ブルーノ・マーズのベストソングス12選(The 12 Essential Bruno Mars Songs)

ブルーノ・マーズの通算4作目にあたるアルバム「ザ・ロマンティック」がおそらく大ヒットしているであろうタイミングの2026年春の時点で、そのキャリアを振り返ってみるのも良いのではないか、ということでやりはじめた名曲選である。それではどうぞ。

‘Just the Way You Are’ (2010)

ブルーノ・マーズのソロデビューシングルにして、アメリカやイギリスをはじめいろいろな国々のシングルチャートで1位に輝いた大ヒット曲である。

「Just the Way You Are」というタイトルからビリー・ジョエルの1970年代のヒット曲、「素顔のままで」を思い浮かべるポップミュージックリスナーも少なくはないと思われるが、このブルーノ・マーズの楽曲ではよりシンプルにパートナーの美しさを讃えた内容になっている。

この曲がブルーノ・マーズにとってソロアーティストとして最初のヒット曲となったわけだが、これ以前に他のアーティストの楽曲にフィーチャリングアーティストやプロデューサーとしてかかわってはいて、この曲も当初はシーロー・グリーンに提供する予定だったという。

辛口の音楽批評家やリスナーからは歌詞の内容があまりにもありきたりではないだろうかというような意見もあるようだが、サウンドプロダクションとボーカルパフォーマンスが素晴らしく、それ以前に甘いラブソングを求めているリスナーの要求にほぼ完璧に応えるタイプの楽曲だといえる。

‘Locked Out of Heaven’ (2012)

ブルーノ・マーズの2作目のアルバム「アンオーソドックス・ジュークボックス」からリードシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートでは通算4曲目の1位に輝いた楽曲である。

タイトルを直訳すると「天国から締め出された」となるのだが、その天国が具体的に何を指すのかは「あなたの水の中で泳ぐのはスピリチュアルなもの」「あなたのセックスは私を楽園に連れていってくれる」というような歌詞でほのめかされている。

サンタナ「スムース」のようなチャチャスタイルのデュエットソングとして書きはじめられたこの曲だが、制作の過程でよりロック的な要素が加わっていき、最終的には特にはじめの方のブルーノ・マーズのボーカルにポリス時代のスティングからの影響を感じられるような楽曲となった。

ミュージックビデオもあえてVHSテープのようなエフェクトを加えたものになっていて、そのレトロ感覚が曲の雰囲気にもマッチしている。

‘When I Was Your Man’ (2012)

アルバム「アンオーソドックス・ジュークボックス」から2曲目のシングルとしてリリースされ、全米シングルチャートではブルーノ・マーズにとって通算5曲目の1位を記録した痛切なピアノバラードである。

バラードはもう歌わないとさえ言っていたことがあるブルーノ・マーズだが、この実体験に基づく失恋ソングには並々ならぬ思い入れがあることを表明している。

ブルーノ・マーズが有名になる前に別れてしまったかつての恋人との関係をテーマにしたこの楽曲では、「あなたに花を買って、手を握ってあげるべきだった」「チャンスがあればすべての時間をあなたに捧げるべきだった」というような後悔や、現在のパートナーはどうか彼女にそうしていてほしいという願いが歌われている。

70年代のエルトン・ジョンやビリー・ジョエルにも通じるシンプルで美しいピアノバラードシンガーとしてのブルーノ・マーズの魅力を世に知らしめた楽曲であると同時に、その切実さに深く共感するリスナーも少なくないと思われる。

2023年にはマイリー・サイラスが大ヒット曲「フラワーズ」でこの曲の一説を引用したことでも話題になった。

Treasure’ (2012)

これもまたアルバム「アンオーソドックス・ジュークボックス」からシングルカットされた楽曲で、全米シングルチャートでは最高5位のヒットを記録した。

軽快でファンキーなディスコポップソングで、「オフ・ザ・ウォール」「スリラー」の頃のマイケル・ジャクソンが放っていたポップ感覚を正統的に継承しているかのようなフィーリングもある。

歌詞では対象の女性の魅力をただただ誉めちぎり讃えまくっているわけだが、その常套句的でやや軽薄にもとらえられかねないが(「あなたは素晴らしく完璧でセクシーなレディー」「宝物、それこそがあなたです」など)、おそらく本気なところも含めて最高である。

‘Uptown Funk’ by Mark Ronson feat. Bruno Mars (2014)

マーク・ロンソンのアルバム「アップタウン・スペシャル」からのリードシングルとしてリリースされた楽曲で、ブルーノ・マーズはフィーチャリングアーティストとして参加している。

とはいえ、マーク・ロンソンはブルーノ・マーズのアルバム「アンオーソドックス・ジュークボックス」で何曲かをプロデュースしていて、この曲もブルーノ・マーズのバンドでのセッションから生まれた。

世界中で社会現象的ともいえる大ヒットを記録し、19か国のシングルチャートで1位に輝いた。特にアメリカでは14週連続1位を記録した。

80年代ファンク、特にプリンスともかかわりが深いミネアポリスのバンド、ザ・タイムからの影響や、その他の様々な楽曲との類似性が指摘されたり、訴訟を起こされたりもした。

2016年のグラミー賞ではこの曲が年間最優秀レコード賞と最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞を受賞し、コールドプレイがヘッドライナーを務めたーパーボウルのハーフタイムショーにはビヨンセと共にブルーノ・マーズも出演し、この曲をパフォーマンスした。

‘That’s What I Like’ (2016)

ブルーノ・マーズの3作目のアルバム「24K・マジック」から最初のシングルとしてリリースされたのはタイトルトラックの「24K・マジック」だったが、最もヒットしたのは2曲目のシングルとしてカットされた「ザッツ・ホワット・アイ・ライク」であった。

