NewJeansの名曲ベスト13 (13 Essential Tracks of NewJeans)

韓国の5人組ガールズグループ、NewJeans(ニュージーンズ)は2022年の夏にデビューするやいなや、そのナチュラルでありながらトレンド感のあるイメージと懐かしいのだが新しい音楽性によって注目をあつめ、一躍ポップアイコン化したような印象がある。

これまでに発表した楽曲はそれほど多くはないのだが、早くも韓国のヒットチャートにおいて新記録を更新したり、各音楽賞では新人賞を獲得したりと大活躍する様子が伝えられたり、日本ではデビューシングルにあたる「OMG」がオリコンで1位に輝いたりもしている。

それでいてデビューから約1年後にリリースされた2作目のEP「Get Up」がまた素晴らしすぎるので、ここで特に重要だと思われる10曲を挙げていきながら、その足跡を振り返っていきたい。

‘Attention’ (‘New Jeans’, 2022)

NewJeansのデビューシングルで、韓国のシングルチャートではいきなり1位に輝いた。新しいグループがデビューする前には、メンバーのプロフィールやグループのコンセプトなどがまずは公表されることが定例とされがちなK-POP界なのだが、NewJeansの場合はそれも先にまずはこの曲のビデオが発表されたのが特徴的であった。

どこか懐かしさも感じさせるR&B的な楽曲で、K-POPにしてはライトでナチュラルな感覚も特徴的であった。K-POP界において様々なアーティストのブランディングやアートディレクションなどを成功させてきたミン・ヒジンが手がける新しいグループということで一部では注目されていたのだが、新型コロナウィルスの影響もあって、デビューは予定していたよりも少し遅れた。

‘Hype Boy’ (‘New Jeans’, 2022)

「Attention」に続く2作目のシングルとして、NewJeansはすぐにこの「Hype Boy」をリリースし、韓国のシングルチャートで最高2位を記録する。そして、さらに2曲の新曲を追加したEP「New Jeans」のリリースを早くも発表した。

NewJeansのメンバーは楽曲のソングライティングにもかかわっている場合もあるが、「Attention」でのダニエルに続いて、この曲においてはハニの名前もクレジットされている。

「Attention」に比べるとアップテンポな楽曲ではあるのだが、どことなくレトロな感覚はやはり感じられ、それに加えてどこか切なげなメロディーもとても良い。

‘Cookie’ (‘New Jeans’, 2022)

NewJeansにとって最初のEPとなる「New Jeans」に収録された4曲のうち、3曲目のシングルとしてリリースされ、韓国のシングルチャートで最高9位を記録した。

エレクトロニックなR&Bサウンドとナチュラルなボーカルパフォーマンスが絶妙にマッチし、それまでの2曲とはまた異なったグループの魅力を提示することに成功しているといえる。

当時、NewJeansのメンバーは平均16歳ぐらいだったのではないかと思うのだが、それにしては歌詞にアダルトな隠喩が含まれているように聴こえなくもないのではないか、というような批判がされたりもしたのだが、おそらくそう感じる人たちの方が意識しすぎかもしれない。

‘Ditto’ (‘OMG’, 2023)

2023年1月2日に韓国ではシングルアルバムと呼ばれる2曲入りコンテンツ「OMG」がリリースされるのだが、この曲はそこからの先行シングルとしてリリースされた。韓国のシングルチャートでは13週連続1位に輝き、歴代新記録を打ち立てるほどの大ヒットとなった。また、シンガポール、台湾、ベトナム、インドネシアのヒットチャートでも1位に輝いたり、アメリカやイギリスのシングル・チャートにも初めてランクインを果たした。

シンセポップやUKガラージ、さらにはダンス・ミュージック界のトレンドでもあるボルチモア・ブレイクスなどをも取り入れたトラックに乗せて、誰かに恋をした時のピュアな想いが切々と歌われている。メンバーが学校の制服姿で出演しているミュージックビデオもとても良い。

‘OMG’ (‘OMG’, 2023)

シングルアルバム「OMG」のタイトルトラックで、韓国のシングルチャートでは最高2位を記録した。メンバーのハニが作詞にもかかわっている。日本ではこの曲がデビューシングルにあたり、オリコン合算週間ランキングで1位に輝いた。

ヒップホップR&B的なサウンドが特徴的であり、デビューから約半年ほどにして音楽的にもかなり本格化したような印象を受けるのだが、いろいろ実験的なことも細かく行われているところもとても良い。

ボーカルパフォーマンスにおいても、ナチュラルでフレッシュな魅力を保ちながら、より聴きごたえがある感じにもなっている。ミュージックビデオに見られるカジュアルなトレンド感も素晴らしい。

‘Super Shy’ (‘Get Up’, 2023)

2作目のEP「Get Up」からの先行シングルとして2023年7月7日にリリースされ、韓国のシングルチャートでは「Attention」「Ditto」に続く3曲目の1位に輝いた。

「Ditto」「OMG」で音楽的に早くも格段の成長を見せつけ、次はどうなるかと思っていたところ、夏にはライトでナチュラルなNewJeansのとても良いところを絶妙にアップデートしたかのようなこの曲で来てくれたところがとても良い。

もしかすると何となく物足りなさを感じてしまったリスナーもいたような気もするのだが、いろいろな意味でやはりこういう曲こそがこのタイミングでは良かったのではないかと思ったりもする。

