「オールザッツ漫才2019」について。

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2018年に続き、今回も毎日放送がインターネットで見逃し配信してくれたので、東京にいながらリアルタイムではなかったものの「オールザッツ漫才」を視聴することができた。公式ツイッターアカウントのニュアンスからすると、違法アップロード対策の意味合いも強いように思えるが、これを観るだけのために大阪に行ってホテルに泊ったりしていたこともある私からすると、実にありがたいことである


「オールザッツ漫才」は1990年から始まった年末のお笑い番組で、12月29日の深夜から早朝にかけて生放送されている。他エリアの放送局でネットされたこともあるが、基本的には近畿地方ローカルでの放送になっている。この番組で結果を残した芸人やキャラクターが後に全国区でブレイクすることが多かったことから、注目を集めるようになった。


若手芸人によるネタバトルと中堅以上の芸人によるネタ、コーナーで構成されていた時代が多かったが、現在は中堅以上の芸人によるネタが無くなり、若手芸人によるネタバトルとコーナーだけになっている。
MCは前年に続き、和牛、アキナ、アインシュタインの3組である。その前が小籔千豊と千原ジュニアだったので、これによって番組そのものがかなり若返った印象がある。この3組は以前から「アキナ牛シュタイン」というライブを行ったり、「アキナ・和牛・アインシュタインのバツウケテイナー」という冠番組を持っていたりするが、特に関西ではアイドル並みの人気がある。


オープニングではMCの6人がラグビー日本代表のユニフォームを着て登場し、寸劇混じりの漫才のようなものを披露した。そして、今回の出演者が一斉にステージに登場した。以前はネタバトル出場者が1組ずつ紹介されたりしていたが、現在は一斉に登場するパターンである。ネタバトル出場者以外に、中堅やベテランの芸人も出演するが、ネタはやらずコーナーに出演したりご意見番的な役割を主に果たす。今回は見届け人と呼ばれ、藤崎マーケット、レイザーラモン、浅越ゴエといった、この番組の歴史において大きな功績を残したレジェンドに加え、若手では4年ぶりの出演となったコロコロチキチキペッパーズ、昨年のネタバトルで優勝した見取り図、ゆりやんレトリィバァが出演した。

ネタバトルで優勝したり、目立った芸人が後に全国的にブレイクする傾向があるが、必ずしも毎年そうだとは限らない。見取り図は「M-1グランプリ」で2年連続決勝進出したこともあり、期待に応えたといえるだろう。2017年のネタバトルで優勝したのは、スマイルの物真似を披露した和牛の水田信二とアインシュタインの稲田直樹によるユニットだったが、最も鮮烈な印象を残したのは霜降り明星であり、翌年には「M-1グランプリ」でチャンピオンに輝いた。粗品は霜降り明星結成以前に、ピン芸人としてネタバトルで優勝を経験していた。霜降り明星、ミキなどは昨年までは出演していたが、東京進出を果たした今年はもう出演していない。


これによって出演者の新陳代謝が行われ、今回のネタバトル出場者の中にも、大阪よしもとの若手人気芸人が軒並み選ばれている中、ほとんど知られていない芸人の姿も見られる。アシスタントは毎日放送のアナウンサー、藤村温子である。「M-1グランプリ2019」からまだ1週間ということもあり、その印象はいまだ鮮烈で、和牛の水田信二がぺこぱの「時を戻そう」、川西賢志郎がネタ中の「イイネ」というフレーズを言ったりしていた。チャンピオンに輝いたミルクボーイも出演して、大きくフィーチャーされていた。ネタの冒頭でやっている駒場孝が何らかの物をもらうくだりでは、深夜ということもあってか「エロ本」がチョイスされていた。内海崇は大晦日にけん玉芸人として大阪のよしもと漫才劇場に出演する予定だったが、急遽、「NHK紅白歌合戦」でけん玉を披露することになったという。
ネタバトルは35組が1回戦に出場し、この中から8組が準決勝に進出、さらにそこから上位3組が決勝を戦うというシステムであった。得点は会場の観客と芸人がもう一度観たいと思ったらボタンを押し、それが200点満点で集計される。それにしても、最初のブロックが強力であった。

