洋楽ロック&ポップス名曲1001:1971, Part.2
T. Rex, ‘Get It On’
T・レックスのアルバム「電気の武者」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートでは「ホット・ラヴ」に続き2曲連続の1位、全米シングルチャートでは最高10位を記録した。アメリカではチェイスというバンドの同名曲と混乱を避けるため、「Bang a Gong (Get It On)」のタイトルでリリースされていた。
グラムロックを代表する楽曲として、印象的なギターリフとマーク・ボランのセクシーなボーカルが特徴である。性的な内容について歌われているのだが、あまりにもポップでキャッチーなのでどぎつくはない。イギリスではこの後も「テレグラム・サム」「メタル・グルー」が1位になったり、他にもトップ10ヒットを連発するのだが、アメリカではこれが唯一のヒット曲であった。
1985年にはロバート・パーマーやデュラン・デュランのメンバーなどによるスーパーグループ、パワー・ステーションがこの曲をカバーして、全米シングルチャートで最高9位、全英シングルチャートで最高22位を記録した。この年にはT・レックスのベストアルバム「ベスト・オブ・ザ・20センチュリー・ボーイ」がリリースされ、全英アルバム・チャートで最高5位を記録するなど、軽くリバイバルしていたような気もする。
Isaac Hayes, ‘Theme from Shaft’
アイザック・ヘイズが音楽を手がけた映画「黒いジャガー」のテーマソングで、全米シングルチャートで1位に輝いた。当初はシングルカットを予定していなかったのだが、あまりにも人気が高かったことから、短縮したバージョンをシングルとしてリリースすることになった。
ワウペダルを効果的に使用したギターやストリングス、クールなボーカルや女性コーラスなど、後のソウルミュージックやディスコソングなどに強い影響をあたえたといわれている。
翌年のアカデミー賞では楽曲賞を受賞するのだが、俳優部門以外ではアフリカ系アメリカ人として初めての受賞となった。
The Who, ‘Baba O’Riley’
ザ・フーのアルバム「フーズ・ネクスト」に収録された楽曲で、イギリスやアメリカではシングルカットされていないのだが、評価も人気もひじょうに高く、代表曲の1つとして知られている。
「トミー」の次の作品として予定されていたロックオペラ「ライトハウス」のためにピート・タウンゼントによってつくられた楽曲だが、制作が中止されたため、他のいくつかの曲と共に「フーズ・ネクスト」に収録されることになった。
A.R.P.シンセサイザーのサウンドが特徴的であり、テクノポップを先取っていたと評価される場合もある。
タイトルはインドの導師、ミハー・ババとミニマリスト的な実験音楽で知られる作曲家、テリー・ライリーに由来する。
「CSI:ニューヨーク」をはじめ、様々なテレビシリーズや映画のサウンドトラックに使用されたことでも知られる。
John Lennon, ‘Imagine’
ジョン・レノンのアルバム「イマジン」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高3位、日本のオリコン週間シングルランキングでは最高14位を記録している。イギリスでは1975年のベストアルバム「シェイヴド・フッシュ」が発売されるタイミングでやっとシングルカットされ、全英シングルチャートで最高6位を記録している。ジョン・レノンが凶弾に倒れた直後には再びランクインし、1981年1月から4週連続1位を記録している。
ソフトでマイルドなサウンドとメロディーにのせて歌われているのは、宗教や国境、物質主義などを否定し、平和を希求するあまりにもラディカルで理想主義的なメッセージである。歌詞のアイデアの大半は妻であるオノ・ヨーコの思想に影響を受けたものであることが、亡くなる直前のインタヴューで語られている。
John Lennon, ‘Jealous Guy’
ジョン・レノンのアルバム「イマジン」に収録された曲で、当時はシングルカットされていないのだが、ひじょうに有名な楽曲である。フィル・スペクターがプロデュースしたサウンドにのせて、タイトルの通り嫉妬深さゆえに愛する人を傷つけてしまう、男の弱くてダメなところを剝き出しで歌っているところが共感を呼ぶ。
そして、この曲をさらに有名にしたのはジョン・レノンが亡くなった直後にリリースされた、ロキシー・ミュージックによるカバーバージョンであろう。ドイツのテレビ番組に出演したロキシー・ミュージックがジョン・レノンの追悼の意味でカバーしたこの曲の演奏が好評で、レコードも発売されることになったのだが、全英シングル・チャートではロキシー・ミュージックにとって唯一の1位を記録し、楽曲の良さをより広めることにもつながった。
Nilsson, ‘Without You’
ニルソンのアルバム「ニルソン・シュミルソン」からシングルカットされ、全米シングルチャートで4週連続1位、全英シングルチャートでも1位を記録した。グラミー賞では最優秀男性ポップボーカル賞を受賞している。
この曲を最初にレコーディングしたのはイギリスのロックバンド、バッド・フィンガーで、2人のメンバーによる別々の楽曲を組み合わせたものである。
ニルソンはバッドフィンガーのバージョンを初めて聴いたときにビートルズの曲だと思ったようだが、その後でカバーバージョンをレコーディングすることにしたようである。
1994年にはマライア・キャリーによるカバーバージョンがアルバム「ミュージック・ボックス」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高3位、全英シングルチャートで1位のヒットを記録するが、それはニルソンが亡くなった少し後のことであった。
また、この曲を書いたバッドフィンガーのメンバー、ピート・ハム、トム・エヴァンズはいずれも後に首吊り自殺している。
Sly and the Family Stone, ‘Family Affair’
スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバム「暴動」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで3週連続1位、全英シングルチャートでは最高15位を記録した。
1968年以降、「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」「エヴリデイ・ピープル」「サンキュー」などヒット曲を次々と生み出していたスライ&ザ・ファミリー・ストーンだが、スライ・ストーンのドラッグ中毒などもあり、この頃にはバンドとして機能しなくなっていた。
この曲の演奏にもスライ・ストーン以外のメンバーはかかわっていないが、それもあって繰り返されるオーバーダビングやドラムマシンの導入など、ひじょうにユニークなサウンドになっている。
タイトルの通り家族の問題がテーマになっていて、子供の成長にとって重要なのは生まれか育ちか、というようなことが歌われている。