コールドプレイのベストソング10選(10 Best Coldplay Songs)

コールドプレイはイギリスのロンドンで結成されたロックバンドで、2000年の夏にリリースしたシングル「イエロー」が全英シングルチャートで最高4位のヒットとなり、ブレイクを果たした。以降、クリス・マーティンの叙情性溢れるボーカルや美しいメロディーなどが支持されて、本国のイギリスのみならず、アメリカにおいても好セールスと高い評価を得るようになっていき、イギリスのブリットアワードやアメリカのグラミー賞を何度も受賞するようになる。

デビュー当時はインディーロック的な音楽性だったのだが、キャリアと共に様々なジャンルからの影響を取り入れていき、ライブパフォーマンスにも定評がある。21世紀において最も大衆的な支持を得たロックバンドの1つであることには間違いないのだが、一方でスノビッシュな音楽リスナーや批評家からはそれほど評価されていなかったりもする。

つまり、ある時期以降はその存在があまりにもメジャーになりすぎたこともあり、好きでいることがそれほどクールではないと見なされがちなバンドの1つとなった。とはいえ、何度目かのヘッドライナーとなる2024年のグラストンベリーフェスティバルにおけるパフォーマンスなどは圧倒的であり、今日のロックバンドとしては稀有な存在でありながら最新型のポップミュージックを追求し続けていることが確認できたりもする。

そして、成功した状態のままキャリアを積み重ねてきたバンドは、すでにその終わりをも見据えて活動をしている。今回はそんなコールドプレイの楽曲の中から特に重要なのではないかと思える10曲を厳選し、リリース順に並べていくと共に簡単な説明を加えていきたい。

‘Yellow’ (‘Parachutes’, 2000)

コールドプレイは2枚目のシングル「イエロー」のヒットによって多くの人々に知られるようになったのだが、その前の「シヴァー」の時点ですでにインディーロックのリスナーには注目されていて、前衛シングルチャートでも最高35位までは上がっていた。

当時のロックミュージックのトレンドとしてはラップメタルなどと呼ばれるようなものがひじょうに流行っっていて、メロディアスなインディーロックはほとんど盛り上がっていなかったため、コールドプレイの存在はこういった音楽を好んで聴くタイプのリスナーにとっては救世主のようにも感じられた。

「シヴァー」のレコーディングを終えたコールドプレイのメンバーは休憩のためスタジオの外に出たのだが、夜で星がきれいだったことに共同プロデューサーのケン・ネルソンは気が付き、メンバーにぜひ見てみるように言った。

そのときの体験にインスパイアされて、クリス・マーティンは「イエロー」のメロディーを思いついたのだが、当初はニール・ヤングの物真似のようにふざけて歌っていたのだという。しかし、次第になんだかとても良い曲に仕上がりそうになってきたので、ちゃんと完成させることにしたのであった。

歌詞では誰かのために曲を書いたり海を泳いで渡ったりというような献身的な心が歌われていて、それが人気を得ることになった要因の1つでもあるような気がするのだが、締めの単語がうまく思いつかず、スタジオを見回すと電話帳のイエローページがあったので、そこから「イエロー」という単語を取った。

よって、このタイトルにそれほど深い意味はなく、歌詞においても後から書き直す可能性もあったのだが、どうもそれ以外には思いつかなくなってしまい、結果的にそのまま「イエロー」になったのだという。

ミュージックビデオは晴れた日のビーチを歩くメンバーを撮影したものになる予定だったのだが、撮影日にドラマーであるウィル・チャンピオンの母の葬儀が執り行われることになってしまったため、クリス・マーティンが単独で出演することになった。

しかも、天候も雨だったため、当初の予定とはかなり異なるものになったのだった。映像にスローモーション的な効果を出すため、通常よりも速めに動いている姿を撮影することになり、クリス・マーティンは「イエロー」の歌詞とメロディーを実際よりもハイスピードでリップシンクした。

全英シングルチャートで最高4位、全米シングルチャートでは最高48位だったが、ビルボードのアダルトオルタナティブチャートで最高2位だったのをはじめ、いくつかのチャートで上位にランクインした。

この曲のヒットもあってデビューアルバム「パラシューツ」は全英アルバムチャートで1位に輝き、続いてシングルカットされた「トラブル」も全英シングルチャートで最高10位を記録した。