この番組のネタバトルでは普段やっている本ネタとは違った攻めたタイプのネタをやる芸人も多く、それらが高く評価される傾向があるのだが、トップバッターのからし蓮根は普段やっている漫才をコンパクトにしたようなものであり、それでも大いにウケて、いきなり190点の高得点を出した。続くさや香は石井誠一のダンススキルを生かしたコントで、これも186点と高得点である。続いて、「オールザッツ漫才」のネタバトルでは1度の優勝、4度もの準優勝を経験しているクロスバー直撃である。毎回、小道具を用いた独創的なネタで、この番組にはよくハマっているのだが、優勝してもバトルから卒業できず、ずっと出場している。今回も面白かったが、得点は135点であった。かつてこのネタバトルがそう呼ばれたこともある「Foot Cut」という単語が出てきて、懐かしかった。続く祇園は154点だった。

「オールザッツアンケート」というコーナーで、レイザーラモンRGのやりたいこととして、THE虎舞竜の「ロード」を熱唱したいということで、高橋ジョージに扮して歌い、ハーモニカのところは甲高い声でやるというところがこだわりのポイントである。しかしこの後、トットの桑原雅人によるボイスパーカッション、吉本新喜劇の松浦真也、ラニーノーズによるギター、見取り図の盛山晋太郎によるラップ、守谷日和とゆりやんレトリィバァのダンスが加わり、最後にレイザーラモンHGによるEXILEのHIROが登場するという、無駄に豪華なことになっていた。このトゥーマッチ感覚こそが「オールザッツ漫才」の真骨頂であり、最高であった。盛山晋太郎がブッダブランドのTシャツを着ていたのが印象的であった。

バトルに戻り、ミルクボーイは松竹の契約書をもらいましたというつかみから、持ちネタである「デカビタ」の短縮バージョンであった。結果は179点と高得点であった。ミルクボーイについて見取り図のリリーがコメントすると、和牛の川西賢志郎が自分自身を含む見届け人席を指し、「この辺はめちゃめちゃ負けてるから」などと言っていた。
吉本新喜劇の信濃岳夫と金原早苗によるユニットは、小泉進次郎と滝川クリステルの物真似を披露したが、特に滝川クリステルのデフォルメがすさまじく、実に「オールザッツ漫才」らしいネタであった。132点である。ダブルアートはタグが長くて光る頭の謎のキャラクターに扮し、112点であった。元号が令和になったと同時にコンビ名をプリマ旦那から改名した令和喜多みな実は「アキナのコントの雰囲気」という、これまた実に「オールザッツ漫才」らしい絶妙なネタを披露し、176点の高得点を記録した。

続いて、浅越ゴエによる「浅越が行く!」というコーナーである。リポーター役の浅越ゴエが色々な場所で出会った色々な人達にインタビューをするという企画で、コーナー名や細かい内容は変われど、ここ最近の「オールザッツ漫才」では安定した面白さである。今回は毎日放送の楽屋を舞台に、アキナの山名文和、レイザーラモンRG、見取り図の盛山晋太郎によるラグビー日本代表の選手達、藤崎マーケットの田崎佑一によるザ・ぼんちの里見まさと、トキによるティーアップの長谷川宏、アインシュタインの稲田直樹によるデフォルメが過ぎる小籔千豊、キャタピラーズのしげみうどんによる「キテレツ大百科」のトンガリ、セルライトスパの大須賀健剛による「千と千尋の神隠し」の頭(カシラ)、そして、きわめつけはゆりやんレトリィバァによる「サザエさん」の磯野カツオであり、「姉さんは大きな間違いをしているよ」と何度もしつこいぐらいに言ってくる。素晴らしい。

バトルに戻り、ラニーノーズは路上ライブのネタである。2019年は「歌ネタ王決定戦」で優勝し、アイドル的なルックスもあり勢いにノリそうなところだが、「オールザッツ漫才」に寄せてきたようなネタが逆に残念な感じになり、113点であった。トットは叩き売りの口上が上手いが接客が無愛想という、桑原雅人の器用さを生かしたネタで131点である。アピールタイムで多田ちゃん天然ショートコントなるものをやっていたが、大阪よしもときってのイケメンという印象だった多田智佑はいまや天然キャラの方が有名になってしまったのか。ツートライブは周平魂のイキったワードと顔を生かした漫才で、本ネタの路線ながら170点の高得点である。

