邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1978, Part.2

かもめはかもめ/研ナオコ(1978)

研ナオコの16枚目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高7位、「第18回日本レコード大賞」では金賞を受賞した。アルバム「かもめのように」からのシングルカット曲で、中島みゆきが研ナオコに提供したシングル曲としては、「LA-LA-LA」「あばよ」に続き3曲目であった。

当時の研ナオコといえば、キンチョールのテレビCMやバラエティー番組「カックラキン大放送」などでのコメディエンヌ的な印象が強かったが、レコードでは一転してうまくいかない恋愛にまつわる悲しみをアンニュイに歌っていたりして、そのギャップがとても良かった。

特に「あきらめました あなたのことは もう電話もかけない」とはじまるこの楽曲は、約半年間の謹慎後、最初のシングルということもあり、心に沁み入るものがあった。中島みゆき作品としては桜田淳子「しあわせ芝居」、中島みゆき「悪女」と同様に、電話が小道具として効果的に用いられている。

闘牛士/ Char(1978)

Charの4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高19位を記録した。

イントロで聴くことができるギターのカッティングがすでにかなりカッコいいのだが、歌いだしの歌詞が「薔薇を投げるなら明日にしてくれよ」と思いきり気障なものになっている。作詞は阿久悠で、男のやせ我慢的なものがテーマになっていたりもする。

世良公則、原田真二と共に「ロック御三家」的な見られ方をするなど、人気もあったのだが、こういった歌謡ロック的な路線はこのシングルが最後となり、以降はジョニー、ルイス&チャー(後にピンク・クラウドと改名)を結成し、よりロック的な音楽を追求したり、通信販売専門のレーベルである江戸屋レコードを立ち上げて話題になったりもする。

狼なんか怖くない/石野真子(1978)

石野真子のデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高17位を記録した。

ニューミュージック全盛の当時、歌謡ポップス界ではビッグスターたちが健在であり、新人アイドルなどにとってはブレイクがなかなか難しい状況であった。そんな中、石野真子はかなり健闘していた印象がある。

このデビューシングルは吉田拓郎が曲を提供し、歌詞は阿久悠によるものなのだが、ピンク・レディー「S・O・S」で「男は狼なのよ 気をつけなさい」とされていたが、この曲においては「あなたが狼なら怖くない」と歌われている。いずれにしても、男は狼で怖いものであるという事実が前提になっていることには変わりがない。

指で狼のかたちをつくったりする振り付けもとても良かった。デビュー当時にはあまり洗練されていないような気もしたのだが、テレビに出演する度にみるみる垢抜けていった印象がある。

飛んでイスタンブール/庄野真代(1978)

庄野真代の5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。

筒美京平が野口五郎に提供するつもりでつくった曲だったが、女性シンガーが歌った方が良いのではないかという気がして寝かせておいた末に、庄野真代が歌うことになったようだ。

ちあき哲也による歌詞はタイトルにもなっているトルコの地名、イスタンブールをはじめ、異国情緒が感じられるもので、船山基紀のアレンジもどこかエキゾチックに感じられるものであった。

この曲のヒットで庄野真代は「NHK紅白歌合戦」にも出場するのだが、後に初めてイスタンブールを実際に訪れてみたところ、この曲のイメージとまったく違っていて驚いたとのことである。

タイム・トラベル/原田真二(1978)

原田真二の4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。

「てぃーんずぶるーす」「キャンディ」「シャドー・ボクサー」のシングル3ヶ月連続リリーズやデビューアルバム「Feel Happy」の大ヒット(オリコン週間アルバムランキングで1位)を経て発表された最初のシングルで、時間旅行をテーマにしたスケールの大きさが感じられる楽曲である。

松本隆が提供した歌詞には世界各国の様々な地名が登場するのだが、最後には「ここは東京 君の手の中」と落ち着くのであった。そして、エンディングに向けて「時間旅行のツアーはいかが?」というフレーズが何度も繰り返される。

2011年のテレビドラマ「僕とスターの99日」の主題歌にもなった、スピッツによるカバーバージョンもとても良い。近年では2023年のテレビドラマ「パリピ孔明」において、上白石萌歌がカバーしていた。

かもめが翔んだ日/渡辺真知子(1978)

渡辺真知子の2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高5位、「第20回日本レコード大賞」ではこの曲で最優秀新人賞に輝いた。

