サザンオールスターズの名曲ベスト50 Pt.5 (10-1)
10. マンピーのG★スポット (1995)
サザンオールスターズの35枚目のシングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。完成予約限定生産で発売されたベストアルバム「HAPPY!」からの先行シングル的な役割も果たし、CMに使われたり1曲目に収録したりもしていた。
「シュラバ★ラ★バンバ」「エロティカ・セブン」と共に「エロス3部作」などともいわれているように、性的な内容をテーマにしているとされ、ライブでもそのような演出がされたこともあるのだが、ひじょうに健全で爽やかさすら感じさせる。
休養中であったベースの関口和之が、このシングルから活動を再開している。
9. HOTEL PACIFIC (2000)
サザンオールスターズの45枚目のシングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。この年の夏に地元である茅ヶ崎で開催されたライブに合わせて発表された新曲であり、かつて茅ヶ崎に実在していたパシフィックホテル茅ヶ崎をモチーフにしたご当地ソングである。「夏をあきらめて」の歌詞に登場する「パシフィックホテル」もまた、ここのことである。
昭和歌謡的な路線における1つの到達点ともいえるひじょうにハイクオリティーな楽曲だが、アレンジには相当なこだわりがあったという。パフォーマンスにはビートたけしやダチョウ倶楽部のギャグポーズを含む振り付けが導入されたのも画期的であった。
8. C調言葉に御用心 (1979)
サザンオールスターズの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高2位を記録した。テレビの歌番組などにもよく出演していた1979年の最後にリリースされ、ヤマザキナビスコチップスターのCMソングにも起用されていた。
タイトルの「C調」とは「調子いい」をひっ切り返した業界用語的なものだと思われるが、リリース当時も一般大衆的には特に流行っていたというわけでもない。
桑田佳祐の「純情ハートの俺」的な側面がフルに発揮され、性愛的な表現も用いながら若者のナイーヴなハートに寄り添った、初期サザンオールスターズの集大成的な楽曲でもあるように思える。
7. LOVE AFFAIR~秘密のデート (1998)
サザンオールスターズが結成20周年を迎えた1998年に41枚目のシングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。
主題歌として使われていたテレビドラマ「Sweet Season」の内容に合わせ、不倫の恋がテーマになっている。横浜近辺の様々なデートスポットが歌詞に登場し、ご当地ソング的な側面も持ってはいるが、これは桑田佳祐の実体験に基づいたものではなく、「じゃらん」や「るるぶ」といった観光情報が載ったムックを読んで想像をふくらませたものらしい。
6. 勝手にシンドバッド (1978)
サザンオールスターズの衝撃のデビューシングルで、当時のオリコン週間シングルランキングでは最高3位を記録したが、デビュー25周年を迎えた2003年に再発された時には1位に輝いている。
当時の日本語ポップスにはまったくなかったタイプの音楽性に加え、桑田佳祐のユニークきわまりない歌詞やボーカルパフォーマンスによって、当時はコミックソング的な見方もされていた。
タイトルはこの前の年に大ヒットした沢田研二「勝手にしやがれ」とピンク・レディー「渚のシンドバッド」を組み合わせて、ドリフターズの志村けんがギャグにしていたものから取られている。「ザ・ベストテン」の「今週のスポットライト」に初登場した桑田佳祐は、「目立ちたがり屋の芸人」を自称していた。
5. 希望の轍 (1990)
桑田佳祐が監督した1990年の映画「稲村ジェーン」のサウンドトラックに収録された曲で、アーティスト名は稲村オーケストラとなっていた。レコーディンにも桑田佳祐の他にサザンオールスターズのメンバーは参加していないのだが、「HAPPY!」「海のYeah!!」「バラッド3~the album of LOVE~」といったベストアルバムにも収録されていて、ファンの間でもサザンオールスターズの楽曲として認識されている。
