10. Bone Machine – Tom Waits
トム・ウェイツの11作目のアルバムで、全英アルバムチャートでは最高26位を記録した。全米アルバムチャートでは最高176位だったが、グラミー賞では最優秀オルタナティヴ・アルバム賞を受賞した。
パーカッションに目覚めたというトム・ウェイツが農具や調理器具なども打楽器として使った、ユニークなサウンドが特徴的である。
キース・リチャーズやプライマス、ロス・ロボスのメンバーなどがゲストとして参加している。
9. The Predator – Ice Cube
アイス・キューブの3作目のアルバムで、全米アルバム・チャートでは初登場1位に輝いた。
この年にはロス市警の警官がロドニー・キングという男性に激しい暴力をふるった上に殺害した事実が表面化し、それをきっかけに暴動が起こった。このアルバムにはレイシズムを特に問題視した楽曲が少なくはない、というかそれと無関係ではいられないことから注目されるところもあったように思える。
シングルカットされた「サウス・セントラルの平和な日々(原題:It Was A Good Day)」においても、良い日の条件として、知り合いが誰も殺されなかったことが挙げられている。
8. Generation Terrorist – Manic Street Preachers
ウェールズ出身のインディーロックバンド、マニック・ストリート・プリーチャーズのデビューアルバムで、全英アルバム・チャートで最高13位を記録した。
デビューアルバムを大ヒットさせて解散するとバンドは豪語していたが、結果的には大ヒットしなかったしバンドは結成から30年以上経っても活動していて、アルバムを出せば必ず上位にランクインし続けている。
インタヴューでの発言やビジュアル的なイメージから紛いものと見られがちでもあったのだが、実はたまらなくロマンティックで知的でチャーミングなバンドであることが、少しずつ理解されていく。
たとえばこのアルバムに収録された「享楽都市の孤独(原題:Motorcycle Emptiness)」や「リトル・ベイビー・ナッシング」などによってである。
7. Dry – PJ Harvey
ポリー・ジーン・ハーヴェイを中心とするインディーロックバンド、PJハーヴェイのデビューアルバムで、全英アルバム・チャートで最高11位を記録した。
フェミニズム的なメッセージを含む、知的でポエティックな音楽性がいきなり注目を浴びるきっかけになったアルバムである。
衝撃のデビュー作ではあるのだが、この後にまだまだ素晴らしい作品を発表していくことになる。
6. It’s A Shame About Ray – The Lemonheads
レモンヘッズの5作目のアルバムで、全英アルバム・チャートで最高33位を記録した。
アメリカのオルタナティヴロックではあるのだが、グランジロックのようにダークでヘヴィーではなく、よりポップでキャッチーな音楽性が特徴である。
ボーカリストでソングライターのイヴァン・ダンドにはルックスも含め不思議な魅力もあり、当時、プライベートでも絶妙に微妙な関係性にあったベーシスト、ジュリアナ・ハットフィールドのキュートなコーラスもとても良い。
サイモン&ガーファンクル「ミセス・ロビンソン」のカバーがシングルでリリースされた後、このアルバムにも追加収録された。
5. Dirty – Sonic Youth
ニルヴァーナ「ネヴァーマインド」の大ヒットをきっかけとするオルタナティヴロックのメインストリーム化がこの年の大きな傾向としてあったのだが、ニルヴァーナに先がけてメジャーのゲフィンと契約をし、1990年のアルバム「GOO」も好評だったソニック・ユースが満を持してという感じでリリースしたアルバムである。
ひじょうに注目され、評価も高かったのだが、ニルヴァーナほどの社会現象化はしなかった。その原因でもある分かりやすくなり切れないオルタナティヴ気質こそが、魅力でもあるからだろうか。
それでも、全米アルバム・チャートで最高83位、全英アルバム・チャートで最高6位はいずれもバンドにとって過去最大のヒットであった。
4. Slanted And Enchanted – Pavement
カリフォルニア州出身のペイヴメントもまた、この年に注目されたアメリカのオルタナティヴロックバンドであり、このデビューアルバムは全英アルバムチャートで最高72位を記録した。
イギリスのカルト的なインディーロックバンド、ザ・フォールからの影響が指摘されたりもしたが、それに止まらぬ才能が光っているように感じられた。
特に成功を待ち望んだが、それはけして訪れないというような状況について歌った「ヒア」などがとても素晴らしい。
3. Selected Ambient Works 85-92 – Aphex Twin
狂気と天才とは紙一重というようなことがよくいわれたりもするのだが、エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスについても、それはよく言われていたような気がする。
ほとんど眠らないとレーベルとの契約金で戦車を買ったとかいろいろなエピソードがあったわけだが、これはそのデビューアルバムにあたり、タイトルから想像される通り、アンビエントな楽曲が古くは1985年、リチャード・D・ジェームスが13歳か14歳だった頃につくられたものから収録されている。
ポップミュージックの新たな可能性を提示し、テクノではあるのだがインディーロックファンにもわりと入り込みやすい音楽でもある。
2. Automatic For The People – R.E.M.
インディーロック的なシーンから登場し、カレッジラジオでまずは人気が出たともいわれているが、少しずつ人気を広めていって、この頃にはすっかりメインストリームでもお馴染みになっていたロックバンド、R.E.M.の最高傑作ではないかといわれることも多いアルバムである。
これこそが大人のロックというものではないかと思えるほど、深みがあるのだがそれでいて聴きやすくもある。
ニルヴァーナのカート・コバーンが命を絶った時に、聴いていたと思われるアルバムとしても知られる。
1. The Chronic – Dr. Dre
ヒップホップのプロデューサーでラッパーのドクター・ドレーによるソロとしてはデビューアルバムにあたり、全米アルバム・チャートでは最高3位を記録した。
シンセサイザーのメロディーやレイドバックしたグルーヴが特徴的な、Gファンクというサブジャンルを有名にしたアルバムでもある。
ソロデビュー前のスヌープ・ドッグはこのアルバムに参加したことによって、多くの人たちから注目されるようになっていった。
その後のポップミュージックに及ぼした影響がひじょうに大きい画期的なアルバムであり、インディーロックのアークティック・モンキーズさえ、このアルバムがなければもっと違う音楽性になっていたはずである。