ハロウィンのポップ・ソング・ベスト10

ハロウィンである。10月31日が毎年そうであり、いろいろなイベントが行われたり仮装をしている人たちがいて、楽しくてとても良い。元々は古代ケルト人の風習だったのが祭りとして定着し、いまや本来の宗教的な意味合いというのはひじょうに薄まっているという。

「トリック・ア・トリート」でおなじみの、子供たちが近所の家を訪問してお菓子をもらうというイベントだが、私が子供の頃、夏の夜に提灯を持って近所の家を回ってローソクやお菓子などをもらうという、よく似た行事があったような気がする。この文化はどうやら北海道特有のものであり、「ローソクもらい」というネーミングらしい。とてもよく似ているような気もするのだが、ハロウィンとの関連性はよく分からない。

日本でもハロウィンが一般化するよりも前に、ヘヴィー・メタル・バンドのハロウィンの方が有名になっていたような印象があり、このバンド名の由来はこれなのだという感じで、ハロウィンというイベントのことをうっすらと把握していたような気がする。

それはそうとして、せっかくなのでなんとなくハロウィンっぽいような気がしなくもないポップスを10曲選んで、カウントダウンすることによって季節感をマイルドに味わっていきたい。

10. Witch Doctor/David Seville (1958)

ノベルティー・ソングである。1958年に全米シングル・チャートで1位を記録しているが、4月から5月にかけてのことなので、ハロウィンとは関係がないようだ。タイトルの「ウィッチ・ドクター」は「呪術医」と訳されるようで、シャーマニズムとかその辺りも入ってきそうである。知らんけど。デヴィッド・サヴィルはテープ早回し的な技法でこのノベルティー的なボーカルをレコーディングしているのだが、後にリスのキャラクター、チップマンクスの音楽にこの方法を用い、シングルやアルバムを売りまくったのだった。

9. Psycho Killer/Talking Heads (1977)

トーキング・ヘッズといえば、スパイク・リーが監督したデヴィッド・バーンのライブ・ドキュメンタリー映画が早く観たいものである。それはそうとして、この曲は1977年にリリースされたデビュー・アルバムからシングル・カットされ、トーキング・ヘッズの初期の代表曲とされているが、全米シングル・チャートでの最高位は92位であった。ファンキーなニュー・ウェイヴにのせて、連続殺人犯をテーマにした歌詞が歌われている。

8. bury a friend/Billie Eilish (2019)

ビリー・アイリッシュのデビュー・アルバムから先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高14位を記録した。ダークなトーンのシンセ・ポップで、ゴスR&Bなどと評されたりもした。ハロウィン・ポップの新定番ともなりそうな予感でいっぱいである。

7. Somebody’s Watching Me/Rockwell (1984)

全米シングル・チャートで最高2位を記録したこの曲を歌っているロックウェルとは、当時のモータウンの社長の息子であった。ジャーメインとマイケルのジャクソン兄弟もバッキングボーカルで参加している。何が一体、ハロウィンっぽいポップスなのかもよく分からないまま見切り発車的にやってはいるわけだが、なんとなくホラー感があるのでこれもそれにあたると思われる。

6. Monster Mash/Bobby “Boris” Pickett (1962)

これもまたノベルティー・ヒットである。こういうお化け系のノベルティー・ヒットといえば、日本では郷ひろみと樹木希林の「お化けのロック」というのもあったな、などと思い出される。この曲は1962年のハロウィン直前あたりに、全米シングル・チャートで1位に輝いていたようである。当時のヒット曲にのせてホラー映画っぽくふざけて歌っていたところから発展してこの曲ができ、ヒットもしてしまったということらしい。流行していたダンスのスタイル、マッシュポテト(サザンオールスターズ「いなせなロコモーション」の歌詞にも出てくる)からもインスパイアされている。

5. I Put A Spell On You/Screamin’ Jay Hawkins (1956)

この曲といえばカウチポテト族の定番にして、ミニシアターブームの象徴でもあるジム・ジャームッシュ監督の映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」なわけだが、アーティスト名にも「スクリーミン」と入っているぐらいで、叫ぶようなボーカルと中毒性の高い演奏がひじょうに印象的である。お前に呪文をかけてやるというようなことが、このテンションでずっと歌われている。

4. Disturbia/Rhianna (2008)

2008年に全米シングル・チャートで1位を記録した、リアーナのヒット曲である。ミュージックビデオも含め、ダークな世界観がハロウィンっぽくもあるのではないか、と思えるエレクトリックなダンス・ポップ。

3. Red Right Hand/Nick Cave & The Bad Seeds (1994)

1994年のアルバム「レッド・ラヴ・イン」に収録された曲だが、様々な映画やテレビドラマのサウンドトラックで使われたり、いろいろなアーティストにカバーされたりして、いまやニック・ケイヴの代表曲の一つになってしまった。タイトルはジョン・ミルトンの「失楽園」から取られているとのこと。

2. Ghostbusters/Ray Parker Jr. (1984)

とても有名なお化け退治のブロックバスター映画、「ゴーストバスターズ」の主題歌で、全米シングル・チャート1位など、世界的にヒットした。この少し前まではクリスタルな女子大学生たちにも好んで聴かれるようなオッシャレーな音楽をやっていたレイ・パーカーJr.だが、すっかりこの曲のイメージが付いてしまった。

1. Thriller/Michael Jackson (1982)

1982年にリリースされた超メガヒットアルバムのタイトルトラックで、全米シングル・チャートで最高4位を記録した。というよりも、13分以上にも及ぶ、特殊メイクを駆使したホラー映画風のミュージックビデオが大きな話題を呼んだ。監督と特殊メイクに「狼男アメリカン」のジョン・ランディスとリック・ベイカー、ナレーションと笑い声に往年のホラー映画俳優、ヴィンセント・プライスを起用するという徹底ぶりは、マイケル・ジャクソンの社会現象的ともいえる人気にさらに拍車をかけることとなった。