The 25 essential K-pop songs: part.2

2NE1, ‘I AM THE BEST’ (2011)

グループ名の読み方は「トゥエニィワン」で、21世紀と「New Evolution」の意味が組み合わさっている。というか、「21」というアーティスト名がすでに使われていたのでこれになったということのようである。

それはそうとして、それまでのガールズグループにありがちだったキュートでピュアなイメージに対して、このグループの場合はよりカッコよさのようなものを強く打ち出してきたところが特徴であり、特にこの楽曲などは「I AM THE BEST」というタイトルからしてかなり強気でとても良い。

中毒性の高いエレクトロニックなサウンドにオリエンタルなムードもあって、様々な音楽ジャンルからの影響を取り入れた最新型のポップミュージックとしてのK-POPを象徴するような楽曲であり、同性である女性が憧れるガールズグループという、後に主流となるガールクラッシュ的な価値観を体現しているようにも感じられる。

PHY, ‘Gangnam Style’ (2012)

K-POPのワールドワイド化を語る上でひじょうに重要な楽曲であり、全米シングルチャートで最高2位、全英シングルチャートでは1位に輝くなど、欧米でも大ヒットした。

成金でイケている男を意図的に気取ったどこかユーモラスな雰囲気と乗馬ダンスのインパクトなどで大ヒットしたようなところがあるのだが、楽曲そのものもエレクトロニックなダンスポップソングとして実に魅力的である。

国際的な大ヒットにあたって、YouTubeの動画が大きく影響したことも時代性を感じさせる。

EXO, ‘Growl’ (2013)

中国人メンバーを含む男性グループで、韓国と中国を中心にプロモーションが行われた。K-POPの歴史上は第3世代を代表するグループの1つとされている。

繰り返されるシンセのフレーズが印象的なR&Bテイストの楽曲で、グループが大きくブレイクするきっかけとなった。

f(X), ‘4 Walls’ (2015)

グループ名は数学の関数に由来する。当初は5人組女性グループだったが、メンバーが1名脱退し、4人組になってからリリースされた楽曲である。

ハウスミュージックからの影響が感じられるクラブオリエンテッドなサウンドが特徴のラヴソングとなっている。

TWICE, ‘TT’ (2016)

オーディション番組「SIXTEEN」で選抜された韓国人、日本人、台湾人のメンバーからなる女性グループで、グループ名には音楽とパフォーマンスで2度魅了するという意味が込められている。

タイトルは悲しみを表現する場合に用いられる顔文字「(T_T)」に含まれる「TT」をあらわし、恋におちた時の切ない想いが歌われている。

「TT」の形を手で表現する振り付けは日本の若者たちの間でも流行し、グループの知名度も一気に上がった。

BTS, ‘Spring Day’ (2017)

K-POPを代表する超人気グループといえばBTSであり、2020年のシングル「Dynamite」が全米シングルチャートでアジア圏のアーティストとしては坂本九「上を向いて歩こう」以来となる1位に輝いたことも記憶に新しい。

とはいえあの曲は新型コロナウィルス禍だった当時、ポジティブなエネルギーを世界中のリスナーに届けようと英語詞で歌われたポップでキャッチーなディスコポップであり、このグループの本質的な魅力のごく一部を反映しているにすぎない。

デビュー当時はよりヒップホップ色が濃く、攻撃的なキャラクターが特徴で、そこが若者たちの間で人気にもなったのだが、次第によりポップで深みのある楽曲を歌うようになっていき、より大衆的な人気を獲得するに至った。

大切な人の不在という多くの人々にとって共感しやすいテーマを扱い、心理的な機微を感じさせるのと同時に希望をもあたえる(タイトルには悲しくてつらい日々を冬という季節にたとえ、やがて春の日が訪れるという意味が込められている)ようなこの楽曲は特に評価が高く、グループのベストソングに挙げられることも少なくはない。

Red Velvet, ‘Red Flavor’ (2017)