デビューシングル「迷い道」は渡辺真知子の作詞・作曲だったが、この曲は作詞だけ伊藤アキラであった。しかし、渡辺真知子はプロの作家がつくった曲を歌うのも夢だったということで、これがとてもうれしかったようだ。

歌いだしの「ハーバーライトが朝日に変る」からしてとてもインパクトがあるのだが、この部分は何かが足りないと後で付け足されたものだという。海の印象がひじょうに強い楽曲であり、渡辺真知子は出身地である横須賀をイメージして歌うことが多いという。失恋ソングのはずではあるのだが、聴いていてアップリフティングな気分にもなれる、何だか不思議な魅力を持った楽曲である。

2007年にはプロ野球、千葉ロッテマリーンズの本拠地である千葉マリンスタジアムでこの曲が流されるようになり、新たにレコーディングされたスタジアム・バージョンがリリースされたりもした。

プレイバックPart2/山口百恵(1978)

山口百恵の22枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位、「第20回日本レコード大賞」では金賞を受賞した。

名曲があまりにも多すぎて、代表曲がどれかということになると、なかなか1曲には絞り切れないのだが、この曲が有力候補の1つであることには間違いがないだろう。

阿木燿子・宇崎竜童コンビが提供した楽曲の中でも、自立した女性を描いた代表的なものであり、業界用語のようなものであったプレイバック(巻き戻しのようなことである)をタイトルや歌詞に入れるのみならず、仕掛けとして用いたり、前年に大ヒットした沢田研二「勝手にしやがれ」の楽曲そのもののみならず、阿久悠が提供する歌詞が描きがちな男性本位の美学そのものを疑問視するようなところも素晴らしい。

曲は馬飼野康二と宇崎竜童にそれぞれ依頼され、宇崎竜童の方が採用されたのだが、馬飼野康二が提供した方は「プレイバックPart1」として、ベストアルバム「THE BEST プレイバック」に収録された。それでプロデューサーからやり直しがギリギリまで入り、「馬鹿にしないでよ」という有名なフレーズは、その状況にブチ切れた阿木燿子の当時の心境を反映したものだという。

それでも最後は男性のところに帰ることを選び、「あなたのもとへ Play back」というオチが付いている。

女はそれを我慢できない/アン・ルイス(1978)

アン・ルイスの14枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高12位を記録した。作詞・作曲は、元ザ・ワイルド・ワンズだったことなどでも知られる加瀬邦彦である。

タイトルは1956年のアメリカ映画に由来していると思われるが、「春には春の恋がある そろそろおまえとお別れだ」「もたもたするなよ おまえの涙はもうあきた」などと、女性から恋人の男性を振る内容となっている。

アン・ルイスのロック的な路線が成功した楽曲でもあり、後の「ラ・セゾン」「六本木純情」などにも繋がっていく。

リップスティック/桜田淳子(1978)

桜田淳子の23枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高10位を記録した。

中島みゆきが提供した「しあわせ芝居」「追いかけてヨコハマ」を経て、軽快なポップスに回帰したような楽曲で、作詞を松本隆、作曲・編曲を筒美京平が手がけている。

なんとなくセンチメンタルなイントロと歌いだしでありながら、ディスコ歌謡的なリズムにのりはじめてからはもう最高であり、「はっとするほど 今夜 私 憂いがあります」などというフレーズが似合うほど大人の魅力を身に着けた桜田淳子のボーカルも素晴らしい。

林檎殺人事件/郷ひろみ(1978)

郷ひろみの27枚目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高6位、「ザ・ベストテン」では4週連続1位、年間10位を記録した。出演していたテレビドラマ「ムー一族」の挿入歌で、共演者である樹木希林とのデュエット曲である。

全体的にアップテンポでコミカルな印象がありながら、「アア 哀しいね 哀しいね」と歌われるところに込められた切なさがかなりのものである。殺人事件をタイトルにして、歌詞には警察官や探偵なども登場するのだが、事件の内容については具体的にはよく分からないままである。

そして、ノリが良いのだが意味がよく分からない「フニフニフニフニフニフニ」というフレーズ、歌詞はドラマのプロデューサー、久世光彦に依頼されて阿久悠が書いたものだが、コンセプトはすでに決められていて、郷ひろみと樹木希林のコンビが一般的な男女カップルとは異なり、両性具有的な2つとないものであることから、「不二」を意味しているということである。