次のコーナーは「オールザッツ次世代MC公開オーディション」と銘打つが、実はMCを務めるコロコロチキチキペッパーズのナダルを誰が最も困らせるかを競うドッキリ企画で、「ナダル困らせ王決定戦」というものであった。雛壇にいるアキナや藤崎マーケットからイナバ物置、流れるプール、六本木のビルとビルの間というようなワードが飛び出す度にナダルが激しく動揺し、優勝はアキナの秋山賢太であった。

バトルに戻り、芸歴1年目だというキャツミが107点、ビスケットブラザーズが134点に続き、コウテイが90点だったが、ラストの「ナニワコント革命」というフレーズがカッコよかった。吉本新喜劇の松浦真也と森田まりこによるユニット、ヤンシー&マリコンヌは音楽を用いた安定感があり、この番組の雰囲気にマッチしたネタで160点、ニッポンの社長が145点、キャタピラーズが88点、てんしとあくまがある意味、悪夢のようなシュールなネタで145点であった。

オールザッツアンケートではゆりやんレトリィバァと藤崎マーケットのトキのやりたいことで、飛行機が着陸した後のあの感じである。これもかなり面白かった。

バトルに戻り、ジソンシンが139点、セルライトスパが157点、吉本新喜劇の大塚澪がエロオペラという、オペラを歌いながらマネキンのような物を赤い紐を縛るネタで90点であった。音楽大学出身ということで、在学中に見た貴婦人の物真似というのもやっていた。エンペラーが140点、フースーヤが110点に続き、白桃ピーチよぴぴというよく分からないピン芸人が登場した。女性アイドルのような格好をして、どうやら可愛いことなどを言っているようなのだが、絶妙なエキセントリックさに中毒性がある。初見では女性かと思っていたのだが、実際には男性であった。得点は145点だったが、それ以上のインパクトがあった。

天才ピアニストは上沼恵美子の物真似だったが、今回はつい1週間前に行われた「M-1グランプリ2019」からのネタを取り入れ、しかもクオリティーがものすごく高い。175点と高得点であった。吉本新喜劇の松浦景子は2年続けての出場だが、「バレエ大好き」のフレーズが今回もハマりまくっていた。結果は159点であった。カベポスターは120点で、アピールタイムでやっていた角度ものまねというのが独特であった。タチマチが135点、ロンコートダディが155点に続き、チャイルドプリンスはシャンプーハットのひじょうにクオリティーの高い物真似で169点の高得点であった。

「浅越が行く!」は茶屋町の外から中継で、昨年のネタバトルで優勝した見取り図による南大阪のカスカップルが浅越ゴエに絡むが、オデッセイの駐禁を切られ、絶妙なコンビネーションで鍵を受け取り、消えていった。その後、藤崎マーケットのトキによる浜村淳さんのファン、レイザーラモンHGによるサラ・コナー、ミルクボーイの駒場孝によるターミネーターT-800、絶対アイシテルズのらぶおじさんによるT-1000、和牛の川西賢志郎による河内のオッサンなどが登場した。

バトルに戻り、たくろうが145点、蛙亭が150点、ねこ屋敷が125点、アキラ・コンチネンタル・フィーバーが85点、守屋日和が145点であった。蛙亭は現在、私が最も好きなタイプのコントをやるコンビである。岩倉美里のプールの授業を見学する役はたまらなくキュートだったが、ネタの構成上、声を一度も聞くことができなかったのは残念である。ねこ屋敷は英語の歌ネタで、ホットドッグをアップダウンさせる。ホットドッグを食べる時代は終わったらしい。アキラ・コンチネンタル・フィーバーはインドネシア住みます芸人として現地で成功し、元アイドルと結婚したそうである。

これで1回戦のすべてのネタが終了し、特典の上位7組と、見届け人が推薦する1組が準決勝に進出する。上位7組はからし蓮根、さや香、ミルクボーイ、令和喜多みな実、天才ピアニスト、ツートライブ、チャイルドプリンスであった。次点はヤンシー&マリコンヌだったのだが、見届け人が選んだのは得点ではニッポンの社長、てんしとあくま、たくろう、守屋日和と並んで14位だった、白桃ピーチよぴぴであった。ちなみに、白桃ピーチよぴぴよりも得点が高かったにもかかわらず準決勝に進出できなかったのは、ヤンシー&マリコンヌ、松浦景子、セルライトスパ、ロングコートダディ、祇園、蛙亭であった。