SMエンタテインメントからデビューした女性グループで、同じ事務所の先輩にあたる少女時代の大衆性とf(x)の実験性の中間あたりをコンセプトとしている。

この曲はとにかくポップでキャッチーなサマーポップであり、各メンバーをフルーツのイメージでたとえたミュージックビデオも含め、超アップリフティングな感じがとても良い。

BLACKPINK, ‘DDU-DU DDU-DU’ (2018)

BTSと共にK-POPの国際的大ブレイクを象徴するようなイメージも強いBLACKPINKだが、ガールクラッシュというコンセプトを大衆的なトレンドとして定着させる上でも大きな役割を果たしたといえる。

グループ名は女性性のステレオタイプともいえるピンクとその逆のイメージもある黒とを組み合わせたもので、女性として周囲からのお仕着せではなく主体的な生を獲得しようというような主張が込められているように思える。

音楽性もそういったコンセプトにマッチしたものであり、中毒性の高いEDM的なサウンドにのせて力強いメッセージを込めた歌詞が歌われ、メンバーそれぞれの個性を生かしたパフォーマンスでも魅了する。

ITZY, ‘WANNABE’ (2020)

JYPエンターテインメントからデビューした5人組女性グループで、「イッチ」と発音するグループ名は英語の「IT」と韓国語で「いる・ある」などを意味する「イッタ」に由来している。

K-POPの歴史上はこのあたりから第4世代にあたる。デビュー曲「DALLA DALLA」などと共に代表曲の1つとして知られるこの楽曲は、1990年代にガールクラッシュならぬガールパワー旋風を巻き起こしたイギリスのスパイス・ガールズによるデビューシングルも想起させるのだが、まったく別の曲である。

ガールクラッシュの流れを汲むのだが、2NE1が「I AM THE BEST」と歌った頃からは少し変わってもきていて、「I wanna be me, me, me」と他の誰かと比べるのではなく、私らしくなりたいと歌っているところが特徴でもある。

Stray Kids, ‘God’s Menu’ (2020)

K-POP第4世代においてはガールズグループの活躍が注目されがちではあるのだが、男性グループの中で特に人気が高いのがスキズことStray Kidsである。

オーディション番組で選ばれたメンバーたちによって結成されたグループだが、作詞・作曲・プロデュースなどを自ら手がけているところも特徴である。

決められた枠にとらわれず、自分たちらしさを重視するコンセプトは楽曲やパフォーマンスの強度にもあらわれていて、それが人気にもつながっているように思える。

LE SSERAFIM, ‘ANTIFRAGILE’ (2022)

SOURCE MUSICに所属する韓国人、韓国系アメリカ人、日本人からなるガールズグループである。

グループ名は「I’M FEARLESS」つまり「私は大胆不敵だ」のアナグラムでセルフエンパワメント的な力強さと美しさとを兼ね備えているところがとても魅力的である。

メンバーそれぞれの経歴をも反映した歌詞やレゲトンなどからの影響も取り入れた中毒性の高いサウンド、力こぶをつくるような振り付けなども含めとても良い。

NewJeans, ‘Ditto’ (2022)

2021年にHYBEが設立したADORレーベルからデビューしたガールズグループで、SMエンタテインメントのクリエイティブディレクターとして、SHINee、EXO、f(x)、Red Velvetといった数多くのK-POPグループを手がけてきたミン・ヒジンがプロデュースした新しいグループとして注目をあつめる。

グループ名が世代を超えた老若男女に愛好されるファッションアイテムのジーンズにちなんでもいるように、懐かしさと新しさとを絶妙に取り入れた音楽性やナチュラルでオーガニック気味なイメージなどによって大いに支持され、すでにかなり人気があったK-POPというジャンルの裾野をさらに広げることに成功した。

ともすればコンセプト先行と批評されもしかねないところを、その楽曲のクオリティで凌駕しているところがまたすさまじく、特に「Ra-ta-ta-ta 高鳴る心臓」と淡い恋心について歌われるこの楽曲はフレッシュでありながらエバーグリーンポップとしてのポテンシャルをも秘めているように感じられる。