2024年間ベストアルバム50選: 10-1

10. Waxahatchee, ‘Tigers Blood’

アメリカのシンガーソングライター、ワクサハッチーの6作目のアルバムで、温かみのあるアメリカーナ的な音楽性と、卓越したソングライティングが高く評価された。リードシングルになった「ライト・バック・トゥ・イット」をはじめ、全曲でMJレンダーマンがギターを演奏している。

9. The Cure, ‘Songs of a Lost World’

ザ・キュアーの16年ぶり14作目のスタジオアルバムで、全英アルバムチャートでは1992年の「ウィッシュ」以来、32年以来の1位に輝いた。インディーロック界に多大な影響をあたえたレジェンド的なバンドがこの期におよんでキャリア後期の最高傑作をリリースしたことは、2024年のポップミュージック界における収穫のひとつであった。

8. Kendrick Lamar, ‘GNX’

ケンドリック・ラマーの6作目のアルバムは2024年11月22日にサプライズリリースされるやいなや、全米アルバムチャートで自身5作目となる1位に輝くなど、世界中で大ヒットを記録した。ドレイクとの長きにわたる確執は2024年にも大きな話題となり、このアルバムにも反映しているのだが、圧倒的に納得のクオリティが有無をいわせない。

7. Nia Archives, ‘Silence Is Loud’

イギリスの音楽プロデューサーでシンガーソングライター、ニア・アーカイヴスのデビューアルバムで、全英アルバムチャートでは最高16位を記録した。ジャングルミュージックとブリットポップを融合させようという意欲的な試みは、この独創的で刺激的でありながら日常における感情の機微をも表現した素晴らしいポップアルバムとして結実した。

6. Ariana Grande, ‘eternal sunshine’

アリアナ・グランデの7作目のスタジオアルバムで、タイトルは2004年の映画「エターナル・サンシャイン」にインスパイアされたものである。アルバムもシングルも全米チャートで1位に輝くなど、引き続き大ヒットを記録したのだが、自身の人生経験を反映した脆弱さや繊細さが感じられ、抑制されているがゆえの絶妙な良さが際立っている。

5. Tyla, ‘Tyla’

南アフリカのネクストポップアイコンことタイラのデビューアルバムで、グラミー賞を受賞したヒット曲「ウォーター」に寄せられた高い期待をさらに上回る素晴らしい内容になっている。アマピアノ、ポップ、R&B、アフロビートなどを融合した、まさに最新型のポップミュージックがここにある。テムズやトラヴィス・スコットらもゲストとして参加している。

4. Sabrina Carpenter, ‘Short n’ Sweet’

2024年に最も大きくブレイクしたアーティストの1人だといえるサブリナ・カーペンターのキャリアは意外にも長く、これが6作目のスタジオアルバムである。最高のサマーヒット「エスプレッソ」をはじめ、「プリーズ・プリーズ・ミー」「テイスト」と合わせて、イギリスでは21週にもわたってシングルチャートの1位に君臨した。他にも「ベッド・ケム」「ジュノ」など良い曲がたくさん収録されている。マイルドにセクシーでファニーというサブリナ・カーペンターのキャラクターが存分に生かされた素晴らしいポップアルバムである。

3. Billie Eilish, ‘HIT ME HARD AND SOFT’

ビリー・アイリッシュの3作目のアルバムで、全米アルバムチャートでの最高位は2位だったが、ヨーロッパではイギリスやフランスをはじめ多くの国々においてアルバムチャートの1位に輝いた。ソングライティングやサウンドプロダクションはさらに進化を遂げ、ポップでキャッチーで感動的な「バーズ・オブ・フェザー」や好みの女の子に対しての欲望を歌った「ランチ」など、新たな魅力も随所で発揮されている。

2. Beyoncé, ‘Cowboy Carter’

ビヨンセの8作目のアルバムで、全米アルバムチャートで1位に輝いたのをはじめ、世界中で当然のように大ヒットした。リードシングル「テキサス・ホールド・エム」やドリー・パートン「ジョリーン」のカバーなども収録したカントリーアルバム的な印象も受けられがちだが、実際にはR&B、ヒップホップ、ロックンロールからザディコまで音楽的にかなりバラエティにとんでいて、アメリカ南部出身のビヨンセが自身のルーツを掘り下げたような内容にもなっている。

1. Charli XCX, ‘Brat’

チャーリー・XCXの6作目のアルバムで、全英アルバムチャートで1位、全米アルバムチャートで最高3位を記録するなど、オルタナティブなところもあるエレクトロポップミュージックなのだが、メインストリームでメジャーにヒットしたのみならず、ネオングリーンのカバーアートを含め、ポップカルチャー的なセンセーションを巻き起こした。まさにこれこそが2024年のサウンドといっても過言ではない、モダンクラシック的な作品である。