歌詞の内容はとてもシャイなので好きな人に想いを上手く伝えることができない、というようなものなのであり、ポップでキャッチーなメロディーやサウンド、メンバーのポジティヴィティーに満ち溢れたパフォーマンスには、2023年夏の時点における最新型のポップミュージックとしての強度を感じずにはいられない。

‘New Jeans’ (‘Get Up’, 2023)

「Get Up」のEPに先がけて「Super Shy」と同時に発表された楽曲である。EPのジャケットアートワークにもあらわれている人気アニメーションシリーズ「パワーパフガールズ」とのコラボレーション楽曲であるのと同時に、フレッシュでクリーンであるというグループのステイトメントとしても機能している。作詞にはメンバーのヘリンもかかわっている。

UKガラージとジャージークラブという音楽サブジャンルからの影響は、EPの1曲目に収録されたこの曲においても特徴的である。この実はいろいろと実験的なことをやったりしていながらもナチュラルな感じというのは、今日のポップ・ミュージック界においてもかなりの個性であり、それが時代のトレンドとも合致しているというのがなかなか味わい深く、それがカジュアルに実感できる楽曲でもある。

‘Cool With You’ (‘Get Up’, 2023)

NewJeansがデビュー1周年を迎える前日、2023年7月21日にリリースされたEP「Get Up」からシングルカットされた曲である。「Get Up」に収録された6曲はどれもとても良いのだが、通して聴いてもわずか約12分間という短さも特徴である。3分を超える曲は1曲も収録されていなく、この曲も約2分27秒である。

音楽的にはやはりUKガラージからの影響が特に強く感じられるクラブ・ミュージック的な楽曲ではあるのだが、個性ともいえるピュアでナチュラルなボーカルによる英語や韓国語の歌によって、オリジナルなものになっている。

‘ETA’ (‘Get Up’, 2023)

「Get Up」のEPに収録された楽曲の中でも「Super Shy」の次によく聴かれいて、iPhone 14 ProのCMにも起用されている。NewJeansの音楽に影響をあたえているジャンルの1つとして、ダンス・ミュージック界のトレンドでもあるボルチモアブレイクスとかジャージークラブとか呼ばれるものが挙げられるのだが、それが特に色濃く反映された楽曲でもある。

特にイントロから繰り返されるホーンのフレーズなのだが、それに打ち消されるはずもなく、効果的に用いて、NewJeansの音楽以外の何ものでもない楽曲にしてしまっているところがとても良い。

ピュアでナチュラルなイメージが特徴的でもあるNewJeansだが、この曲では恋愛にまつわる一筋縄ではいかない複雑でリアルな現実を歌ってもいて、また新しい魅力を感じさせてくれる。

‘ASAP’ (‘Get Up’, 2023)

「Get Up」EPの最後に収録された楽曲で、時計の秒針を思わせるサウンドではじまるのだが、電話を一旦は切るもののやはりまだ話したいことがあってまたかけてしまう、というような心理状態が歌われている。

そのようなテーマのガールズポップにふさわしく、ボーカルには幸せに満ち溢れた絶妙に微妙なキュートネスが存分に感じられ、夢見心地なサウンドに加え、メンバーによる「Tik tok, tik tok, tik tok」というコーラスがまたとても良い。

‘Bubble Gum’ (‘How Sweet’, 2024)

2024年4月27日にミュージックビデオが公開された後、シングル「How Sweet」にカップリング曲として収録された楽曲である。

NewJeansのナチュラルな魅力が存分に感じられるR&B的なポップソングであり、海辺でシャボン玉を吹いて楽しんだりするメンバーの姿を記録したミュージックビデオも眩しすぎてとても良い。

当時、NewJeansを取り巻く業界的な騒動が話題になっていたのだが、それだけにこの楽曲のナチュラルな心地よさには心が洗われるようでもあった。

‘How Sweet’ (‘How Sweet’, 2024)

2024年5月24日にリリースされたシングル「How Sweet」のタイトルトラックである。どこかレトロなテクノポップという感じで、今度はこう来たかとそのセンスの良さに感激したのだが、音楽ジャンル的にはマイアミベースとかエレクトロクラッシュとかということになるようである。

恋に甘く危険な蜜の味を予感し、「あなた、私の物語の中の小さな悪魔よ 私のドアをノックしないで」というような絶妙に微妙な感情が歌われている。

夏を感じさせながらどこか切なげでもあり、コカコーラや駄菓子屋のような店のイメージなどが効果的に用いられているミュージックビデオもとても良い。

‘Supernatural’ (‘Supernatural’, 2024)

2024年6月21日にリリースされたシングル「Supernatural」のタイトルトラックで、日本のビジュアルアーティスト、村上隆のコラボレーションも話題になった。

沖縄出身のシンガー、Manamiにファレル・ウィリアムスが提供した2009年の楽曲「Back Of My Mind」が引用されているのだが、R&B的なサウンドがメインストリームになってきた90年代あたりのJ-POPを思わせるようなところもある。

ノスタルジックなのだが新感覚でもあるという、これまでにもNewJeansがやってきたパターンのこれもまた一種ではあるのだが、英語、韓国語、日本語が混じった歌詞も含めて新境地を感じさせてくれる。