初期の作品で深くかかわっていた音楽プロデューサーチーム、ステレオタイプスと再び手を組んだこの楽曲はトラップビート的なバウンス感が特徴であり、これは当初、この曲には何かが欠けていると感じたブルーノ・マーズが修正や微調整を依頼したことによるり生まれたものだという。

ゴールドジュエリーやストロベリーシャンパン、シルクのシーツにダイヤモンドといったゴージャスなアイテムが歌詞には次々と登場し、贅沢なムードをかきたてているのだが、これに対しては批判的な意見もあったものの、コンテンポラリーなポップソングとしては概ね高く評価され、2018年のグラミー賞では年間最優秀楽曲賞、最優秀R&Bソング賞、最優秀R&Bパフォーマンス賞を受賞したりもした。

‘Versace on the Floor’ (2016)

「24K・マジック」のアルバムから3曲目のシングルとしてカットされた楽曲で、全米シングルチャートでの最高位は33位であった。

ここで取り上げた楽曲の中ではヒットの規模としてはけしてそれほど大きくないのだが、セクシーでゴージャスなスロージャムというブルーノ・マーズが得意とする音楽の魅力が特に堪能できる楽曲なのではないかという理由で選出したのであった。

イタリアのファッションブランド、ヴェルサーチの服を着ているという時点ですでにかなりゴージャスなのだが、なぜそれが床の上にあることを切望するのかといえば、脱いだ後で熱い夜を過ごすために他ならない。

80年代や90年代のラジオから流れていたソウル/R&Bのヒット曲を思わせもするこの楽曲は、学校の体育館で開かれる卒業パーティーのシーンにも似合いそうだが、それには内容がアダルトすぎるかもしれない。

デヴィッド・ゲッタによる70年代ファンク的なリミックスバージョンもリリースされた。

‘Finesse (Remix)’ 【feat. Cardi B】(2018)

アルバム「24K・マジック」収録曲にカーディ・Bのラップをフィーチャーしたリミックスバージョンで、全米シングルチャートでは最高3位のヒットを記録した。

90年代初頭に流行したニュージャックスウィングのビートを蘇らせたような楽曲で、特にベル・ビヴ・デヴォー「ポイズン」からの影響が指摘されたり、マイケル・ジャクソン「リメンバー・ザ・タイム」を思い起こさせると評されたりもした。

ミュージックビデオもやはり90年代初頭に放送されていたコメディ番組「イン・リヴィング・カラー」にオマージュを捧げたものであり、これも高く評価された。

‘Leave the Door Open’ by Silk Sonic (2021)

ブルーノ・マーズは「24K・マジック」のツアーで親しくなったアンダーソン・パークとスーパーデュオ、シルク・ソニックを結成し、そのデビューアルバム「アン・イヴニング・ウィズ・シルク・ソニック」からのリードシングルとしてリリースされたのがこの楽曲である。

70年代のフィリーソウルを思わせるオーセンティックなラブソングで、官能的でありながらリラックスしたフィーリングも感じられる。

趣味的なサイドプロジェクトの域をはるかに超え、全米シングルチャートで1位に輝いたのみならず、2022年のグラミー賞における年間最優秀レコード、年間最優秀楽曲など4部門をはじめ、様々な音楽賞も受賞した。

‘Die With a Smile’ by Lady Gaga and Bruno Mars (2024)

レディー・ガガとブルーノ・マーズによるデュエットソングで、30か国以上のシングルチャートで1位に輝く大ヒットを記録したが、特にアメリカではリリースの翌年にあたる2025年の年間チャートにおいても1位を記録した。また、グラミー賞では最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンスを受賞している。

世界が終わるときに誰かのそばにいたいという内容の楽曲を、ブルーノ・マーズは2021年の時点ですでに制作していたのだが、レディー・ガガのデュエットというアイデアのきっかけになったのは、彼女が映画「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」に出演することだったという。

楽曲は映画には使われなかったのだが、不確実な状況下における深い愛について最高のパフォーマンスで歌いあげたこの壮大なバラードは、世界中の数多くのリスナーから支持されることになった。

‘APT.’ by Rosé and Bruno Mars (2024)

人気K-POPグループ、BLACKPINKのメンバーであるロゼはソロアーティストとしてはレーベルを移籍し、その第1弾としてリリースしたシングルが、このブルーノ・マーズとのコラボレーション曲となった。

韓国の飲みゲームのチャントを取り入れた超キャッチーな楽曲は世界中で大ヒットを記録し、ポップミュージック史上、かつてK-POPアーティストが達成した記録のいくつかを塗り替えた。

トニー・バジル「ミッキー」(日本ではGorie with Jasumine & Joannによるカバーバージョンが2004年にオリコン週間ランキングで1位を記録した)との類似性が指摘され、後にソングライターがクレジットに追加された。

‘I Just Might’ (2026)

ブルーノ・マーズの4作目のアルバム「ザ・ロマンティック」からリードシングルとしてリリースされ、自身初となる全米シングルチャート初登場を記録したポップでキャッチーなディスコポップチューンである。

ソロアルバムとしては「24K・マジック」以来、約9年3ヶ月ぶりと目まぐるしい今日のポップシーンにおいてはかなり空いていたのだが、シルク・ソニックやレディー・ガガ、ロゼとの大ヒット曲などによって、存在感はむしろ高まった状態での待望のニューリリースであった。

ミュージックビデオではポール・マッカートニー「カミング・アップ」やアウトキャスト「ヘイ・ヤ!」などと同様にブルーノ・マーズ自身が1人何役もを演じていて楽しい。