国道134号を指している「エボシライン」というワードが歌詞に入っていたりと茅ヶ崎のご当地ソング的な側面もあり、JR茅ヶ崎駅の発車メロディにも使用されている。シングルではリリースされていないもののひじょうに人気が高く、サザンオールスターズの全キャリアを通しての代表曲の1つとしても知られている。
4. いとしのエリー (1979)
サザンオールスターズの3枚目のシングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高2位、TBSテレビ系の「ザ・ベストテン」では7週連続1位、年間ベストテンでは小林幸子「おもいで酒」に次ぐ2位を記録した。
「勝手にシンドバッド」「気分しだいで責めないで」とコミカルでアップテンポな曲が続いた後、レーベルは「思い過ごしも恋のうち」を次のシングルの候補にしていたが、バンド側はバラードであるこの曲の発売を強く希望したという。時期尚早だとするレーベルの反対を押し切って発売されたこのシングルは出足こそいま一つだったものの、少しずつ支持を得ていき、結果的に大ヒットどころか歴史的な名曲とまでいわれるようになった。
当時の個人的な感想としても、サザンオールスターズのわりに普通の曲すぎるのではないかと最初は思っていたのだが、ラジオで聴くうちに実はとても良い曲なのではないかと次第に好きになっていった記憶がある。
「10年前の僕らは胸をいためて『いとしのエリー』なんて聴いてた」(小沢健二「愛し愛されて生きるのさ」)、「夜のドライブはいつもふたりきり ラジオから流れている『いとしのエリー』」(ピチカート・ファイヴ「これは恋ではない」)と、「渋谷系」の名曲の歌詞でも取り上げられていたりする。
3. 涙のキッス (1992)
サザンオールスターズの31枚目のシングルとして「シュラバ★ラ★バンバ」と同時に発売され、オリコン週間シングルランキングで7週連続1位、154.9万枚の売上でバンドにとって初のミリオンセラーを記録した。
テレビドラマ「ずっとあなたが好きだった」の主題歌として書き下ろされたラヴソングであり、番組プロデューサーからは平成版「いとしのエリー」が期待されていたというが、実際に大きく超えるヒットを記録した。
2. 真夏の果実 (1990)
映画「稲村ジェーン」の主題歌であり、サザンオールスターズにとって28枚目のシングルとしてリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。
「四六時中も好きと言って」というフレーズがとても印象的な夏ソングであり、デジタルでありながら温もりが感じられ、センチメンタルなサウンドがメロディーやボーカルにとても合っている。
1. TSUNAMI (2000)
TBSテレビ系のバラエティ番組「ウンナンのホントコ!」での恋愛リアリティ企画「未来日記Ⅲ」のテーマソングであり、オリコンシングルランキングではこの年の年間1位に輝いた。サザンオールスターズのそれまでのファン層に加え、より若い世代のリスナーをも獲得したことにより、驚異的なセールスを記録することになった。
タイトルは失恋によって押し寄せた切ない思いを津波にたとえたもので、マニック・ストリート・プリーチャーズにも「TSUNAMI」(1998年のアルバム「ディス・イズ・マイ・トゥルース・テル・ミー・ユアーズ」に収録され、翌年にシングルカットもされた)という曲があったことにより個人的には英語表記にも違和感を感じなかったのだが、「TSUNAMI CALLING」というサーフィンのビデオからインスパイアされたものらしい。
ビーチ・ボーイズ「駄目な僕(原題:I Just Wasn’t Made For These Times)」のタイトルからイメージをふくらませていったという歌詞は、「見つめ合うと素直にお喋り出来ない」というフレーズをはじめ桑田佳祐の「純情ハートの俺」性が全開になったものだが、それが世代を超えて支持され、エバーグリーンな名曲として評価されている要因であるように思える。
2011年に発生した東日本大震災においては津波による甚大な被害も生じたことから、この曲のオンエアをも自粛する動きなどもあったが、名曲としての評価には揺るぎないものがある。