洋楽ロック&ポップス名曲1001:1992, Part.4

Ice Cube, ‘It Was a Good Day’

アイス・キューブのアルバム「略奪者」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高15位、全英シングルチャートで最高27位を記録した。邦題は「サウス・セントラルの平和な日々」である。

アルバムがリリースされたのはロサンゼル市警の警官たちによる人種差別的な暴力行為とそれに対する不当な評決がきっかけで、ロサンゼル暴動が起こった年である。

激しい怒りに満ち溢れてもいるアルバムにおいて、レイドバックした感じが特徴のこの曲は、このような環境での生活における理想的な1日をテーマにしている。その条件の1つとして、仲間が誰ひとりとして死ななかったことも挙げられている。

The Pharcyde, ‘Passin’ Me By’

ファーサイドのデビューアルバム「ビザール・ライド!!」からシングルカットされ、全米シングルチャートで最高52位、ホットラップソングチャートで1位、全英シングルチャートで最高55位を記録した。

クインシー・ジョーンズ「サマー・イン・ザ・シティ」、ウェザー・リポート「125丁目の出来事」、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス「アー・ユー・エクスペリエンスト?」などをサンプリングしたクールなトラックにのせて、グループのMC、4人が最終的には失恋に終わった少年時代の片思いについて語る。

そして、この曲は2001年に全米シングルチャートで4週連続1位を記録するジョー・フィーチャリング・ミスティカル「スタッター」でサンプリングされることになる。

Wu-Tang Clan, ‘Protect Ya Neck’

ウータン・クランのデビューシングルで、後にデビューアルバム「燃えよウータン」にも収録された。チャートにはランクインしていないのだが、レコーディング費用を自分たちで賄い、ディストリビューションやプロモーションも自力で行ったこの曲がきっかけで、RCAの子会社であるラウド・レコーズと契約することになった。

後に各メンバーが次々とソロアルバムをリリースし、しかもそれらの多くがことごとく高評価を得ることでも知られるが、この楽曲ではメンバー9人中の8人が自己紹介的なラップを披露し、テヴィン・キャンベル「グッドバイ」やアイリーン・キャラ「フェーム」などにも言及しながら、自分たちがいかに危険なグループであるかをアピールしている。

Dr. Dre feat. Snoop Doggy Dogg ‘Nuthin’ but a ‘G’ Thang’

ドクター・ドレーのソロデビューアルバム「クロニック」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートで最高2位、全英シングルチャートで最高31位を記録した。

レオン・ヘイウッド「アイ・ウォンタ・ドゥー・サムシング・フリーキー・トゥ・ユー」をサンプリングした、スローでレイドバックしたサウンドが特徴である。こういったタイプの音楽はGファンクと呼ばれ、この曲のヒットをきっかけにメインストリームにも広がっていった。GファンクのGはギャングスタを意味している。

この曲でフィーチャーされた新人ラッパー、スヌープ・ドギー・ドッグはアルバム「クロニック」収録のいくつかの参加して話題となり、ソロアーティストとしてのデビューアルバム「ドギースタイル」は全米アルバムチャートで1位に輝いた。

The Boo Radleys, ‘Lazarus’

イギリスのインディーロックバンド、ブー・ラドリーズのアルバム「ジャイアント・ステップス」からリードシングルとしてリリースされ、後にリミックスバージョンが全英シングルチャートで最高50位を記録した。

90年代に最も勢いがあったイギリスのインディーロック系レーベル、クリエイション・レコーズに所属していたバンドの中でも特に批評家からの評価が高かったのだが、ジョン・コルトレーンに由来するタイトルを持つこのアルバムは音楽的な探究心が発揮された意欲作として知られる。

この楽曲にはそういったポップスのマジックが凝縮されていて、ダブ的なベースラインからシューゲイザー的なインディーロックサウンド、さらにはカーペンターズやビー・ジーズを思わせもするポップなメロディーがミックスされている。

後によりブリットポップ的なシングル「ウェイク・アップ・ブー!」で全英トップ10入りを果たし、収録アルバム「ウェイク・アップ」は全英アルバムチャートで1位に輝いた。