オールザッツリクエストは、M-1チャンピオンのミルクボーイがオールザッツで新ネタを披露したいとのことである。漫才かと思いきや、赤いスカーフを巻いた内海崇の頭の上にテーブルクロスを掛け、その上にコーンフレークが盛られた皿を載せる。駒場孝による角刈りテーブルクロス引きだが、これが見事に成功して、CMに入った。
準決勝のネタ順はルーレットによって決まったが、チャイルドプリンスがやはりシャンプーハットのクオリティーの高い物真似で145点、ツートライブはイキり漫才で165点、「結構ええニュアンス」らしい。からし蓮根が175点、白桃ピーチよぴぴが155点であった。白桃ピーチよぴぴのネタの終盤、女性アイドルが言いそうな雰囲気のことをなんとなく言っているようなのだが、早すぎてよく聞き取れない。妙な中毒性があるネタである。

「浅越が行く!」は、T-1000に軽くインタビューしたところで終了、浅越ゴエは軽く腹ごしらえしようとするのだが、放送局内に「割烹エアうなぎ」なる店を発見、さっそく入ってみると、ゆりやんレトリィバァが演じる大将が腕をふるっている。浅越ゴエはエアうな丼を注文するのだが、文字通り、エアでうな丼が調理される。これが細かくて長い。この過剰さこそが、「オールザッツ漫才」である。数年前、「オールザッツ漫才」で披露したザ・プラン9のネタで、浅越ゴエがメガネをちゃんとかけられないというくだりだけで、CMをまたいでまで何分もやっていて、これはもう本当に最高で、この番組を見続けていてよかったと心から思った。今回のゆりやんレトリィバァと浅越ゴエによるエアうなぎは、細かくて長いということがすべてなのだが、これをわざわざ放送するのはおそらく「オールザッツ漫才」ぐらいであり、だからこそ素晴らしいといえるのである。

バトルでは令和喜多みな実が、アインシュタインの河合ゆずるが髪のスタイリングに気をつかいすぎて漫才の出番が遅れる様の物真似で172点、天才ピアニストは引き続き上沼恵美子ネタで行けば高得点が期待できるところを、吉本新喜劇あるあるネタで135点であった。しかし、このチャレンジは素晴らしいし、上沼恵美子の物真似をやっていない方のメンバーが本当に楽しそうで、かなり好感を持った。さや香は引き続き、石井誠一のダンススキルを生かしたネタで170年、ミルクボーイは滋賀をテーマにした持ちネタの短縮バージョンで169点であった。

この結果、決勝に進出した3組はからし蓮根、令和喜多みな実、さや香で、M-1チャンピオンのミルクボーイは1点差で惜しくも敗退した。

和牛の楽屋リポートが入り、トットの多田ちゃん天然ショートコントのM-1編があったり、大塚澪が貴婦人のものまねを披露したり、守屋日和は準決勝に進出したらやる予定だったと思われる警官のコスチュームで何かをやっている。そして、てんしとあくまはあの悪夢のようなコントをここでもまだ続けていたが、マイクを向けられることすらなく終了した。

決勝ではさや香がさらに石井誠一のダンススキルをより高度に生かしたネタ、令和喜多みな実は藤崎マーケットとメッセンジャーの物真似、からし蓮根は本ネタの延長線上にある漫才を披露した。結果はさや香が157点、令和喜多みな実が172点、からし蓮根が168点で、令和喜多みな実が初優勝を飾った。プリマ旦那だった頃にも、本ネタでやっていた野村尚平のベテラン風の流暢なしゃべりをフィーチャーしたネタで上位に進出していたが、今回は「オールザッツ漫才」のために仕上げてきたともいえるネタで、着眼点も良いし、クオリティーもひじょうに高かった。からし蓮根は2年連続の準優勝となった。

個人的に今回のMVPはゆりやんレトリィバァで間違いないのだが、見取り図の盛山晋太郎もオールラウンダー的な大活躍を見せた。やはり私が最も好きなテレビ番組はこれで揺るぎないな、と改めて実感したのであった。
1月6日までは毎日放送の「MBS動画イズム」というサイトやアプリで無料で視聴できるようである。年は明けてしまったが、興味がある方にはぜひおすすめしたい。しかし、人によってはただただくだらないとしか思えないであろうことも十分に承知してはいる。その上で、やはり私はこの番組が大好きなのである。

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