イギリスの音楽週刊誌「NME」はこの年の年間ベストシングルで「イエロー」をエミネム「ザ・リアル・スリム・シェイディ」に次ぐ2位に選んだが、読者の投票によって決まるNMEアワーズでは「イエロー」が最優秀シングルに選ばれた。また、最優秀新人賞と最優秀BBCラジオ1イブニングセッション賞もコールドプレイが受賞している。

‘The Scientist’ (‘A Rush of Blood to the Head’, 2002)

コールドプレイの2作目のアルバム「静寂の世界」からはまず「イン・マイ・プレイス」がシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高2位を記録したのだが、続いてシングルカットされたこの「サイエンティスト」も全英シングルチャートで最高10位と、連続してトップ10入りを果たした。

デビューアルバム「パラシューツ」が「NME」の年間ベストアルバムで6位に選ばれた年、1位はクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ「R指定」だったのだが、その2年後にあたる2002年、それぞれの次のアルバム、コールドプレイ「静寂の世界」とクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ「ソングス・フォー・ザ・デフ」はいずれも8月の最終週にリリースされ、「NME」の年間ベストアルバムでは「静寂の世界」が1位、「ソングス・フォー・ザ・デフ」が6位であった。

「サイエンティスト」はピアノが印象的なバラードで、パートナーとの関係性についての反省や謝意、やり直したいという意志などについて歌われているようである。

「静寂の世界」のライナーノーツには「サイエンティストはダン」と書かれているのだが、これはコールドプレイをレーベルと契約させたパーロフォンのA&R、ダン・キーリングのことである。

仕事に没頭するあまりパートナーの存在を蔑ろにしてしまっていたサイエンティスト、つまり科学者の告白のようにも聴こえる。

ミュージックビデオでは登場人物の動きがすべて逆再生されているのだが、クリス・マーティンの口は歌詞の通りに動いている。つまり、撮影時には逆さにリップシンクしたことになるのだが、それを覚えるのに相当な期間を要したという。

このミュージックビデオはMTVビデオミュージックアワードにおいて、最優秀グループビデオ賞、最優秀ブレイクするービデオ賞など、複数の賞を受賞することになった。

「静寂の世界」を制作していたとき、まだ何かが欠けていると感じていたクリス・マーティンはリヴァプールの暗い部屋で古くて調律に問題があるピアノを見つけた。それで、ジョージ・ハリスンの1970年のアルバム「オール・シングス・マスト・パス」に収録された「イズント・イット・ア・ピティー」を弾こうとするのだがうまくいかず、代わりにこの曲ができたのだという。

ウィリー・ネルソンやコリーヌ・ベイリー・レイ、テレビドラマシリーズ「glee/グリー」のキャストによるものなど、多くのカバーバージョンが存在している。

‘Clocks’ (‘A Rush of Blood to the Head’, 2002)

「静寂の世界」は全英アルバムチャートでデビューアルバムの「パラシューツ」に続いて1位を記録する大ヒットとなった。そして、アメリカにおいて「パラシューツ」の全米アルバムチャートにおける最高位は51位だったのだが、「静寂の世界」では最高5位と初のトップ10入りを果たしている。

セールス的にはそんな感じなのだが、グラミー賞では「パラシューツ」がすでに最優秀オルタナティブアルバム賞を受賞していて、さらに「静寂の世界」でも連続して受賞することになった。

「クロックス」はイギリスで「静寂の世界」からの3曲目のシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高9位を記録したのだが、アメリカでは「サイエンティスト」ではなく「クロックス」がアルバムから2曲目のシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高29位を記録した。

そして、グラミー賞ではビヨンセ「クレイジー・イン・ラヴ」、アウトキャスト「ヘイ・ヤ!」といったポップミュージック史に残る名曲を抑えて、最優秀レコード賞を受賞した。

実は「静寂の世界」がほぼほぼ完成してしまっていて、すでに次のアルバムに向けての曲づくりなどを行っていたときにできた曲なのだが、歌詞の内容が時間の重要性をテーマにしているようなところもあり、それならば急いで完成させて「静寂の世界」に収録するべきなのではないかという感じになっていったという経緯があるようである。

印象的なピアノのリフレインは様々な楽曲でサンプリングされたりもしているのだが、クリス・マーティンはイギリスのロックバンド、ミューズの音楽にインスパイアされたことなどを認めていたりはする。

