邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1975, Part.2

DOWN TOWN/シュガー・ベイブ(1975)

シュガー・ベイブのデビューアルバム「SONGS」の収録曲でシングルカットもされたが、当時はオリコン週間シングルランキングにランクインしなかった。

元々はザ・キングトーンズに提供するつもりで山下達郎と伊藤銀次がつくった楽曲のうちの1つだったが、その話自体がなくなり、結局、シュガー・ベイブでやることになった。

1980年にEPOがデビューシングルとしてカバーバージョンをリリースし、大きなヒットになったわけではないのだが、ラジオなどではわりとよくかかっていて、翌年にはフジテレビのバラエティー番組「オレたちひょうきん族」のエンディングテーマに起用される。

山下達郎は1980年に「RIDE ON TIME」が本人が出演したマクセルカセットテープのテレビCMの影響もあってヒットし、シティポップ的な音楽をお茶の間にも浸透させるのと同時に、自身も一般大衆レベルでのブレイクを果たした。

「オレたちひょうきん族」にはビートたけし、明石家さんま、島田紳助などをはじめ、当時のお笑い界の人気タレントたちが多数出演し、ひじょうに人気があった。それで、エンディングテーマに使われていたEPO「DOWN TOWN」も広く聴かれるようになるのだが、それが実は山下達郎がかつてやっていたシュガー・ベイブのカバーらしい、というような感じで、少なくとも当時の地方都市の公立中学校などでは広まっていったような気がする。

土曜日の夜の街に繰り出すわくわく感のようなものがとても良い感じに表現された名曲なのだが、シティポップ的な楽曲でありながら、当時の日本のポピュラー音楽界におけるメインストリームに対してはオルタナティブであったようにも思え、山下達郎のボーカルにはロック的なスピリッツも感じる。それが凡百のシティポップ楽曲とは、一線を画しているところかもしれない。

裏切りの街角/甲斐バンド(1975)

甲斐バンドの2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高7位のヒットを記録した。

「九州最後のスーパー・スター」というキャッチフレーズでデビューして、これが最初のヒット曲となった。ラジオでもよくかかっていたのだが、当時の日本のヒット曲としては、とても異質なテイストを感じさせ、後にそれはザ・キンクス的ともいえるブリティッシュロックからの影響だったと知ることになるのだが、そこに絶妙な割合で日本独自の歌謡ポップス的なフィーリングも含まれているところがとても良い。

卒業写真/荒井由実(1975)

荒井由実がハイ・ファイ・セットに提供した楽曲を、アルバム「COBALT HOUR」において自らカバーしたバージョンである。

「あなたは私の青春そのもの」と、卒業にまつわる切なさが全開で、そこが広く共感を得たのだが、そこに湿っぽさのようなものはそれほど感じられず、あくまで都会的で洗練されているのが特徴である。ユーミンこと荒井由実の時代が、いよいよ本格的に到来しようとしていた。

ロマンス/岩崎宏美(1975)

岩崎宏美の2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位、「第17回日本レコード大賞」をはじめいくつかの音楽賞で新人賞を受賞したが、この年、最優秀新人賞は「心のこり」でデビューした細川たかしが受賞しがちであった。

それはそうとして、岩崎宏美は歌唱力が高い上に楽曲もとても良く、作詞が阿久悠で作曲・編曲が筒美京平のこの曲などはその分かりやすい例といえるかもしれない。「楽曲派アイドル」なる概念がもしも当時あったのだとすれば、岩崎宏美はおそらくそれだったと思われる。

「いちご白書」をもう一度/バンバン(1975)

バンバンの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝く大ヒットを記録した。

作詞・作曲は荒井由実で、この楽曲提供は中心メンバーであったばんばひろふみの強い要望によって実現したものである。学生運動にも参加したりしていた青春時代との訣別であり、無垢の終わりをテーマにしたタイプの楽曲だが、就職が決まって髪を短く切り、「もう若くないさ」と言い訳をするくだりなどが特に印象的である。

タイトルにも入っている「いちご白書」はアメリカ映画のタイトルで、いわゆるアメリカンニューシネマの1つとして知られているが、本国では興行的にそれほど盛り上がらなかったという認識のようである。

時の過ぎゆくままに/沢田研二(1975)

沢田研二の14枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで5週連続1位、「第6回日本歌謡大賞」で放送音楽賞を受賞するなどした。自身が主演したテレビドラマ「悪魔のようなあいつ」の挿入歌でもある。作詞を阿久悠、作曲・編曲を大野克夫が手がけている。

「堕ちていくのもしあわせだよと」という歌詞は変えるように事務所から要請があったようだが、そのまま使われて正解である。三億円事件の犯人で男娼というテレビドラマで沢田研二が演じた役柄に合っているのはもちろん、国民的スターでありながらどこかダーティーな魅力も感じさせる沢田研二のイメージにもマッチしていたような気もする。

あの日にかえりたい/荒井由実(1975)

荒井由実の6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。テレビドラマ「家族の秘密」の主題歌としても使われていた。

ユーミンこと荒井由実の時代がいよいよ本格的に到来したであろうことを、確実に認識させた大ヒット曲である。「青春の後ろ姿を 人はまた忘れてしまう」というわけで、またしても青春時代を懐かしく思い返すタイプの楽曲で、サウンドもシティポップ的でとても良い。

1980年にカメラ、ペンタックスMGのテレビCMに使われ、「卒業写真」をB面にしたシングルレコードも新しく発売された。