洋楽ロック&ポップス名曲1001:1998, Part.1
Air, ‘Sexy Boy’
フランスのエレクトロニカデュオ、エールのデビューアルバム「ムーン・サファリ」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高13位を記録した。
ジャン=ブノワ・ダンケルがある人から借りたポール・マッカートニーがビートルズで弾いていたのと同じモデルのベースでリフを弾いてみたところ、ニコラ・ゴダンが突然に「セクシーボーイ」と叫んだところからこの曲ができたのだという。
Tシャツを着た猿のぬいぐるみが登場するミュージックビデオもアーティスティックなセンスが感じられるうえに絶妙な小洒落感もあってとても良かった。
Neutral Milk Hotel, ‘Holland, 1945’
アメリカのインディーロックバンド、ニュートラル・ミルク・ホテルのアルバム「イン・ザ・エアロプレーン・オーバー・ザ・シー」からシングルカットされた楽曲である。
アルバムに収録された他の楽曲と同様に、この曲は第二次世界大戦中のナチス・ドイツによるホロコーストの犠牲者、アンネ・フランクについて歌われている。
バンドの中心メンバーであるジェフ・マンガムは「アンネの日記」を初めて読んだあと、その悲劇的な物語に心を奪われ、数日間を泣いて過ごしたという。
その悲しみと没頭がインディーロックのマスターピースとして知られる名盤をつくりあげた。
Cornershop, ‘Brimful of Asha (Norman Cook Mix)’
インド系イギリス人のティジンダー・シンを中心に結成されたインディーロックバンド、コーナーショップのアルバム「ボーン・フォー・ザ・セヴンス・タイム」からリードシングルとしてリリースされた楽曲のファットボーイ・スリムによるリミックスバージョンで、全英シングルチャートで1位を記録した。
多くのインド映画で素晴らしい歌声を聴かせ、人々に生きる希望をあたえた歌手のアシャラ・ボスレのことを歌った楽曲である。歌詞では他にもスターの名前が次々と歌われ、ポップカルチャー賛歌のようにもなっている。
レイシズムに抵抗するメッセージ性の強い楽曲なども数多く発表していたコーナーショップだが、この曲は思いがけないクロスオーバーヒットを記録することになった。
Madonna, ‘Ray of Light’
マドンナのアルバム「レイ・オブ・ライト」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高5位、全英シングルチャートで最高2位を記録した。
ウィリアム・オービットをプロデューサーに迎えたアップリフティングなテクノソングであり、マドンナの最新トレンドをキャッチしてメインストリームポップ化する才能がじゅうぶんに発揮された楽曲だということができる。
マドンナは娘を出産した後でスピリチュアリティやカバラ教にも深い関心をいだくようになり、その辺りのテイストもこの楽曲にはナチュラルに反映している。
Pulp, ‘This Is Hardcore’
パルプのアルバム「ディス・イズ・ハードコア」からリードシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高12位を記録した。
苦節の末にブリットポップブームで一般大衆的にも大ブレイクを果たしたパルプだが、この楽曲はその激しすぎるリバウンドとでもいうべき暗いトーンに貫かれている。
ジャーヴィス・コッカーはとにかくポルノばかりをずっと見ていて、そうすると同じ出演者の瞳から時を経るごとに何かが消えていくのを見てとることができ、それはスターダムを経験し失望した自身にとっても切実なもので、その成果としてこの楽曲ができあがったようである。
Massive Attack, ‘Teardrop’
マッシヴ・アタックのアルバム「メザニーン」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高10位を記録した。
コクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーがボーカリストとして参加していて、その耽美的な歌声を聴かせているのだが、それだけではなく友人でもあったジェフ・バックリィが溺死したというニュースに触発されて書いたという歌詞も提供している。
アニマトロニクスの胎児が子宮の中からこの曲を歌うミュージックビデオも高く評価され、MTVヨーロッパミュージックアワードで最優秀ビデオ賞を受賞したりもしている。