The 500 Greatest Songs of All Time : 170-161

170. Fairytale of New York – The Pogues feat. Kirsty MacColl (1987)

ザ・ポーグスのアルバム「堕ちた天使」からの先行シングルで、全英シングル・チャートで最高2位を記録した。イギリスではマライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」、ワム!「ラスト・クリスマス」などと並ぶクリスマスの定番ソングとして知られ、2005年以降はクリスマスシーズンになると毎年、全英シングル・チャートにランクインしている。邦題は「ニューヨークの夢」である。

長年連れ添った男女がお互いを罵り合ったりしながらも、過去を懐かしみクリスマスを祝うという内容になっている。このデュエットソングの女性パートを当初はメンバーのケイト・オーリアダンが歌っていたが、当時のプロデューサーであったエルヴィス・コステロと付き合っていて、バンドとの関係性が悪化していくと脱退してしまった。

その後、いずれのパートをもシェイン・マガウアンが歌うことになったのだが、やはりデュエットにした方が良いのではないかということで、プロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトの妻でシンガー・ソングライターのカースティ・マッコールが歌うことになった。

169. There Is a Light That Never Goes Out – The Smiths (1986)

ザ・スミスのアルバム「クイーン・イズ・デッド」収録曲で、当時はシングルカットされなかったがずっと人気が高く、解散してからしばらく経った1992年にベスト・アルバム発売のタイミングでやっとシングルがリリースされた。全英シングル・チャートでは最高25位を記録している。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを思わせるイントロから美しいストリングス、モリッシーによる歌詞とボーカルはその個性が存分に発揮され、特に好きな人と一緒に車に乗っていて、もしもダブルデッカーバス、もしくは10トントラックと衝突してその人の隣で死ねるとしたらしれはなんて素敵なことなのだろうというくだりは、2009年の映画「(500)日のサマー」で主人公のトムがヒロインのサマーを好きになるきっかけにもなった。

168. I’m Waiting for the Man – The Velvet Underground (1967)

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー・アルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」の収録曲で、邦題は「僕は待ち人」である。アルバム自体がポップ・ミュージック史上ひじょうに重要であり、インディー・ロックとかオルタナティヴ・ロックと呼ばれるすべての音楽に影響を与えているといっても過言ではないのだが、当時はあまり売れなかったことでおなじみなので、この曲もヒットはしていない。

ハーレムでヘロインを調達するというごく一般的な小市民にはそれほどリアリティーのないテーマを扱っているのだが、ニューヨーク的でアートなクールネスとでもいうべきセンスが凝縮した楽曲のようにも思える。

個人的にはロック名盤ガイドなどでさんざんアンディ・ウォーホルによるバナナのジャケットを見ていたのだが実際に聴いたことはなく、文字による情報からかなり過激でアヴァンギャルドな音楽を想像しながらも、小田急相模原の小田急OXにあったレコード店(新星堂だったような気がするが記憶が定かではない)で国内盤LPレコードを購入し、聴いてみたところ意外にも聴きやすく、それでいて最後にはかなりカオスでとてもカッコよく感じられたことが思い出される。

167. Crazy – Patsy Cline (1961)

パッツィー・クラインが1961年10月にリリースしたシングルで、全米シングル・チャートで最高9位、カントリー・チャートでは最高2位を記録している。

ウィリー・ネルソンによる楽曲で、カントリーの曲にしては使用されているコードが多く、難易度が高いということなのだが、パッツィー・クラインはこれを見事に歌いこなすことによって、恋愛におけるどうしようもならないほど狂おしい想いをヴィヴィッドに表現している。

166. Maps – Yeah Yeah Yeahs (2003)

ヤー・ヤー・ヤーズのデビュー・アルバム「フィーヴァー・トゥ・テル」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高26位を記録した。

ザ・ストロークスやインターポールなどと共に、2000年代前半のロック・リバイバル的なムーヴメントの中でもニューヨークを代表するバンドとして知られるが、このエモーショナルなバラードには、そういった枠を超越した力が感じられる。

中心メンバーのカレン・Oが当時、付き合っていたインディー・ロックバンド、ライアーズのアンガス・アンドリューとの関係をテーマにした楽曲である。

ミュージック・ビデオはヤー・ヤー・ヤーズがツアーに出る直前に撮影されたのだが、その後しばらく会えなくなるであろう恋人が現場に現れず、悲しい気分になっていたところ、急にやって来たことによって自然に溢れてきた本気の涙がドキュメンタリータッチで記録されている。

