邦楽ロック&ポップス名曲1001: 1980, Part.4

恋人よ/五輪真弓(1980)

五輪真弓の18作目のシングルでオリコン週間シングルランキング、「ザ・ベストテン」のいずれにおいても3週連続1位に輝いた。「第22回日本レコード大賞」では金賞を獲得、「NHK紅白歌合戦」にも出場した。

「恋人よ そばにいて こごえる私のそばにいてよ そしてひとこと この別れ話が冗談だよと笑ってほしい」と歌われる、痛切でドラマティックな失恋ソングである。

デビュー当時にお世話になっていたプロデューサーが交通事故で亡くなり、その葬儀に参列した際に慟哭するその妻の姿に強い感銘を受けたことがこの曲のモチーフになっていたようだ。

さよならの向う側/山口百恵(1980)

山口百恵の31作目にして引退前最後のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位、「ザ・ベストテン」では最高3位を記録した。

1973年のデビュー以降、日本のポップミュージック史に数々の名曲を残してきた山口百恵だが、映画などで共演した俳優の三浦友和との結婚を機に芸能界を引退し、その後も復帰はしていない。

「約束なしのお別れです」「今度はいつと言えません」と歌われるこの曲は壮大な世界観でファンに感謝の想いを伝えてもいる素晴らしいバラード曲である。日本武道館で行われたファイナルコンサートでは最後に歌唱され、マイクをステージに置いて舞台裏へと去っていったエピソードは伝説として語り継がれている。

ドゥ・ユー・リメンバー・ミー/YUKI(1980)

岡崎友紀がYUKI名義でリリースした楽曲で、オリコン週間シングルランキングで最高18位を記録した。

作詞は安井かずみ、作曲は加藤和彦で、ザ・ロネッツ「ビー・マイ・ベイビー」など60年代のガールズポップを思わせるポップでキャッチーでノスタルジックな曲調やサウンドが、かつての恋を懐かしむ歌詞の内容ともマッチしていてとても良い。

岡崎友紀は1970年代に活躍したアイドル歌手で、「おくさまは18歳」をはじめとするコメディー系のテレビドラマに主演したりブロマイドが売れまくったりもしていたのだが、オリコン週間シングルランキングでは変名でリリースしたこの曲で最高位を記録した。

2001年にキタキマユがテレビドラマ「カバチタレ!」のエンディングテーマとしてカバーして、オリコン週間シングルランキングで最高15位とオリジナルを上回る順位にランクインしている。

ガラスのジェネレーション/佐野元春(1980)

佐野元春の2作目のシングルで初期の代表曲の1つだが、オリコン週間シングルランキングにはランクインしていない。

日本のポップミュージックの歌詞において1つの語法を発明したのではないかというぐらいに、当時としてはユニークな言語感覚が特徴であり、英語混じりのコピー的なフレーズと日本語による本気のメッセージとが絶妙なバランスで入り混じっている。

特に「つまらない大人にはなりたくない」という歌詞に深く感じ入り、それ以降もけしてその気持ちを忘れてはいない当時の若者たちはけして少なくはないようにも思える。

この次のシングル「NIGHT LIFE」と共に畑中葉子が主演したにっかつロマンポルノ作品「モア・セクシー 獣のようにもう一度」で使われていたことはあまり知られていないような気もする。

1988年にライブアルバム「HEARTLAND」からの先行シングルとしてリリースされたバージョンは、オリコン週間シングルランキングで最高34位を記録している。

トランジスタ・ラジオ/RCサクセション(1980)

RCサクセションの11作目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高86位を記録した。忌野清志郎の派手なメイクやファッションとエネルギッシュなライブパフォーマンスが注目をあつめ、メディアでもかなり取り上げられるようになっていたが、この時点ではまだそれほど大きなヒットにはなっていない。とはいえ、収録アルバムの「PLEASE」はオリコン週間アルバムランキングで最高21位を記録している。

授業をサボって学校の屋上に寝ころび、煙草を吸いながらトランジスタラジオを聴いているという内容である。「ああ こんな気持 うまく言えたことがない」というフレーズがとにかくとても良く、自由や解放感のようなものをうまくあらわしているように思える。

ペガサスの朝/五十嵐浩晃(1980)

五十嵐浩晃の3作目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高3位、「ザ・ベストテン」では最高5位を記録した。明治チョコレートのCMソングに使われたことがヒットのきっかけとなった。

北海道出身のシンガーソングライターらしくどこか素朴で雄大な感じとシティポップ的でもある音楽性とがとても良いバランスでミックスされていて、そのあたりが当時のヒット曲として丁度よかったような気もする。

個人的には「あなたとは恋といえない友達でいたい」というフレーズに特に良さを感じていた。

恋をしようよ/ザ・ルースターズ(1980)

ザ・ルースターズのデビューシングル「ロージー」のB面に収録された楽曲である。

福岡県北九州市出身の最高のロックンロールバンドで、当時メインストリームでものすごく売れたわけではないのだが、評価は高く影響力もひじょうに大きい。

初期の代表曲の1つであるこの曲は「俺はただおまえとやりたいだけ」というシンプルだが深刻なテーマを勢いのある演奏にのせて歌った、ご機嫌なロックンロールチューンである。

2000年には雨上がり決死隊、山口智充、ガレッジセールなどが出演してとても人気があったフジテレビ系のバラエティー番組「エブナイTHURSDAY」のオープニングテーマ曲にも使われていた。

恋人がサンタクロース/松任谷由実(1980)

松任谷由実のアルバム「SURF&SNOW」収録曲で、後に山下達郎「クリスマス・イブ」などと並ぶクリスマスの定番曲となるのだが、シングルではリリースされていない。

タイトルがあらわしているように、恋人をサンタクロースにたとえた楽曲なわけだが、元々は家族と一緒に過ごす日というイメージが強かったクリスマスを恋人たちの特別な日に変える上である程度の影響力を及ぼしたのではないかともいわれる。

最初は知る人ぞ知る隠れた名曲という感じでもあったのだが、少しずつ広く知られていくようになって、1987年の映画「私をスキーに連れてって」で使われたあたりで当時のバブル景気や純愛ブームとも相まって、一気に定番化に拍車がかかったような印象がある。

サーフ天国、スキー天国/松任谷由実(1980)

「恋人がサンタクロース」と同じく松任谷由実のアルバム「SURF&SNOW」に収録された楽曲である。そして、この曲も映画「私をスキーに連れてって」に使われていた。

スキーが若者たちにとって最もトレンディーな娯楽の1つであった当時、苗場プリンスホテルのタイアップ曲として使われてもいたのだが、イントロが聴こえた瞬間に広がる世界観や「自然は雪や太陽つれて レビューを見せに来る」のところなど、日本がいろいろな意味で豊かだった当時の気分を封じ込めたかのような良さがある。それゆえに現在の感覚ではただただ呑気にしか感じられない可能性もある。