Negiccoの名曲ベスト30

Negiccoは新潟を拠点に活動するアイドルグループで、結成は2003年7月20日である。地元の名産であるやわ肌ねぎをPRする目的で期間限定ユニットとして結成されたはずなのだが、様々な事情によって継続することになったのだという。ローカルアイドルとして活動を続けながらも、ひじょうに不安定な状況ではあり、解散の危機とは隣り合わせだったようだ。2009年にGyaO!の「勝ち抜き!アイドル天国!!ヌキ天」でグランプリを獲得、2011年にはタワーレコードが立ち上げたアイドル専門レーベル、T-Palette Recordsに1組目のアーティストとして所属することになる。

その後、楽曲の良さから「渋谷系」的な音楽ファンから注目をあつめるようになると、グループそのものの紆余曲折のストーリーや各メンバーの人間味あふれるキャラクター、拠点である新潟の素晴らしさなどによってファンを増やし、独自のポジションを築いていくまでに至った。現在は3人のメンバー全員が既婚でありながらアイドルを継続し、ファンもそれを応援し続けるという、ひじょうにエポックメイキングなことになっている。今回はそんなNegiccoの楽曲から、特にこれは名曲なのではないかと思える30曲を選び、一気にカウントダウンしていきたい。

30. 裸足のRainbow (2015)

Negiccoの2作目のスタジオアルバム「Rice&Snow」の6曲目に収録された曲で、それほど派手ではないのだがシティ・ポップ的でとても良い曲である。Nao☆、Megu、Kaede、それぞれに特徴的なソロボーカルとハーモニーが共に楽しめる。「ゆるやかな時が流れてゆく」というフレーズがまさにふさわしく、誰かが忘れた帽子で雨やどりをしていた猫が顔を出すくだりもとても良い。作詞・作曲をNegiccoの活動初期から楽曲提供やプロデュースを行っているconnie、編曲を澤部渡のソロプロジェクト、スカートが手がけている。アルバムタイトルは地元である新潟を特徴づける米と雪をあらわしていると共に、松任谷由実「SURF&SNOW」へのオマージュにもなっている。

29. キミはドリーム (2018)

4作目のスタジオアルバム「MY COLOR」に2曲目に収録された曲である。素晴らしい大人ポップ・アルバム「ティー・フォー・スリー」を超えてたどり着いた新境地であり、疾走感と未来への希望が感じられるグッド・ミュージックだといえる。

28. SNSをぶっとばせ (2016)

アルバム「ティー・フォー・スリー」に収録されたロックンロールな楽曲で、別れた恋人の結婚をSNSで偶然に知ってしまった女性の絶妙に微妙な心理状態をテーマにしている。OKAMOTO’Sのご機嫌な演奏もとても良い。

27. 完全攻略 (2009)

Gyao!の番組「勝ち抜き!アイドル天国!!ヌキ天」でも披露したテクノポップ的な楽曲で、審査員のROLLYが「驚異的な情報量」と絶賛しいていたことでも知られる。T-Palette Recordsに所属したばかりの頃のイベントなどでもよくパフォーマンスされていて、地元でのキャリアからひじょうに営業慣れした煽りなども話題になっていたようだ。

26. ともだちがいない! (2017)

ベストアルバム「Negicco 2011~2017 -BEST-2」に新曲として収録されたうちの1曲で、Homecomingsのメンバーによって提供されている。Negiccoには珍しいインディー・ロック的な楽曲であり、夏休みを前にした教室の記憶が呼び覚まされたりもする。アニメーションのミュージック・ビデオも可愛くてとても良い。

25. 午前0時のシンパシー (2020)

シティ・ポップ的な楽曲をわりと早くからやっていて、「楽曲派」アイドルグループとしても知られがちだったNegiccoだが、シティ・ポップブーム真っ只中に一十三十一が提供したシングルをリリースということで、王道直球ど真ん中的なのがくるかと思いきや、このややプログレッシヴかつ夜のムードが感じられる曲で、やはり一筋縄ではいかないなということを再認識させられた。

24. おやすみ (2015)

シングル「ねぇバーディア」のカップリング曲で、これはシティ・ポップ的な大人のバラードという感じでかなり良い。アルバム「ティー・フォー・スリー」には別バージョンが収録されている。2016年に中野サンプラザで行われたライブでは、この曲の時に夜の新潟を映した映像が流れていてさらに良かった。

