ザ・クラッシュの名曲ベスト30(20-11)
20. Stay Free (1978)
ザ・クラッシュの2作目のアルバム「動乱(獣を野に放て)(原題:Give’em Enough Rope)」に収録された、ミック・ジョーンズがリードボーカルをとった曲である。
アルバムは全英アルバム・チャートで最高2位を記録し、デビューアルバム「白い暴動」の最高12位を大きく上回った。「白い暴動」が1979年まで発売されなかったアメリカではこのアルバムがデビュー作となり、全米アルバムチャートで最高128位を記録した。
プロデューサーのサンディ・パールマンはブルー・オイスター・カルトの作品などを手がけた人であり、このアルバムのサウンドはあまりパンクロック的ではなくなっている。そのため、当時はヒットしたものの、ポップミュージック史上における評価はミック・ジョーンズ在籍時のオリジナルアルバムの中でもそれほど高くはない。それでも、アンセミックなこの曲などには抗いがたい魅力がある。
19. London’s Burning (1977)
「白い暴動」のアルバム収録曲で、邦題は「ロンドンは燃えている!」である。ロンドンが退屈で燃えていると歌われるこの曲は、若者のフラストレーションの発露としても捉えられたパンクロックを象徴する楽曲としても取り上げられがちで、ザ・クラッシュの初期の代表曲としても知られる。初期衝動的なエナジーに溢れているところがとても良く、これぞパンクロックという感じである。日本のパンクロックバンド、アナーキーが「東京イズバーニング」としてカバーもしていた。
18. I Fought The Law (1979)
ザ・クラッシュがアルバムでいうと「動乱(獣を野に放て)」と「ロンドン・コーリング」の間にリリースしたEP「ザ・コスト・オブ・リヴィング」の、A面1曲目に収録された曲である。ジョー・ストラマーとミック・ジョーンズがアルバムのオーバーダブのために訪れたサンフランシスコのジュークボックスで、この曲のボビー・フラー・フォーによるバージョンを初めて聴いて、イギリスに帰国してからカバーバージョンをレコーディングした。アメリカではイギリスよりも遅れてリリースされ、内容も異なっていた「白い暴動」のアルバムに収録され、シングルでもリリースされた。
カバーではあるのだが、いかにもザ・クラッシュらしい楽曲に仕上がっていて、日本では2000年代にに入ってから日産エクストレイルという自動車のテレビCMに使われて少し人気が出たり、ゲーム機のドラムマシンに収録されていたりもした。
17. Bankrobber (1980)
「ロンドン・コーリング」と「サンディニスタ!」の間にリリースさたシングルで、オリジナルアルバムには収録されていない。全英シングル・チャートでは最高12位を記録している。ザ・クラッシュはレゲエの曲をカバーしてもいたのだが、この曲はオリジナルのレゲエソングであり、ジャマイカのレゲエアーティストで音楽プロデューサー、マイキー・ドレッドによってプロデュースされている。ダブ的なサウンドとジョー・ストラマーの味のあるボーカルが、特徴的でとても良い。
16. The Call Up (1980)
「サンディニスタ!」からの先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高40位を記録した。ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻を受けて、アメリカでは選抜徴兵登録要求が再開されていたのだが、そのタイミングでリリースされた反戦ソングでもあり、レゲエ的なサウンドに乗せて、死にたくはないし殺したくもないと、ジョー・ストラマーによって歌われる。
15. Train In Vain (Stand By Me) (1979)
2枚組アルバムとしてリリースされた「ロンドン・コーリング」の最後に収録されている曲だが、当初はジャケットに曲名が載っていなかったという。「NME」のソノシート用の楽曲としてレコーディングされたが、結果的に「ロンドン・コーリング」に収録されることになったようだ。アメリカでは全米シングル・チャートで最高23位を記録し、初のトップ40ヒットとなっている。
ミック・ジョーンズによって主につくられたこの曲は、ザ・スリッツ「ティピカル・ガールズ」に影響されているともいわれているが、メンバーのヴィヴ・アルバータインとは当時、付き合っていたという。また、タイトルである「トレイン・イン・ヴェイン」というフレーズは歌詞にまったく出てきてはいなく、リズムがなんとなく列車っぽいという理由で付けられたものらしい。
14. Rudie Can’t Fail (1979)
「ロンドン・コーリング」のバラエティーに富んだポップ感覚を象徴するような、ロックステディ的でとても楽しい楽曲である。朝からビールを飲んでいるタイプのルードボーイのライフスタイルをテーマにしていて、ホーンもご機嫌で最高である。
13. The Guns Of Brixton (1979)
これもまた「ロンドン・コーリング」収録曲だが、ジョー・ストラマーやミック・ジョーンズではなく、ベーシストのポール・シムノンによってつくられている。地元であるサウスロンドンはブリクストンの不穏な雰囲気がレゲエ、ダブ的なサウンドによって表現されている。そして、この曲は90年代には後にファットボーイ・スリムとしてとても有名になるノーマン・クックによるユニット、ビーツ・インターナショナルの全英NO.1ヒット「ダブ・ビー・グッド・トゥ・ミー」でベースラインがサンプリングされたことによって、さらに注目をあつめることになった。
12. White Riot (1977)
ザ・クラッシュのデビューシングルで、全英シングル・チャートでは最高36位を記録した。パトカーのサイレン音ではじまるのがシングルバージョンで、アルバム「白い暴動」には1976年にレコーディングされたデモバージョンが収録されている。しかし、アメリカ盤のアルバムにはシングルバージョンの方が収録された。
ジョー・ストラマーとポール・シムノンが巻き込まれたノッティング・ヒル・カーニバルでの暴動にインスパイアされ、階級闘争がテーマになっている。タイトルから当時はレイシズム的な意味があるのではないかと誤解されることもあったというのだが、ザ・クラッシュといえば反レイシズムを強く主張していたバンドの1つとしても有名であり、白人にも自分たち自身の暴動をと訴える内容になっている。
11. Police & Thieves (1977)
「白い暴動」のアルバムに収録されたレゲエ楽曲で、リー・ペリーがプロデュースしたジュニア・マーヴィン「ポリスとコソ泥」のカバーである。当初はアルバムに収録するつもりはなく、リハーサルで演奏されているだけだったのだが、あまりにも良かったので結果的に収録されることになったのだという。イントロはザ・クラッシュによってオリジナルに加えられたものであり、この時点で早くもパンクロックとレゲエとの融合が実現している。リー・ペリーは当初、このバージョンによって曲が台なしにされたと感じたようだが、後にザ・クラッシュの曲をプロデュースもしている。また、ボブ・マーリーはこの曲のザ・クラッシュによるバージョンにインスパイアされ、「パンキー・レゲエ・パーティー」をつくったといわれている。