ミュージックビデオではクリス・マーティンが現在は閉鎖されている「maketradefair.com」をプロモートしているようなところもあり、これは国と企業との貿易の公平性を訴える活動の一環である。このように社会問題にも積極的にコミットしているところなどが、コールドプレイがロックバンドであるにもかかわらずこのご時世に一般大衆的には現役感を保持し続けられている要因の1つなのではないかと感じたりもする。

‘Fix You’ (‘X&Y’, 2005)

コールドプレイの3作目のスタジオアルバム「X&Y」は全英アルバム・チャートでは当然のように3作連続での1位に輝いたのだが、アメリカにおいてもついに初の全米アルバムチャート1位を記録するに至った。それだけではなく、世界約32カ国のアルバムチャートで1位を記録するというなかなかのスケール感であった。

音楽的には前作までの延長線上というわけでもなく、クリス・マーティン節のようなものはそのままに、サウンド面ではエレクトロニカのマイルドな導入などが特徴的である。特にクラフトワーク「コンピューター・ラヴ」を引用し、シングルカットもされた「トーク」などにそれは顕著である。

アルバムから最初のシングルとしてリリースされたのは「スピード・オブ・サウンド」で、全英シングルチャートで最高2位、全米シングルチャートで最高8位を記録した。この楽曲にもサウンド面で新しさが感じられ、「X&Y」からのリードシングルにはまったくもってふさわしい印象であった。

そして、次のシングルとしてカットされたのがこの「フィックス・ユー」であり、全英シングルチャートで最高4位とヒットはしたのだが、あくまで従来からの路線というのか、安全で新鮮味に欠けると感じていたリスナーも少なくはないように思われる。

しかし、時を経てこの曲はもしかするとコールドプレイの最高傑作なのではないか、というような声も上がるほどに評価が高まっている。

女優のグウィネス・パルトロウがクリス・マーティンと出会ったもは、父が亡くなってから数週間後のことだったのだが、深い悲しみを乗り越えるためコールドプレイのアルバム「パラシューツ」に収録された「エヴリシングズ・ノット・ロスト」を聴いたりするようになっていった。

クリス・マーティンは悲しみで痛めつけられてしまったグウィネス・パルトロウの魂をより本格的に修復したいという思いから「フィックス・ユー」を書き上げた。世の中に深い悲しみを抱えた人たちというのは大勢いるわけであり、そういった人たちにとっての慰めや救いになるポテンシャルをこの曲は秘めている。それはおそらくきわめて個人的で切実な動機に基づいているからでもあるような気がする。

グウィネス・パルトロウの父が亡くなる直前に買ったという大きなキーボードがあり、それに初めて電源を入れたとき、とてつもなく良い音が聴こえてきて、「フィックス・ユー」はそれにインスパイアされてもいるのだという。

‘Viva la Vida’ (‘Viva la Vida or Death and All His Friends’, 2008)

コールドプレイの4作目のアルバム「美しい生命」に先がけて発表された楽曲の1つで、全英シングルチャートと全米シングルチャートにおいて同じ週に1位を記録したのだが、これは1971年のロッド・スチュワート「マギー・メイ」以来の記録であった。

「パラシューツ」「静寂の世界」「X&Y」はコールドプレイにとって初期の3部作と位置づけることができ、「美しい生命」から新章がはじまったというように捉えられがちである。デビューアルバムからのケン・ネルソンに代わって、プロデューサーにはブライアン・イーノが迎え入れられ、音楽性もよりオーケストラルポップ的なものに大きく変化している。

歌詞はかつて世界を支配していた者の立場から書かれた壮大なスケールが特徴的であり、弦楽器を効果的に用いた荘厳でありながらポップ感覚も持ち合わせたサウンドとマッチしている。

サッカーやラグビーなど様々なスポーツにおいて、セレブレーションソングとして使われるケースもわりと多いのだが、日本ではプロ野球の北海道日本ファイターズがホームグラウンドのエスコンフィールドHOKKAIDOで勝利した場合、試合後に当日のヒーローに選ばれた選手がグラウンドをゆっくりと一周する際のBGMとしても知られている。

‘Paradise’ (‘Mylo Xyloto’, 2011)

‘A Sky Full of Stars’ (‘Ghost Stories’, 2014)

‘Adventure of a Lifetime’ (‘A Head Full of Dreams’, 2015)

‘feelslikeimfallinlove’ (‘Moon Music’, 2024)

‘WE PRAY’ (‘Moon Music’, 2024)