23. カナールの窓辺 (2016)

シングル「圧倒的なスタイル-NEGiBAND ver.-」のカップリング曲として発表され、後にアルバム「ティー・フォー・スリー」にも収録された。新潟の実在の場所を舞台としているらしい。過ぎていってしまった恋の記憶についてのビタースウィートな想いが歌われた、切なくも美しい曲である。レコーディング風景を収録したミュージック・ビデオがカッコいい。

22. クリームソーダLove (2015)

アルバム「Rice&Snow」に収録された、どこか懐かしさも感じられる片想いソングである。リーダーのNao☆が作詞を手がけている。「胸キュンキュンしたい」と歌われた後の「キュン」というコーラスが特に可愛くて良い。

21. 愛のタワー・オブ・ラヴ (2013)

T-Palette Records移籍第3弾シングルで、アルバム「Melody Palette」の1曲目にも収録されている。まだこの先がどうなるか分からない不安感のようなものが、歌詞やサウンドにあらわれているところがとても味わい深い。「ゲシュタルト崩壊」というワードが歌詞に入っていたり、その直後に「夢ってなんだろうかね?」と訛り気味に言われたりしているところも良い。シングルのジャケットにはいまはなき新潟のシンボル、レインボータワーが写っていた(新潟に行った時にもちろんできるだけ同じ構図で写真を撮影した)。

20. 1000%の片想い feat. Tomoko Ikeda (Shiggy Jr.) (2014)

まずはシングル「光のシュプール」のカップリング曲として発表されたのだが、Shiggy Jr.の池田智子をフィーチャーしたアルバム「Rice&Snow」収録のバージョンが特に良い。いわゆるモータウンビートが導入されたキャンパスポップな片想いソングなのだが、致死量レベルの切なさが装填されていて、ふと油断していると涙腺を直撃されかねない。

19. 江南宵唄 (2016)

アルバム「ティー・フォー・スリー」に収録されたかなり攻めた曲で、Spangle call Lilli lineによって提供されている。個人的には最も好きなNegiccoの曲なのだが、賛同を得られる気がまったくしていないので、取り敢えずこの辺りに忍び込ませておきたい。「本当の事 教えて」「愛をつぶやいた 『それはすべて』よ」という本質的なフレーズが相応しい大人のラヴソングだが、言葉合わせ的な歌詞もひじょうに多く、そこがまたとても良い。

18. Falling Stars (2006)

Negiccoは全国的にわりと売れてからもずっと新潟の祭り「古町どんどん」のフリーライブに出演していたりもしたのだが、そのステージでは必ず歌われていたといわれる古町のご当地ソングである。「Falling Stars」で「星の降る街」、それが「古町」にかかっている。この曲を聴くとやはり古町商店街のステージを見ながらNegiライトを片手にケチャしたい欲望にかられるというものである。

17. 二人の遊戯 (2015)

アルバム「Rice&Snow」収録のシティ・ポップ的なとてもカッコいい曲である。個人的にNegiccoを本格的に好きになったのは、この曲の福岡でのライブ映像を見て、そのマイルドな色香のようなものに良さを感じてからである。アイドルポップスなのに普通に踊れる、というか中野サンプラザの上の方で泣きそうになりながら踊りまくっていた。

16. 土曜の夜は (2016)

アルバム「ティー・フォー・スリー」の少し前に7インチ・シングルだけでもリリースされていたのだが、ナイアガラレーベルのロゴのようなものがジャケットに印刷されていて、よく見ると「Niagara」ではなく「Niigata」であった。シュガー・ベイブ、山下達郎オマージュが半端なく良すぎる曲であり、東京でも新潟でも生でパフォーマンスを体験してどちらもとても良かった。

15. 愛、かましたいの (2016)

アルバム「ティー・フォー・スリー」が個人的にはちょっと完璧すぎて、ここから一体どうするのだろうと思っていた時にリリースされたのがこのシングルで、堂島孝平の作詞・作曲によるオリエンタルな謎ポップスとでもいうべき素晴らしいラヴソングである。曲そのものがとても良いのだが、かえぽことKaedeの「ちょっとじゃなくてずっとがいいんだ、本当は!」で撃沈するのは致し方ないといえる。

14. あなたとPop With You! (2012)

