウト」なども挙げたいところではあるのだが、その前にこの濃密にセクシーなヒット曲があったわけで、取り敢えずこれもかなり重要ということである。全米シングル・チャートでは1位に輝いている。
9. We Are Family – Sister Sledge (1979)
シスター・スレッジはナイル・ロジャーズとバーナード・エドワーズが作詞・作曲とプロデュースを手がけているだけあって、音楽的にはシックとひじょうによく似ているところもあるのだが、ボーカルが女性である。全米シングル・チャートで最高2位のヒットを記録した。
10. Young Hearts Run Free – Candi Staton (1976)
キャンディ・ステイトンとこの曲の作者であるデヴィッド・クロウフォードとの会話から生まれた楽曲であり、当時のキャンディ・ステイトンの私生活が反映されているということである。全英シングル・チャートで最高2位のヒットを記録した。
11. Lady Marmalade – Labelle (1974)
パティ・ラベルがかつて所属していたグループの全米NO.1ヒットで、後にハッピー・マンデーズ「キンキー・アフロ」に引用されたり、クリスティーナ・アギレラ、リル・キム、ピンク、マイアによるカバー・バージョンが全米シングル・チャートで1位に輝くなどした。
12. Rock Your Baby – George McCrae (1974)
アメリカのシンガー、ジョージ・マックレーのデビュー・シングルで、全米、全英いずれものシングル・チャートで1位に輝いた。KC&ザ・サンシャイン・バンドのメンバーがかかわっていて、リズムボックスとファルセットのボーカルに特徴がある。ジョン・レノン「真夜中を突っ走れ」やABBA「ダンシング・クイーン」に影響をあたえたともいわれる。
13. Shame – Evelyn “Champaign” King (1977)
イヴリン・キングのデビュー・アルバム「スムース・トーク」からシングル・カットされ、全米シングル・チャートで最高9位を記録した。アーバンチュールでシティ・ソウルな感じがとても良く、サックスも最高である。
14. Forget Me Nots – Patrice Rushen (1982)
パトリース・ラッシェンのアルバム「ハート泥棒」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高23位、全英シングル・チャートでは最高8位を記録した。後にジョージ・マイケル「ファストラヴ」やウィル・スミス「メン・イン・ブラックなどにも引用されたり、ディスコ・クラシックとして知られるようになる。
15. Da Ya Think I’m Sexy? – Rod Stewart (1978)
ロッド・スチュワートのアルバム「スーパースターはブロンドがお好き」からシングル・カットされ、全米、全英いずれもシングル・チャートで1位に輝いた。この頃に洋楽を意識的に聴きはじめたキッズたちは、ロッド・スチュワートのことをディスコ・シンガーだと思っていたのではないかというぐらい、かなりヒットしていた。ハスキーなボーカルときわびやかなイメージは、まさにスーパースターという感じであった。この頃にはたとえばローリング・ストーンズ「ミス・ユー」など、ロックのアーティストがディスコ・ミュージックを取り入れるケースも少なくはなかった。
16. You Make Me Feel (Mighty Real) – Sylvester (1978)
ディスコはより一般化する以前には主にゲイ・ピープルの社交場として機能していたところもあるといわれていて、シルヴェスターのこの曲などにはその名残りが強く感じられもする。全英シングル・チャートでの最高位は8位だったが、後にブロンスキ・ビートやコミュナーズのボーカリストとして活躍したジミー・ソマーヴィルによるカバー・バージョンが最高5位を記録している。
17. Boogie Wonderland – Earth, Wind & Fire (1979)
日本でもひじょうに人気が高かったアース・ウィンド・ファイアーはハイトーンのボーカルと宇宙的なイメージが特徴であり、エモーションズとのコラボレーションとなったこの曲は全米シングル・チャートで最高6位を記録した。
18. Rock The Boat – The Hues Corporation (1973)
アメリカの3人組グループ、ヒューズ・コーポレーションによるこの曲は初めはヒットしなかったのだが、ディスコでじわじわと人気が出て、ヒット・チャートを上がっていき、最終的には全米シングル・チャートで1位に輝いた。ディスコ・ソングが大ヒットした、最も初期の例の1つだといわれている。
19. Got To Be Real – Cheryl Lynn (1978)
シェリル・リンのデビュー・シングルで、全米シングル・チャートで最高12位を記録した。ディスコ・クラシックとして挙げられがちなこの曲は、デヴィット・ペイチとデヴィッド・フォスターというAOR的な人たちによってプロデュースされていて、シティ・ソウルと呼ぶにもふさわしいサウンドとなっている。
20. Ring My Bell – Anita Ward (1979)
アニタ・ワードにとって唯一のメジャーなヒット曲であり、全米、全英いずれのシングル・チャートでも1位に輝いている。元々はステイシー・ラティソウが歌う予定だったらしい。シンセ・ドラムやチャイムの音などが効果的に用いられ、サウンド面での特徴がひじょうに印象に残る。