タイトルの「Maps」というのは、「私のアンガス、ここにいて(My Angus Please Stay)」の略なのではないかともいわれている。

165. Town Called Malice – The Jam (1982)

ザ・ジャムのアルバム「ザ・ギフト」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで初登場1位に輝いた。「プレシャス」との両A面シングルとして発売され、人気テレビ番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」では、1965年にビートルズ「恋を抱きしめよう」「デイ・トリッパー」以来初めて、シングル両面の2曲を演奏したバンドとなった。

ポール・ウェラーが生まれ育ったイギリスはサリー州ウォキングの日常をテーマにし、階級格差に言及しているが、音楽性は初期のパンク・ロック的なアグレッシヴさから、モータウン・ビートを取り入れたキャッチーなものに変化している。この後、ザ・ジャムは人気絶頂にもかかわらず突然に解散を発表し、ポール・ウェラーはザ・スタイル・カウンシルを始動させることになる。

「悪意という名の街」の邦題で知られるタイトルは「アリスのような町」という小説の題名に由来しているが、作者のネヴィル・シュートはモリッシー「エヴリデイ・イズ・ライク・サンデイ」にインスピレーションを与えた小説「渚にて」も書いた人である。

164. Roadrunner – The Modern Lovers (1976)

ザ・モダン・ラヴァーズの1972年にはレコーディングされていたのだが、1976年に発売されたアルバム「ザ・モダン・ラヴァーズ」からのシングルで、全英シングル・チャートで最高11位を記録した。ジョナサン・リッチマンを中心にいろいろな時期にいろいろなメンバーで録音したバージョンが存在する。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド「シスター・レイ」にもインスパイアされているが、最初にレコーディングされたバージョンは元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルによってプロデュースされている。メンバーには後にカーズを結成するデヴィッド・ロビンソンやトーキング・ヘッズに加入するジェリー・ハリスンもいた。

ジョナサン・リッチマンが地元マサチューセッツ州のハイウェイを車で飛ばしている時の、最高の気分がテーマになっている。音楽的には後のパンクロックを先取っていたと評価されがちで、パンクロックのコンピレーション・アルバムに収録されていることもあった。

163. Fortunate Son – Creedence Clearwater Revival (1969)

クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルのアルバム「ウィリー・アンド・ザ・プアボーイ」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高3位を記録した。

ベトナム戦争に対する反戦ソングであり、あらかじめ運に恵まれている金持ちや権力者の息子と、徴兵されていく一般庶民とが対比されている。

CCRの略称で親しまれるクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルはカントリーやブルースを取り入れたロックが特徴であり、活動期間は短かったが、その間の全米シングル・チャートでは5曲が最高2位を記録している。

162. Whole Lotta Love – Led Zeppelin (1969)

レッド・ツェッペリンのアルバム「レッド・ツェッペリンⅡ」からイギリスを除くいくつかの国ではシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高4位を記録した。イギリスではレッド・ツェッペリンの他の楽曲と同様、シングルではリリースされなかった。邦題は「胸いっぱいの愛を」である。

歌詞の一部がマディ・ウォーターズ「ユー・ニード・ラヴ」にひじょうによく似ているということで、いろいろあって作者であるウィリー・ディクスンの名前もクレジットされることになった。

とはいえ、ラウドでヘヴィーなロックンロールという音楽性にこそオリジナリティーがあり、後のハード・ロックやヘヴィー・メタルに与えた影響はひじょうに大きい。

これにはデビュー・アルバム「レッド・ツェッペリン」がヒットしたことによって、レーベルはバンドに早く次のアルバムを完成させるよう急かし、ハードスケジュール下における過酷な状況が影響したともいわれる。

161. Voodoo Child (Slight Return) – The Jimi Hendrix Experience (1968)

ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのアルバム「エレクトリック・レディランド」収録曲で、1970年のジミ・ヘンドリックス急死後に「ヴードゥー・チャイル」としてシングルカットされ、全英シングル・チャートで1位に輝いた。

ブルースをベースにしながらも、それをサイケデリック化して、まったく新しいロック・ミュージックを生み出したことが、そのエキサイティングなステージ・パフォーマンスと共に伝説化している。

マイルス・デイヴィスはジャズとロックを融合した画期的なアルバムとして知られる「ビッチェズ・ブリュー」を制作するにあたり、この曲の影響を受けたことを認めている。