夏のはじまりの高揚感のようなものをヴィヴィッドに歌った最高のサマーポップで、シングルでリリースされた後、アルバム「Melody Palette」に収録された。個人的に初めて行ったNegiccoの現場ことサンストリート亀戸のイベントのリハーサルで歌われていて、ゆえに初めて生で聴いたNegiccoの曲ということになっていたのだが、実は当時ライブではあまりやっていなくて悲しい気分になっていたところ、2017年のZepp Tokyoのアンコール最後の最後、もう無いだろうと思っていた時にこの曲のイントロが流れた瞬間の感激は、おそらくこの先、更新されることがないのではないかと思われる。「アバンチュール」ではなく「アーバンチュール」な夏であり、「ヨーン・マルニ」は新潟の湾岸を走る国道402(よんまるに)号のことを指している。

13. RELISH (2016)

「こんな未来が君を待ってたなんて素敵だと思わない?」、いやなんて素敵なフレーズなのだろう。アルバム「ティー・フォー・スリー」はNegiccoと同年代である大人の女性をターゲットにしているともいわれ、女性アイドルとしてそれはどうなのだろうという意見もあったような気がする。しかし、実際には女性ファンがひじょうに増えたような印象はあるのだ。「ティー・フォー・スリー」の発売は2016年の5月の終わり近くだったのだが、ちょうどその頃の気分に相応しいただただグッド・ミュージックである。

12. カリプソ娘に花束を (2018)

YOUR SONG IS GOODが提供したタイトルがあらわしているように、ラテンなフレイヴァも感じられる音楽的にまたしても新機軸という感じではあったのだが、アイドルでありながら父への結婚報告をテーマにしているところが(前人未到の境地というような意味での)破天荒だなとも感じていた。いや、この曲自体が素晴らしいのだが、これがいずれNao☆の結婚およびその後もアイドルとしての活動を継続、しかもファンが祝福ムードというアイドルとしては本当に破天荒な展開に向けての伏線だったようにも思え、さらに味わい深いことになっている。

11. I LOVE YOUR LOVE (2019)

NONA REEVESの西寺郷太が提供した最高のディスコ・ポップであり、「君の瞳に恋してる」はボーイズ・タウン・ギャングよりも先にフランキー・ヴァリが歌っていたことを思い出すことができる。それはまあ良いのだが、「君の代わりはどこにもいない」というきわめて本質的なメッセージの中に、このグループとファンとが築き上げてきた関係性の意味の濃さと、それでもポップソングとしての純粋な強度が満ち溢れていて感動的ですらある。

10. 愛は光 (2017)

ベスト・アルバム「Negicco 2011~2017-BEST-2」に収録された新曲のうちの1つで、KIRINJIの堀込高樹の提供曲である。神々しいまでに感動的なバラードであり、表現者としての覚悟のようなものにまで言及されているように思える。この年の結成記念日に品川で行われた「ネギのカラオケ」なるイベントで、この曲をアカペラで聴くことができたのはとても良い思い出である。

9. 光のシュプール (2014)

2014年の冬にシングルとして発売され、後にアルバム「Rice&Snow」にも収録された曲で、オリコン週間シングルランキングで最高5位と、初のトップ10入りを果たした。作詞はconnie、編曲をOriginal Loveの田島貴男が手がけている。フィンランドで撮影されたミュージック・ビデオもとても良い。恋のはじまりのときめきではなく、ある程度の期間、付き合っているであろうカップルをテーマにした内容も大人のアイドルグループという感じでかなり良い。

8. ときめきのヘッドライナー (2013)

アルバム「Rice&Snow」からの先行シングルで、NONA REEVESの西寺郷太による提供曲である。テーマは「本命になりたい」ということで、プライベートな恋愛とアイドルグループとしてのフェスでのヘッドライナーというダブルミーニングが導入されている。ミュージックビデオは当時はおそらく夢のまた夢であったと思われる野外大型会場でのライブを疑似で演じているが、やがてそれは現実のものとなる。

7. 圧倒的なスタイル (2008)

初期の代表曲でもちろんとても良いのだが、パフォーマンスの途中で客席でラインダンスが発生してしまうという、かなり特殊な側面もある。これが初心者にもかなり優しいし、一度やってみるとものすごく楽しい。アイドル現場といえばライブやイベントの最前列をめぐって血なまぐさい抗争が展開されているイメージだったのだが、Negiccoにおいては古参が新規に積極的に譲っていたりもして、一体これは何なのだと驚かされたりもしたものである。

6. 矛盾、はじめました。 (2016)

Negiccoという素晴らしいグループの音楽を遅ればせながら初めて知ってから最初の新曲ということで個人的にもわりと思い入れがあるのだが、いろいろな人たちに布教する中で、女性の音楽ファンにはすこぶる評判が良かった曲でもある。Nao☆、Kaedeがインフルエンザで倒れ、Meguが孤軍奮闘的にイベントを回っていたのだが、こんなにもドラマ性があればそれは好きになるだろうよ、などと感じてはいた。新潟の市街地をはじめて訪れた時、古町でこの曲のミュージックビデオが流されていて、軽く感動したことが思い出される。

5. サンシャイン日本海 (2014)

Original Loveの田島貴男がアイドルに初めて提供した曲らしい。サマーポップではあるのだが、アズテック・カメラ的な要素が感じられなくもなく、そこが新潟らしいのかどうかはよく分からないのだが、とても良い感じになっている。ミュージック・ビデオには新潟のいろいろな場所が登場するのだが、個人的に情報をあつめたりしながらここに映っている場所のいくつかを訪ねたのはとても楽しかった。オリコン週間シングルでの最高位は11位だったのだが、これを何とかトップ10入りさせようと熱心なファンの人たちがいろいろやっている間、Negiccoは佐渡で営業だったらしい。

4. さよならMusic (2013)

シングル「ときめきのヘッドライナー」のカップリング曲として発表されたのだが、ファンの間でひじょうに人気が高く、ライブでは定番曲で、ベストアルバムにも収録された。英語のように聴こえるのだが、歌詞を見ると実は日本語だったという歌詞がわりとあるのだが、それにしても「Oh! 新潟 超いいな アイドルとかだな」とは、一体何なのだろうか。いや、分かるけれども。また、「嬉しすぎて最高 だから余計に終わりを考えてしまう」というフレーズは、この曲がライブのわりと終盤で歌われがちなこともあり、いくつかの解釈をすることができる。

3. アイドルばかり聴かないで (2013)

この曲をNegiccoに書き下ろした小西康陽が「アイドルに曲を書くのが夢だった高校・大学時代の自分に聴かせてやりたいくらいの、”私の中の筒美京平”が暴発したような作品です」と自負するタイプの楽曲で、シングルでリリースされた後にアルバム「Melody Palette」にも収録された。当時、社会現象的に盛り上がっていて議論の的にもなりがちであった、いわゆるAKB商法ことCDに握手券などを封入して販売する手法が取り上げられた、メタアイドルポップス的な側面も持つ。「どんなに握手をしたって あの娘とはデートとか出来ないのよ 残念」というフレーズの身も蓋もなさはかなりのものである。

2. トリプル! WONDERLAND (2014)

シングルでリリースされた後にアルバム「Rise&Snow」にも収録された矢野博康による提供曲で、ライブでも定番曲としてひじょうに盛り上がる。「軌跡を起こすよ この街から キミのハートへ」というフレーズにもあらわれているように、新潟から世界へ的な気合いが感じられもするとても良い曲である。新潟から上京するのではなく、あくまで新潟を拠点に活動し、むしろ全国から新潟にファンをあつめてしまうというところが特徴的であり、様々な存続の危機も乗り超えることができた秘訣だともいえる。

1. ねぇバーディア (2015)

この年、念願の日比谷野外音楽堂でのワンマンライブを前にリリースされたレキシ提供のシングル曲で、それまでのファンとグループとの関係性が個人的なラヴソングとのダブルミーニングで歌われている。メンバー3人それぞれが各々の交通手段を用いて新潟から東京に向かい、日比谷野外音楽堂の手前で合流するミュージック・ビデオもとても良い。

番外編:にいがた★JIMAN!/Negicco feat. 小林幸子 (2015)

Negiccoを好きになることは新潟を好きになることでもあるわけだが、この小西康陽プロデュースによるPRソングでは、新潟にはとても良いところがたくさんあるのに自慢しないのはもったいない、ということをコンセプトに、様々な名所や名物について歌われている。ミュージック・ビデオには活動初期からの楽曲提供者でプロデューサーのconnieや事務所社長でマネージャーのクマさんこと熊倉維仁氏がカメオ出演していたり、同じく新潟出身の小林幸子がラスボス的に登場したりしてとても楽しい。